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2.酒場での決意

変装がばれかけて冷え切った酒場の空気を戻すため俺は弁明した。


「お、おいおいそりゃーあまりにも失礼ってもんだ。人違いだよお嬢ちゃん。」


「そうそう、この兄ちゃんの言う通りリーダーの気のせいじゃねーか?」


そう言うのは、オスの竜人族の剣士である龍五郎だ。


「どうして?」


「ブレイブに彼女がいたの知ってるだろ?」


「ああ、あのもの好きの。」


「ブレイブの野郎、彼女と口喧嘩をして何も持たずに家出してそのまま失踪したって話だぜ。」


違う!俺はそいつに浮気された挙句、ほぼ無一文で家から追い出されたんだ!!


「ああ、それで今は生きてないって言いたいわけかい?」


「まあ、そういうことだ。」


「にゃっはっは!だとしたらあのオークもどき、せっかく味方になってくれた可愛い嫁さんを自ら捨てたから罰が当たったんだにゃ!!こりゃ傑作だにゃー!」


「全くいい気味だぜ、あのオーク・・・いや、さすがにオークに失礼か?あっはっはー!!!」


自分を貶しながらケラケラと笑う連中を見ていたせいか、飲みすぎのせいか気分が悪くなってきた。


「オークと言えば最近、ガルシーリ公国を魔王軍の部下であるオークの軍勢が襲撃して、罪もない女の子たちが捕らえられたって聞いたぜ。」


罪もない女の子たち・・・ねえ。


「まじかよ。」


「ひどい話にゃ。」


「しかも、ガルシーリ公国って俺たちが今いるマミアカーダ王国の西隣だ。ガルシーリ公国が滅んじまったら、次は俺たちのいる国かもしれねえぜ。」


「・・・助けに行かないのか?」


「無理無理!ランクアップが約束されているとはいえ、うちらはまだSSランク。あなた様みたいなSSSランクの冒険者たちが束になって戦ってもかなうかどうかわからないにゃ。そんな連中のところに行くなんて死に行くようなものにゃ。」


「まあ、そうだよな。」


「なんにせよ、この国も遅かれ早かれ終わる。太っちょの兄ちゃんもここを出た方がいいぜ。」


「ああ、そうさせてもらう。」


一通り、飲んだ後に店を出た俺は決心をした。


「魔王の仲間になろう。」


理由は至極単純で、その国の住人を助けたことがあるのだが、感謝されるどころか石や物を投げられた。


女どもに至っては「下心丸見えだわ!」「あたしの体は安くないよ。」「女の子を××しようとたくらむ危険人物であることを国外に言いふらしてやったわ。」などと言われて報酬ももらえずに追い出された。


だから魔王軍の仲間になって奴らに復讐するのだ。


「そのためにも魔王軍に俺の実力を見せつけねばな・・・。」


俺は実戦経験を積んでいるので道中の敵は難なく倒していった。


「ここが魔王城か・・・。」


俺は丸一週間かけてようやたどり着いた。


「俺は、一人でもそこそこ強い。だが相手は軍勢、やみくもに突撃しても無駄死にだ。一体どうすれば・・・。」


ふと、何かの気配を後ろから察知して慌てて茂みに隠れた。


やってきたのはオークの大群だった。


「うーむ、腑に落ちないが俺はニオイ見た目ともにオークに瓜二つなのは事実・・・これを利用しない手はない。」


俺は列の最後尾のオークを後ろから剣で一突きした。


オークは悲鳴を上げる間もなく絶命した。


「悪いな兄弟、俺が生き残るためだ。」


俺は装備を脱いでスキル「アイテム収納」でしまい。オークが着ていた毛皮の皮装備を着た。

色合いや触り心地からしてこれは馬だ。恐らく、行商人を襲ってそこから奪い取ったものだろう。


ちなみにポーションなどの道具も先程のスキルで異空間にしまってある。

・・・・・・


とうとう、オークに気づかれぬまま魔王城のところまでたどり着いた。いや、たどり着いてしまった。


上手くいったけど・・・なんかうれしくねぇ!

鉄出来た頑丈そうな扉の両端には、斧を持った番兵が2体いてそれぞれ左がケンタウロスで右がミノタウロスだ。


血まみれの大きな袋を担いだ先頭の一回り大きなオークが番兵に向かって大声で叫んだ。

「魔王軍第8師団団長、オークロードのビック・バーラー!ただいま部下とともに戻りました!」


それを聞いた番兵2体は扉の前まで行くと閂を外して両手で扉を内側に押した。

「「通ってよし!」」


完全に扉が開ききると、番兵2体は道を開けた。

そして、ほかの魔物にも気づかれることなく魔王のいる大広間までたどり着くことができた。


扉の重厚な開閉音が鳴り響くとともに、いよいよ対面する魔王に心臓の鼓動が早くなっていった。


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