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⑤⑦


黙り込んでしまったリュドヴィックは何かを訴えかけるようにこちらを見ている。



「リュドヴィック様、どうかされたのですか?」


「今回の件で反省点が見えた。だが、私も頼って欲しい」


「え……?」


「君に辛い思いをさせたくない」



リュドヴィックの言葉にディアンヌの心臓は高鳴っていく。



「私にはディアンヌを守る義務がある」


「そ、そうですよね!」



ディアンヌはリュドヴィックの言葉に翻弄されていた。

契約結婚だから、ディアンヌを守る義務があると言っただけだと必死に言い聞かせる。

胸が痛むのは気のせいだと思っていると……。



「もうこんな無茶はしないでくれ」


「……ッ!?」



リュドヴィックはディアンヌを優しく抱きしめてくれた。

それには驚いて動けなくなってしまう。



「リ、リュドヴィック様!?」


「お願いだ」



リュドヴィックの言葉にディアンヌは頷いた。

すると彼の体が離れる。

先ほどから心臓がうるさくて落ち着かない。

ディアンヌはリュドヴィックを見つめたまま、動けずにいた。


カトリーヌは城からベルトルテ公爵家に派遣された騎士たちによって連れて行かれてしまった。

それからレアル侯爵に向けて、ララの家族をベルトルテ公爵家に引き渡すように要求。

もちろんカトリーヌのやったことについても責任を追及することになる。


ディアンヌの殺人を企てた罪やララを脅していたこと。

今までの傍若無人な態度が明るみになっていく。

レアル侯爵のララたち子爵家を騙して領地を広げたことも大々的に社交界に広まりを見せる。


カトリーヌは今、地下牢で屈辱的な日々を過ごしているそうだ。

レアル侯爵家は降格となり、王家から制裁を受けて領地は縮小されることになった。

そして無理矢理奪われた領地を取り戻すような形で、ララの両親は爵位を取り戻す。

ララが今まで我慢してきたことが報われた瞬間だった。


そしてララはというと子爵家に戻ると思いきや、そのままベルトルテ公爵家に留まることになった。

今はディアンヌの専属侍女として働くことになったそうだ。

ララはそうしたいとリュドヴィックに頼み込んだらしい。



「おはようございます、ディアンヌ様」


「おはよう、ララ」



マリアもカトリーヌがいなくなり、歳の近いララがディアンヌの専属侍女になってくれたことで安心しているようだ。

カトリーヌがいなくなり、屋敷の雰囲気も以前よりもずっとよくなったように思う。


カトリーヌの件が落ち着いた頃。

リュドヴィックが招待状を持ってきた。

それは三カ月後に開かれる王国で開かれる盛大なパーティーの招待状だった。


(年に一回開かれるとても豪華なパーティーで国中の貴族たちが集まるのよね……!)


しかしメリーティー男爵家は色々な言い訳を駆使して参加を見送っていた。

両親は何度か参加したことがあるそうだが、社交界デビューをしていないディアンヌにとっては、パーティー自体に出たことがない。


こんな時にふとディアンヌはシャーリーやカトリーヌの言葉を思い出す。

『身の程知らず』『リュドヴィック様に相応しくない』『社交界にも出たことのない貧乏令嬢』

しかし公爵夫人である以上は、契約結婚であろうと自分のやれることはすべてやりたい。

何よりそれがリュドヴィックの、ベルトルテ公爵家の評価に繋がるとなれば尚更だった。


マリアとララに相談すると、これから社交界シーズンになりパーティーでリュドヴィックと表舞台に出る機会は増えるそうだ。

その話を聞いて、ディアンヌはある決意をする。


(わたしもベルトルテ公爵夫人として、社交界でのマナーを学ばないと!)


思い立ったらすぐ行動。

ディアンヌはすぐさまリュドヴィックの元に向かった。


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