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③⑧ リュドヴィックside2


(これでは父上と同じではないか……)


葛藤をしていて仕事もうまく手につかない。

幼馴染であるロウナリー国王にだけは、すべてを見透かされていたが。


そんな時、ディアンヌと出会ったのだ。

パートナー同伴のパーティーではあったが、リュドヴィックはロウナリー国王と共に参加していた。

王妃は子を身籠もっており、体調が優れないため急遽、リュドヴィックが参加することになる。

ピーターに事情を説明するも「一緒に行く!」と言って聞かなかった。


しかしエヴァからピーターがいなくなったと聞いて、それどころではなくなってしまう。

ロウナリー国王に断りを入れて、ピーターを探しに向かう。

どこにも姿はなく、走り回っていると涙ぐむエヴァとピーターの姿があった。


ピーターを怒鳴りつけようとするが、そんな姿が父と重なり唇を閉じる。

どうやらディアンヌという少女が、ピーターを助けてくれたそうだ。

髪色やドレスの色などを聞いていく。

記憶力には自信があったはずだが、いまいち人物像が浮かばない。


(ディアンヌ……今日のパーティーの参加者にいただろうか?)


リュドヴィックはディアンヌを探すために会場に戻る。

すると人集りができている場所を見つけた。

嫌な感じがしたため向かうと、ピーターが言っていた特徴と一致する女性を見つけた。


また転んでしまった彼女を救い、話を聞いてみるとディアンヌは家族のためにパーティーに来たらしい。

友人に騙されながらも家族を救うために懸命にがんばる姿や、自身が窮地の状況にいつつもピーターに手を差し伸べる優しさ。

その慎ましくも勇ましい姿に好意を持ったのは間違いない。


直向きに現状に抗う姿が姉のアンジェリーナと重なっていく。

姉と同じで行動力があり、思いきりがいいところがそっくりだと思った。

それと同時に社交界慣れしていない純朴な姿に庇護欲を誘われた。

今まで見てきた貴族の令嬢とは真逆。

それからディアンヌの危機感のなさに、リュドヴィックは驚いていた。


足の怪我やピーターが離れなかったこともあり、そのままベルトルテ公爵邸に滞在してもらうことになる。

最初は拒絶的だった結婚。

ロウナリー国王の言葉もあり、真剣に考えてみるがディアンヌとの結婚はメリットしかないのだと気づく。

このタイミングでピーターがディアンヌを好いたことが決め手となったのかもしれない。


だが問題があった。リュドヴィックにはディアンヌと出会ったばかりで愛情を持ち合わせているわけではない。

今まで出会った女性はリュドヴィックに愛を求めてきていた。

一応、拒絶されることを覚悟した上で、契約結婚を持ち出してみるものの、ディアンヌはまさかの快諾。

ここまで清々しく受け入れられるとは思いもしなかった。

彼女はメリーティー男爵家の没落を防ぎ、家族を守りたいとどこまでもまっすぐだ。

育ってきた環境もあるのだろうが、おおらかな彼女には驚かされてばかり。


調べてわかったことだが学園では素行もよく真面目で家族思い。

以前はもう少し控えめな性格だったようだが、没落寸前まで追い詰められたことで積極的にならざるを得なかったのだろう。


ディアンヌは折角、夫婦になるのだから名前を呼んでほしいと言われて納得していた。

名前を呼ぶと急に意識してしまう。

ディアンヌはまったくこちらを意識していないのか笑顔のままだ。


それにあまりにも素直で裏表のないディアンヌを見ていると、本音がポロリと漏れてしまう。

それでもディアンヌは当然のようにリュドヴィックを受け入れてくれる。

リュドヴィックが捨ててしまっていたものを、ディアンヌは思い出させてくれるような気がした。


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