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【AIOライト 18日目 13:12 (1/6・晴れ) 漁村ハナサキ】


「これでよし……と」

 ハナサキに帰ってきた俺たちは直ぐに『巌の開拓者(ノーム)』の適当な支部に駆け込み、入手した普通の白い潮の花を倉庫ボックスの中に収めた。


「これでもう大丈夫ですね」

「ああ、倉庫ボックスの中なら安心していい」

 俺もシアも倉庫ボックスの中に普通の白い潮の花が無事に入った事で安堵の息を吐く。

 倉庫ボックスの中は時間が止まっている。

 そして、掲示板情報になるが、他人の倉庫ボックスは操作できない仕様になっている。

 つまりこれで俺が誤操作をしない限り、普通の白い潮の花は実際に使うその時まで確保され続けるという事である。


「それでマスター、この後はどうするのですか?」

「そうだな……」

 さて、携帯錬金炉の素材を一つ確保できたところで、今後の方針について考えなければいけない。


「携帯錬金炉を作るのに必要な素材は後三つ」

「赤い右目の澱み、限られし時に眠るもの、青い左目在りし場の涙、ですね」

「ああそうだ」

 いや、より正確に言えば、どれを優先して回収するか、だな。


「とりあえず赤い右目の澱みについては後回しだな」

「北の湿地を探索する方法が未だに分かっていないんですか?」

「ああ、掲示板を見てたらハナサキの露店で水着は見つかったらしいんだが、その水着の性質……水に浸かっても行動を阻害されないという性質を他の普通の装備品に付与することが上手くいっていないらしい」

 赤い右目の澱みは後回し。

 湿地帯を探索するには、専用装備かそれに近い装備が必要な事は分かっているのだから、その装備がどうやれば入手できるのかが分かるか、あるいは専用装備無しでもゴリ押しできる程度に強くならなければ、回収など不可能だと言い切ってしまっていいだろう。

 なお、水着の防御力はどの部位も一ケタで、しかも部位が少ないと水着としての効果を万全には発揮しないらしい。

 相変わらずの鬼畜GM(ゲームマスター)である。


「限られし時に眠るものは恐らく自動生成ダンジョンで入手できるアイテムだな」

「何でもいいのであれば、既に入手していると言っても良いですよね」

「ああ、そう言ってもいいと思う」

 限られし時に眠るものは俺の想像通りなら、実質的には既に入手済み。

 拘るならば色々と拘れるだろうが……まあ、良いアイテムが見つかればだな。

 装備の強化をするための素材を集めたり、レベル上げのついでに回収するぐらいの気持ちで良いのではないかと思う。


「となると次に手に入れるべきは青い左目在りし場の涙……ですかね?」

「そうだな。それでいいと思う。となると、ヒタイに戻るべきか」

 となると必然的に次に入手を目指すのは青い左目在りし場の涙になるだろう。

 と言ってもこちらについてはだいたいの場所は分かっているし、周囲に出現する敵のレベルもレベルなので、ただひたすらに移動の時間がかかるだけになりそうだが。

 一応、移動の経路を示すなら、転移でハナサキからヒタイへと移動。

 その後南の大門から外に出て、ひたすら南下を続ける事になるだろう。

 途中で茨にも阻まれるだろうが……まあ、それでもひたすら南下だ。

 そうすれば、いずれ着くはずである。


「それで出発は明日と」

「今から向かったんじゃ、最短ルートで行っても森の中で夜を過ごす事になるからな。こればかりは仕方がない」

 なお、何処に向かうとしても、出発は明日の朝である。

 夜中の活動は、色々と問題が多いのだ。

 ゾンビやスケルトンのような実体のあるアンデッド系モンスターが出現するのはまだいい、視覚的にきつい場合はあっても、それだけだ。

 問題はゴーストのような実体を有さないモンスターも時々ではあるが出現するという事。

 俺はまだ会った事はないが、そう言う実体のないモンスターは倒すのに魔法が必須であるため、倒す手段があってもなお面倒な事には変わりないのだ。


「となると今日の残り時間は……」

「うーん、そうだな。折角だし、ハナサキの中の砂浜に行って普通の白砂を集めて、プレングラスボトルを量産してもいいかもしれない」

「では、準備の方をしておきますね」

「ああ、よろしく頼む」

 この後の予定についてはプレングラスボトルの量産が妥当な所だろう。

 街の中で素材を集められるし、プレングラスボトルなら数があっても困らない。

 仮に余ってしまっても、ギルドショップや他のプレイヤーに売るという手段で、それなりの値段で捌けるはずだ。


「じゃあ、行くか」

「はい」

 と言うわけで、俺とシアの二人は装備品以外を倉庫ボックスに入れると、錬金術師(アルケミスト)ギルドの外に出て砂浜へと向かう。

 ただ、此処で一つ予想外な点があった。


「……。考える事はみんな一緒ってか」

「でも、納得は出来ますね」

 それは砂浜の混み合い具合。

 恐らくは潮の花の回収に容器が必要な事、そうでなくともガラス製のアイテムには様々な用途がある事、街の中で安全に回収できることなどが組み合わさった結果なのだろう。

 俺とシアの予想をはるかに上回る人数のプレイヤーが砂浜で採取活動に勤しんでいた。

 しかも中には携帯錬金炉を使って素材を圧縮することで、一個でも多くの普通の白砂を回収しようとしているプレイヤーも居るようだった。


「まあ、揉め事を起こすのも嫌だし、ここは周りに合わせておこう」

「はい、分かりました」

 此処で帰っては来た意味がない。

 俺とシアはそう判断すると、多少周囲の耳目を集めつつも、他のプレイヤーに混ざってゆっくり採取をする事にしたのだった。

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