12.和平
俺は王国の剣豪デカチノフに魔族代表として和平を申し入れた。
「珍しいことを言う、魔族自らが和平を申し込むなどと・・・。いいだろう聞こうじゃないか。」
「一つ、王国はこれ以上魔国領に冒険者や兵士を差し向けないこと。」
「二つ、デカチノフが護衛している冒険者の少女以外のここにいる人間の女性はすべて魔国側がもらい受けることだ。」
「だが、それでは和平とは言い難い。手ぶらで帰るわけにはいかない。」
「そうだ。そこで三つ目は、『勝手に自滅して無人となった』旧公国領は、王国の保護下とすることを認め魔国側は一切手を出さないことを約束する。ただし、採掘できた資源に関しては他国の半分以下の金額で魔国側が手に入れられるものとする。」
当然、デカチノフと青の薔薇は驚いた。当然だ。希少なアダマンタイト鉱石や、その他の旧ガルシーリ公国の鉱山から出る資源が交渉なしでそっくりそのまま王国の物になるのだから。
ちなみに最後の部分はギガメスが提案したものだ。
「そして、最後四つ目は王国が窮地に陥った場合、魔国側は王国側に必ず付くことを約束する。逆もまた然。」
「・・・軍事同盟というやつか。しかし・・・。」
俺が条件の提示を終わると、ギガメスが玉座を離れて俺のそばまで歩いてきた。
「デカチノフよ。信じられないのは百も承知じゃ。ゆえに、改めて条約を調印する際は嘘がつけない種族であるオーガ族を向かわせる。」
「オーガ族を?!・・・わかった。陛下に相談をして後日、改めて招待状を送る。それまでしばし待ってほしい。」
デカチノフはそういうと、指を使って空間を切り裂いた。すると、裂け目の向こう側には森林のような場所が見えていた。
「これが・・・ゲート。侮れん能力だな。」
「そうじゃの。」
「よし、帰るぞ!諸君。」
「「「ハイ!」」」
デカチノフたちはそのゲートの隙間に入っていった。
「え、ちょっ!あたしたちも連れて帰りなさいよー!!」
ようやく気が付いた檻の中の一人が去っていく剣士を呼び止めようとした。
だが、デカチノフは立ち止っただけで振り返らずに再び歩き出した。
「あんたたちのリーダーが粗相をしでかさなければ、一応助けてあげようと思っていたのに残念だねー。」
ジキーレがそう言ってアカンベーをした直後にゲートは閉ざされた。
少女は、精神が壊れてアへ顔になっているドールをにらみつけた。
「こりゃ、地獄へ行っても恨まれそうだな。」
そういって俺はドールの前に歩みを進めて彼女に掌を向けた。
「んじゃ、お前ら・・・改めてさようならだ。」
「お、お前らって?」
「このスキルは広範囲に及ぶんだ。よってお前の人格も今ここで終わる。」
「え、ちょっと待ってあたしだけでも助け、嫌アアアアア!!」
俺が力を込めると、右手の淫紋がピンク色に光り出した。
そして、俺の手のひらからピンクの靄があふれ出してきた。
「ほほう、凄まじい量の気じゃな。」
そして、その靄は檻の中でギャーギャーわめいている娘をも覆った。
途端に娘はおとなしくなり、騒ぎで目が覚めた彼女たちも瞳の色が皆ピンクに変わっていった。
俺は、頃合いを見てドールから手を離した。
「さあ、君たちの新しいリーダーであるギガメス様にご挨拶しなさい。」
娘たちはドールを含めて一斉に立ち上がり、ギガメスの方を振り返ってお辞儀をした。
「「よろしくお願いします!ギガメス様!」」
「よろしく・・・ハッ、オホン!ようこそ娘たちよ、お前たちはこれから魔王軍の一戦力としてこの魔王ギガメスに忠誠を尽くさせてもらうぞ!」
「「ハイ!」」
なんか一瞬、ギガメスの瞳がピンク色になった気がしたが気のせいだろう。
「では、早速お前たちの仕事の時間だ。残念だが、これがお前たちの最初で最後の仕事となるだろう。仕事場へはメイド長のエロフが案内する、皆今後はエロフの言うことをよく聞くように!それと、ドールは今後わらわの婿であるブレイクの所有物とする。ドールよ!異存はないな?」
「ハイ。」
「みなさん、よろしくね。」
すると、先程姿見を持ってきた銀髪ボインのダークエルフがうっすら笑みを浮かべながらお辞儀をした。
「「ハイ!よろしくお願いします!エロフメイド長!」」
「では、こちらへ・・・。」
娘たちが去ったのを見届けた後、ギガメスはため息をついた。
「どうした?奴らに情でも湧いたか?」
「いや、そうじゃない。呆れておるのじゃよ。」
「やっぱり凄いと言っても、あの程度のオーラじゃ淫魔王様としてはまだまだですものね。」
「そうじゃない!お前さんのオーラが強すぎると言っておるんじゃ!危うくわらわまで従うところじゃったんじゃぞ!」
「え、まじで?」
「まあ、これで仕事が一つ片付いた。皆もご苦労じゃった。各自の持ち場に戻るように。」
「「ハイ!魔王様!」」
皆がぞろぞろと出ていくのを二人で見届けた後、ギガメスが玉座から離れてこちらにやってきた
「本当にお主には感謝してもしきれんわブレイクよ。」
「俺にはもったいない言葉だぜ。」
「褒美は一つとは言ったが今は気分がすこぶるよい!何か・・・何かわらわにしてほしいことはあるかの?」
ギガメスはもじもじしながら顔を赤くした。
この手の妄想をしている俺はすぐにギガメスが何をしてほしいかを察した。
「それじゃあ・・・。」
こうしてオークもどきと迫害されてきた俺は、魔王ギガメスという可愛い幼な(?)妻とともに快適な魔王城ライフを送ることになるのだった。
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