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⑥②


一週間経った頃だろうか。



「ディアンヌもがんばっているからボクもがんばるよ!」


「……ピーター」



ピーターからそう言われて、ディアンヌは驚いていた。

ディアンヌが懸命に頑張る姿を見て、影響を受けたようだ。

その後も、ピーターが前向きに授業を受けてくれるとエヴァから報告を受けた。

一カ月経つと、厳しい講師たちから少しずつ努力を認められるようになる。


(もっともっとがんばらないと……!)


講師たちからピーターやディアンヌの様子が、リュドヴィックにすべて筒抜けだとは思わずに、ディアンヌは寝る間も惜しんで努力していた。


二カ月が経過すると、なんとなくではあるが形になっていく。

しかしまだまだ未熟だと言われていたので、寝る間も惜しんで勉強していた。

いくら時間があっても足りないくらいだった。

何故なら十六年間、ディアンヌはまったくと言っていいほど社交界に出ていないのだから。

ひたすら頭と体に叩き込んでいくことしかできない。


それからメリーティー男爵家からくる手紙にも励まされていた。

没落寸前だったメリーティー男爵領は、リュドヴィックのおかげでどんどんといい状況に変わりつつある。

ロウナリー国王に子どもが生まれて、フルーツが食べられるような頃には以前と同じとまではいかないが、献上できるほどに実るそうだ。


(みんなも頑張っているんだから、わたしもがんばらないと……!)


ディアンヌは気合いを入れつつ、今の状況を書き綴る。

今度のパーティーには、メリーティー男爵家として参加できるそうだ。

久しぶりに服を新調できると喜んでいた。

ライたちはさすがに元気すぎるので預けるそうだが、ロアンは今後のためにも一緒にくると聞いた。


ピーターは三つ子がこないことを残念がっていた。

けれどこのパーティーが終わった後に、再びメリーティー男爵邸に遊びに行くことになっていた。

リュドヴィックはやはり忙しいようで最終日に迎えに来てくれるそうだ。


どうやら直接、国王陛下に援助してもらったお礼を言いにいきたいそうだ。

どんどんといい方向に進んでいくメリーティー男爵家。

すべてはピーターとの出会いがきっかけだ。



「ディアンヌ、どうしてニヤニヤしてるの?」


「ピーターが可愛いなぁと思って」


「……変なディアンヌ」



頬を膨らませているピーターは相変わらず天使のように可愛らしい。

ディアンヌはピーターに癒されながら自分を磨いていた。


パーティーまであと一カ月と迫った日のことだった。

パーティーまではお茶会に出ている場合ではないと思っていたが、練習にいいのではないかとマリアやララたちから提案を受けていた。


そんな時、タイミングよくお茶会への招待状が届く。

今までもディアンヌに興味を持った令嬢や、繋がりを持とうとする令息たちから誘いの手紙がきていた。

その中にはカシス色の封筒……そこには予想外の名前が書かれていた。

その手紙を手に持ったままディアンヌは固まっていた。


(どうしてシャーリーからお茶会の誘いが?)


恐る恐る封筒を開いて、手紙の内容に目を通すと『あの時のことを謝りたい』と書かれている。

フラッシュバックするのはパーティーの時にどん底に突き落とされた記憶。

それに『友達ではない』と言われたので、ディアンヌはシャーリーと話すことはないと思っていた。


(わたしがリュドヴィック様と結婚したから、焦ってこんなことをしたのかしら……)


シャーリーに借りたドレスは涙と鼻水に濡れて、生地がビヨビヨに伸びていた。

ハイヒールも血まみれだったので、リュドヴィックがカシス伯爵家にドレスとハイヒールを新しく購入して送ったことは聞いていた。

それ以降、連絡はなかったのに……。


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