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⑦①


「ディアンヌ……とても綺麗だ」



ストレートな言葉は心に重たく響いた。

今まで感じたことない温かくて、くすぐったい気持ちはリュドヴィックの前だけ。

それは特別な感情だった。

ディアンヌもその言葉に応えるように微笑みを返す。



「ありがとうございます。リュドヴィック様」


「ああ」


「このドレスも素敵すぎて、嬉しいです……!」



ディアンヌは改めてドレスのお礼を口にする。

するとリュドヴィックは当然のようにこう答えた。



「今度は一緒にドレスを選びに行こう。実は……ディアンヌに似合いそうなドレスがたくさんあって困ってしまったんだ」


「……!」


「自分の選んだドレスを着てもらえるというのは、こんなに気分が高揚するのだな。初めて知った」



リュドヴィックが発する甘い言葉にディアンヌは溶かされていく。

まるで物語の中に入り込んでしまったようだ。

彼はポケットに手を入れると小さな箱を出す。

パカリと蓋が開くと、そこには銀色のリングにシンプルな青い宝石が嵌め込まれている。

リュドヴィックはその指輪をディアンヌの左手の薬指に、そっとはめる。

サイズはピッタリだった。


(この指って、まさか……)


ディアンヌが彼の左手の薬指を見ると、ディアンヌとお揃いの指輪がはまっているではないか。

驚いたディアンヌが顔を上げると、困ったように笑ったリュドヴィックと目が合った。



「遅くなってすまない」


「リュドヴィック様、これって……!」


「このパーティーが終わったら結婚式を挙げよう」


「……!」


「順番がバラバラになってしまったが、今からやり直していこう」


「はい……! ありがとうございます」



ディアンヌはリュドヴィックを勢いよく抱きしめた。

彼はディアンヌを受け止めてから、軽々と抱え上げて立ち上がる。

契約結婚から始まった関係ではあったが、共に過ごしたうちにどんどんと距離が近づいていった。

そして本物の家族になっていくような気がした。


照れてしまい目を合わせられないでいるディアンヌと違い、リュドヴィックは余裕の表情だ。

なんとなく悔しくなったディアンヌはリュドヴィックの手を握り自分の方へ引き寄せた。

そして彼の頬にお礼代わりのキスをする。

初めは目を丸くしていたリュドヴィックだったが、次第に頬が赤らんでいく。

そして柔らかい笑みを浮かべながら、ディアンヌを見つめている。


ここ半年でリュドヴィックは別人ではないかと思うほどに表情が豊かになったような気がした。

ディアンヌがリュドヴィックの頰にキスをしていたのを見ていたピーターが「リュドばっかりずるい!」と頬を膨らませている。

ディアンヌが可愛らしいピーターの頬にキスをしようとした時だった。


ふわりと感じる浮遊感。

どうやらリュドヴィックに抱きしめられるように引き寄せられたようだ。

何故だろうと不思議に思っていると……。



「ディアンヌのキスは私だけのものだ」


「リュドばっかりずるい! ほっぺくらいいいじゃん!」


「私がいない時にしてもらえばいい」


「むー!」



むくれるピーターの頬にリュドヴィックが代わりにキスをする。

最近、ピーターとリュドヴィックの関係も、より親密になってきたように思う。


(リュドヴィック様がピーターにやきもちを……?)


ディアンヌの頬がどんどんと赤くなっていくのと同時に二人のじゃれあいは激しくなっていく。



「ボクだってリュドよりかっこよくて頭がよくなって、ディアンヌと結婚するんだ!」


「残念ながらディアンヌは渡せない。私が一番、ディアンヌを愛しているからな」


「ボクの方がディアンヌを大好きなんだぞ!」


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