89:17-7
本日は二話更新になります。
こちらは二話目です。
「よし、無事に出来たな」
俺は手に持った短剣を軽く数度素振りすると、その詳細を確かめてみる。
△△△△△
棘刀・
レア度:PM
種別:武器-短剣
攻撃力:245
耐久度:100/100
特性:ハイド(認識しづらく、人目に付かない)
ノイズ(聞き取れない雑多な音を持つ)
それはCommonではなくSoleである。
ハイドライの棘を加工して造られた短剣。
返しの付いた二股の刃は、無駄な音や光を出す事なく切る事も刺す事も出来る。
回復力+1
状態異常:ポイズン
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「……」
うわぁ……。
と言うのが、詳細を見た俺がまず抱いた感想である。
攻撃力200オーバーと言うのもヤバいが、なんだか妙な説明文が付いている。
無駄な音や光を出さないって……暗殺用の武器か何かですか?
いやまあ、素材が素材であるし、間違ってはいないのかもだが。
【ゾッタの錬金レベルが11に上昇した。錬金ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】
「ああレベルもか」
と、ここでレベルアップのインフォが流れたので、俺は撃道具を1上げると共に、装備を変更する。
△△△△△
ゾッタ レベル8/11
戦闘ステータス
肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10
精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力20+3・感知力10・精神力11
錬金ステータス
属性-火属性10・水属性10・風属性10+1・地属性10・光属性7・闇属性10
分類-武器類13・防具類13・装飾品13・助道具13・撃道具11・素材類13
▽▽▽▽▽
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ゾッタ レベル8/11
総攻撃力395
総防御力137
右手:プレンスチールタバルジン
左手:棘刀・隠燕尾(回復力+1・毒付与・特性ハイド・ノイズ)
頭:プレントータスメット
胴:プレンキャタピラシャツ
腕:プレンウッドアーム(回復力+1)
脚:プレンキャタピラズボン
装飾品1:プレンウッドリング(回復力+1)
装飾品2:ノイズシムンレインコート(風属性+1・特性ノイズ)
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「これでよし……と」
「終わりましたか?マスター」
「ああ、もう大じょ……」
一通りの操作が終わったところで、シアに声をかけられた俺はシアの方を向く。
そして固まる。
「そうですか、ではもうお話をしても大丈夫ですね。マスター」
笑顔だが凄まじい威圧感を放っているシアの表情に。
少し泣いたのか目が潤んでいたり、鼻先が赤くなっていたりするが、それよりも遥かに強い怒気に。
「お、お手柔らかにお願いします」
「駄目です」
その後、無茶をし過ぎだとして、俺がシアにこっぴどく怒られた事は言うまでもないだろう。
だがそれでもクリアには不可欠な事であるとして、レア度:
これは俺の意地と根性の勝利であるとも、シアが折れた結果とも言える。
が、この交渉の結果として、俺はシアにこの上なく呆れられることになるのだった。
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【AIOライト 18日目 00:05 (1/6・晴れ) 漁村ハナサキ】
「……」
「すぅすぅ……」
俺は久しぶりに深夜に目を覚ましていた。
隣ではシアが静かな寝息を立てて眠っている。
今日は色々と無茶をさせてしまった上に、かなりの心配もかけている。
少なくとも今日ぐらいはゆっくり眠らせてあげるべきだろう。
「……」
こうして深夜に起きるとどうしても思ってしまう。
ここはゲームの中の世界、『AIOライト』と呼ばれる世界。
現実のような感覚を俺たちに与えているが、現実と一般的に呼ばれる世界ではない。
「すぅすぅ……ますたぁ……」
だが、この世界で生まれたシアにとっては?
シアと話していないから分からないが、シアにとってはこの世界こそが現実であり、唯一の世界ではないかと思う。
そして、俺にとっての現実世界はシアにとっては空想……そうでなくとも、知識上に存在しているだけの世界ではないのかと思ってしまう。
「……」
だがまあ、シアがそんな風に思っていても問題はない。
問題はゲームをクリアした時にこの世界がどうなるかだ。
もしもこの世界がクリアと共に消えてしまうのであれば……考えなくてはいけない。
「止める事は出来ない」
殆どのプレイヤーに『AIOライト』をクリアしないという選択肢はない。
向こうに置いてきたものが多すぎるし、この世界には現実世界を知っている者には受け入れられないであろう事柄が多すぎるからだ。
勿論、一部には現実よりもこちらの方が良いというプレイヤーがいるかもしれない。
だがしかしそんなプレイヤーたちがどれほど居てもクリアを完全に止める事は不可能だろう。
このゲームはデスゲームではなく、自分たちと敵対しているプレイヤーを完全に排除する方法など存在しないはずなのだから。
つまり、誰がどう足掻こうが、ゲームクリアを止めることは不可能である。
そして、俺自身そんな方法を採ろうとは思えなかった。
この方法は俺自身を……いや、シアを裏切る行為でしかないのだから。
「となれば……」
であるならば、他の方法を考えるしかない。
それこそ世界が消えてしまってもシアだけは外に連れ出せるような方法を。
狂っていると言われようが、馬鹿げていると言われようが構わない。
歩みを邪魔をする何かがあるのならば、例えそれが世界の理だろうが壁だろうが壊し、乗り越えるまで。
それでこそ、シアがマスターにしてくれている俺と言う人間なのだから。