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【AIOライト 1日目 12:03(満月・晴れ) 南の森林】
「うん、美味しい!」
結論から言おう。
俺の考えは正しかった。
採取する方法によって、得られるアイテムに著しい差があったのである。
と言うわけで、これが現在の手持ちアイテムの一覧である。
△△△△△
ゾッタ インベントリ:25/25
ビギナズハンドアクス
ビギナズクロス
ビギナズグリーヴ
アイオライトのピアス
普通の薬草
普通の樹の枝×5
普通の丸太×10
普通のツル
プレンキャタピラの皮
プレングラスの葉
プレンハウンドの牙
プレンバードの羽根
▽▽▽▽▽
で、この内普通の樹の枝4本と普通のツルは樹の採取ポイントに手で触れた場合に得られたものであり、普通の丸太は全て斧を使った場合に得られたアイテムである。
ここまで分かり易い差が有れば、採取方法によって入手アイテムに差が出るのは間違いないと言い切れるだろう。
「敵の方も……まあ、何とかはなったな」
なお、残りの素材については採取ポイントを回っている間に遭遇した敵から剥ぎ取れたアイテムである。
プレングラスは草がひげ根のような足を使って歩き回っているモンスターで、多少小さ目な以外は特徴らしい特徴もないモンスターで余裕だった。
プレンハウンドについては速さが少々厄介だったが、牙にさえ気をつければ一撃はプレンキャタピラよりも遥かに軽く、迎撃に徹することで特に問題なく狩れた。
プレンバードは鳥らしくとにかく速かったが……何か適当に斧を振っていたら、その内の一つが偶然当たり、HPが無いモンスターだったのかそれだけで倒せてしまった。
なお、どのモンスターもLv.1で、入手した素材もレア度1の特性プレンだった。
まあ、最初のマップで、街にも近い場所だから仕方がない。
「しかし、敵の種類がかなり多いな……」
さて、実を言えば先述の三体にプレンキャタピラを合わせた四種類以外のモンスターも姿だけなら確認している。
それは鶏、蛙、トカゲ、モモンガ、リス、それにゴブリンとしか称しようのない小鬼などであり、遠目から確認しただけならば他にももっと居る。
ゲームのシステム上、序盤から様々な種類のモンスターを出す必要があるのだろうが……それにしてもとんでもない数の種類である。
あれら全てに固有の素材があるのだとしたら、脅威的であると同時に狂気的でもある。
そして、やはりこのゲームはパーティを組む前提なのだろうとも思う。
アレの対抗策を一人で把握しきるのは無理がある。
「うん、一度戻るか」
インベントリは限界で、もうアイテムは入手できない。
どの素材であっても現状では捨てるのはもったいない。
メニュー画面を開けば、満腹度も半分以下にまで減って来ていた。
満腹度がゼロになるとハングリ……空腹と言う状態異常になるそうだし、どうにかして補給をしなければならない。
と言うわけで俺は来た道を戻る形で街に戻る事にした。
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「ふむ……」
「また、薬草か」
「序盤だししゃあないって」
「モンスターは来てないよな」
「てか、さっきからずっと湧いてないぞ」
幸いにして街に戻る途中に敵に遭遇する事は無かった。
いや、もしかしたら当然なのかもしれない。
どうにも街に近づけば近づくほどプレイヤーの数が増えていているのだが、増えたプレイヤーの割合について、戦闘をしているプレイヤーは殆どおらず、採取をしているプレイヤーの数だけが増えている。
可能性の話でしかないが、街に近づくほどモンスターの出現率が下がるか、プレイヤーの人数が多い場所にはモンスターが湧き難いようにシステムがなっているのかもしれない。
もしも後者であるならば……経験値稼ぎをしたいプレイヤーには悪いが、色々と楽になるかもしれない。
持久力と感知力に特化した採取と荷運びを専門にしたプレイヤーに存在価値が生じることになるのだから。
まあ、その辺りの検証はそれ専門の人に任せるとしよう。
「とりあえず街に戻ったら門近くの『
やがて、始まりの街・ヒタイのの城壁と、街の中に繋がる鋼鉄製と思しき巨大な門が木々の隙間から少しずつ見えてくる。
その光景に少し安心していた俺は……
「ギャアアアァァァ!?」
「!?」
唐突に聞こえてきた悲鳴に驚き、悲鳴に誘われるように向いた先で信じられないものを見た。
『処分完了』
そこには頭上に黄色い中立NPCを表すマーカーを付けた全身金属鎧の大男が、俺の身長の倍は間違いなくある槍を片手に立っていた。
そして槍の先にはプレイヤーと思しき黒髪の男が突き刺さっており……今正に白い光の粒子になって消えていくところだった。
『帰投開始』
鎧姿のNPCがゆっくりと歩いて街の中へと帰っていく。
その迫力は進路上に居たプレイヤーたちは思わず身を引き、道をゆずってしまう程に圧倒的な物だった。
「……」
一体何が有ったのか。
常識的に考えれば、中立NPCが自発的にプレイヤーを襲うとは考えづらいし、殺された側のプレイヤーが何かをしたと考えるべきだろう。
だが、その何かについては状況を最初から見ていなかった俺には分からない。
「そこのアンタ。ちょっといいか?」
「あ、ああ……なんだ?」
だから俺は周囲の人間の中から人の良さそうな男性を見つけると、何が有ったのかを尋ねる事にした。
「今さっき中立NPCがプレイヤーを殺していたみたいなんだが、何があったんだ?」
「……。
「!?」
そうして、男性から返ってきたのは、一番あってほしくない言葉だった。
なお、『AIOライト』におけるPK行為はほぼ利益なしです。