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本日は二話更新です。

こちらは二話目になります。

【AIOライト 20日目 09:15 (1/6・晴れ) 『狂戦士の砂漠の塔』】


「此処で一度三十分の休憩を挟む。この後はボス部屋探しに戦闘だからな。きっちり英気を養ってくれ」

 『狂戦士の砂漠の塔』進入からおよそ二時間。

 採取ポイントを無視して、遭遇した敵だけを倒し、次の階層に向かう事を優先していた俺たちは、大きな消費もなく第三階層に到達していた。


「さて、特性:バーサークについてはだいぶ把握出来たな」

「だな」

「ああ」

「じゃ、この辺りで確認も取っておくか」

 そして今は第三階層に入った直後の部屋。

 つまりはモンスターが出現しない安全な場所での休憩を行っていた。

 で、他のプレイヤーが休憩している中、トロヘル、マンダリン、クリームブラン、俺の四人は車座になって情報のすり合わせをしていた。

 なお、シアは俺の背後で静かに立っている。


「特性:バーサークの文章は猛り狂う者に祝福を。何に猛り狂うのかは分からないが、とりあえずパワーやリジェネのような能力変化は確実にあると見ていいと思う」

「明らかに敵の火力は上がってたもんな」

「それに怯みづらくもなってた」

「激痛状態にしても止まらないレベルだったしなぁ……」

 特性:バーサークの効果はステータスなどの強化。

 ただ、単純に強化しているのではなく条件付きの強化のようだった。

 で、条件については分からないが、強化の内容としてはステータス以外にも一部状態異常への耐性も付いているようだった。

 なにせ此処に来るまでの間に十回ほど戦闘をし、その内の何回かでシアが『ペイン』を決めてくれたのだが、一回も動きは止められなかったからだ。

 いや、それどころか痛みの激しさに応じて、凶暴さが上がっているような気配すらあったくらいである。


「だが、猛り狂っている影響なんだろうな。思考能力は明らかに落ちている。それに特殊能力使用の頻度も下がっているようだ」

 トロヘルの言葉に俺たち三人とシアが小さく頷く。

 ここまでに戦ったモンスターの中には、バーサークマジシャンと言う、見るからに魔法使いな姿の人型モンスターが居た。

 が、このバーサークマジシャン、有り得ない事に杖から魔法を撃つのではなく、杖で殴り掛かってきたのである。

 魔法使いなのにそんな事をすれば……まあ、数の差もあってお察しである。

 で、このバーサークマジシャンの件からも分かるように、特性:バーサークが付くと、遠距離攻撃よりも近接攻撃、魔法攻撃よりも物理攻撃を好むようになるようだった。

 これは毎度おなじみな、特性と特徴が潰し合ってしまった事例と言っていいだろう。


「けど、魔法使い系のモンスターが弱くなっている代わりに物理攻撃系のモンスターは明らかに危険度が増しているよな」

「そうだな、さっきのバーサークゴーレムなんかは本当にヤバかった」

「うんうん、攻撃を受けても受けても止まらなかったもんな」

 だが逆に特性:バーサークによって大きく強化されたモンスターも居る。

 それが第三階層に来る直前で戦ったバーサークゴーレムと言う、岩同士を繋げて身長3メートルほどの巨人にしたような、岩の重量と硬さを以って真正面からゴリ押ししてくるモンスターだった。


「本当に強かったよな……」

「攻撃魔法アイテムを持っている奴が居なければ、何人かやられてもおかしくなかったよな……」

「アレはきつかった……」

「そうだな。中々に厄介だった」

 そう、ゴリ押しだ。

 ゴリ押ししてくるモンスターと、特性:バーサークの相性は最高だった。

 なにせダメージを与えても与えてもまるで気にする事なく、アライアンスの真ん中で岩の両腕を振り回し続け、こちらにそれなりのダメージを与えてきたのだから。

 ここまで戦った『狂戦士の砂漠の塔』のモンスターの中では間違いなく、一番強かっただろう。


「一応聞いておくが、全員残りアイテムは大丈夫だな?」

「ああ問題ない。シアも大丈夫だよな」

「はい、大丈夫です」

「こっちも問題なしだ」

「激しく同意」

 なお、此処までに俺たちが戦ったモンスターはバーサークラクーン×3、バーサークマジシャン、バーサークスカラベ×2、バーサークイグアナ×3、バーサークゴーレムである。

 で、バーサークスカラベとバーサークイグアナについては……特に語る事はない。

 バーサークスカラベはただのデカいフンコロガシで、蹴り出してくる球の勢いと甲殻の硬さは脅威だったが、数の暴力には勝てなかった。

 バーサークイグアナは本来は襟巻を立てて、こちらに混乱の状態異常を与えてくるモンスターだったらしいが、特性:バーサークの為に襟巻を立てる事よりも攻撃を優先してしまい、大した脅威ではなくなっていた。

 後は剥ぎ取れたアイテムについてだが……皮に甲殻、壊れた装備品(杖)、それに石材とあまり見どころはない。

 使い道については、既に思いついている。

 この使い方が出来れば、大幅な強化になるのは確かだろう。


「なら、この後のボス戦も問題なくいけそうだな。全員頼りにしているぞ」

「おう、任せておけ」

「やってやんよ」

「ああ、頑張らせてもらう」

「はい」

 が、アイテムの使い道については、無事に持ち帰れてから考えるべき事柄でもある。

 だから今は集中しよう。

 『狂戦士の砂漠の塔』をクリアすることだけに。

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