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⑦③


二人で見つめ合っていると、ピーターが「ボクも」と言ってディアンヌとリュドヴィックにアピールする。

リュドヴィックは軽々とピーターを抱え上げる。

三人で笑い合いながら、ロウナリー国王の元へと挨拶へと向かう。


王妃は大切な時期だからと無理しないように今日は欠席していた。

三人で挨拶をすると、ロウナリー国王はピーターに「立派な紳士になったな」と声を掛けている。

数カ月前とは別人のようだ。

ピーターも誇らしげに「はい、ありがとうございます!」と答える。

ピーターが立派に挨拶する姿を見て、ディアンヌは目に涙を浮かべながら頷いた。


無事に挨拶を終えて、三人で両親とロアンの元へと向かった。

両親はディアンヌの姿を見て大号泣しながらリュドヴィックに感謝していた。

どうやらディアンヌが煌びやかなドレスでパーティー会場に立っていることに感動しているらしい。

社交界デビューもさせてあげられずに、ずっと苦労をかけていたことを悔いていたらしい。

リュドヴィックが母と涙と鼻水だらけの父を宥めている間に、ロアンは学園生活のことを話してくれた。

たくさんのことを学べて、幸せだそうだ。



「いつか姉上に恩返しができるようにがんばるから」


「……ロアン」


「ありがとう、姉上」



ディアンヌはロアンの成長に感動していた。

今から領地が立て直したことや、果実がいつ献上できるのかをロウナリー国王に報告に向かうそうだ。


それからリュドヴィックが席を外している間に、以前お茶会を開いた夫人たちと共にいた。


何故なら会場に入った時から、ある視線を感じていたからだ。

三人で談笑していると、痺れを切らしたのだろうか「ディアンヌ、久しぶりね」と親しげに名前を呼ばれて振り返る。


そこには真っ赤なドレスと同じく金色のチェーンに赤い宝石がこれでもかと嵌め込まれたアクセサリーを身につけているシャーリーの姿があった。

ディアンヌは眉を寄せそうになったが、表情を取り繕いつつも挨拶をする。



「シャーリー様、ごきげんよう」



ディアンヌの以前とまったく違う立ち居振る舞いに気がついたのだろうか。

するとシャーリーの表情が一気に強張ってく。

いつもと違うよそよそしい態度にしたのはディアンヌなりの気遣いだった。

お茶会の誘いを断ったことでシャーリーは諦めたのかと思いきや、こうして前に姿を現したことに驚いていた。


(どうしてわざわざ関わろうとするのかしら……)


あれだけのことをしておいて、こうして普通に話しかけてくるシャーリーの神経がわからなかった。

シャーリーはディアンヌの周りにいる夫人たちに値踏みされるような視線を送られて、引き攣った表情だ。


夫人たちにカシス伯爵家の宝石をつけている人は誰もいない。

ディアンヌは夫人たちと共に話していたが、シャーリーは引くつもりはないようだ。


そしてここで何かを察した夫人の一人が、あることをディアンヌに耳打ちしてくれた。

ディアンヌが頷いてからお礼を言う。

これが、社交界で渡り合ってきた夫人たちの知恵なのだろうか。


そのままシャーリーの横を通り過ぎて歩いていく。



「──待ちなさいよっ!」



待っていましたと言わんばかりに、シャーリーがディアンヌの目の前に立ち塞がろうとする。

しかしどこで見ていたのか、リュドヴィックがディアンヌを庇うように前に出る。

リュドヴィックに睨まれたシャーリーは勢いに押されたのか、唇を噛み締めつつ一歩後ろに下がった。

いつの間にかやってきたピーターも何かを感じたのだろうか。

ディアンヌを守るように片腕を上げる。


まるで騎士のようなピーターの行動にディアンヌは感動していた。


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