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87:17-5

本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

【AIOライト 17日目 15:25 (2/6・雨) 漁村ハナサキ】


「やっと帰って来れたな」

「ですねー」

 ハナサキに辿り着き、『巌の開拓者』の中にある自分の部屋に戻った俺とシアは、暫くの間ぐったりとしていた。

 だが俺はともかくシアがぐったりしているのは仕方がない事だろう。

 『秘匿する凍土の街』での戦いはそれだけの戦いであり、シアにはあの戦いで相当の負荷を掛けてしまっているのだから。

 安心できるこの場でくらい休ませてあげたいものである。


「それでマスター、今日はこの後どうします?」

「そうだな……とりあえず、一度受付の方に行ってくるか。折角の機能だし使ってみる」

「では私も……」

「いや、シアは休んでいてくれ」

「いいんですか?」

「ああ、今日は無茶をさせ過ぎたからな。じゃ、ちょっと行ってくる」

「分かりました」

 と言うわけで、俺はシアを部屋に置いて、一人で受け付けの方に行く。


「何かご用でしょうか?」

「ちょっと登録をな」

 受付でやる事は?

 複製機能を使うためのアイテム登録だ。

 と言うわけで、倉庫ボックスと手持ちのアイテムの中から、有用そうなアイテムをピックアップして登録していく。

 具体的には……


・ハイドライの棘

・ハイドオクトパスの墨(容器も付くらしい)

・雑音招く白紙本

・雑音招く薬草

・ノイズモスの苔皮


 の五つである。

 前二つは今日回収したもので、後ろ三つはグランギニョルと一緒に潜った『雑音招く湿地の図書館』で回収したアイテムだ。

 で、これら五つのアイテムを試しに購入してみようと思ったのだが……


「うわ、高っ……」

 どれもこれも高かった。

 ヘルプを見て、仕様の方を確かめてみたところ、登録直後は多少高めの値段になっていて、それから時間経過で値段が下がるようになっているとの事だった。

 うーん、登録直後だと緊急で複製しているから、追加の料金がいるという理屈だろうか?

 いや、あのGM(ゲームマスター)の事だし、単純に嫌がらせかもしれない。


「しかし、安くなってもヤバそうだな……」

 俺はヘルプに記載されている内容から、既定の72時間が過ぎて、最大限に安くなった後の値段を想像する。

 すると恐ろしい事に、値段が下がると言っても、雑音招く薬草はギルドショップで購入可能な普通の薬草の倍以上の値段で止まるようであるし、ハイドライの棘に至っては最低値になっても下手なレア度:1の鉱石や結晶と言った価値が高そうなアイテムの数倍するようだった。


「……。購入でどうにかしようと思うなら、金策必須って事ね」

 まあ、要するにと言うか、やはりと言うか、基本は採取か剥ぎ取りであるらしい。

 そして、この複製機能は既に消滅してしまった自動生成ダンジョン産のアイテムを増やす為だけにあると考えるべきなのだろう。

 実際、時間切れで消滅してしまった自動生成ダンジョンのアイテム……特にモンスターの素材を再入手することは非常に難しいと言わざるを得ないのだから。


「とりあえず戻るか」

 登録は終わった。

 購入は三日……最低でも二日は待つべき。

 と言うわけで、俺はシアの待つ部屋へと帰った。


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「最低でも二日……ですか」

「ああ、だから明日以降は探索とレベル上げ、その二つと一緒に金策も必要になるな」

「大変ですねぇ」

「まあ、GMとしてはその辺の金策ついでに錬金レベルを上げろって言いたいんだろうな」

 俺はシアにそう言いながら、インベントリのアイテムを倉庫ボックスに移して整理する。

 うーん、案外アイテムの消耗は無いな。

 ハイドライの攻撃でプレンウッドバックラーの耐久度が無くなって、壊れた装備品(盾)になってしまったが、それぐらいだ。


「と、シアの方はアイテムの残りは大丈夫か?」

「えーと……」

 俺はシアのアイテムの残りが気になって尋ねてみる。

 すると何故かシアは気まずそうな顔をする。


「その、すみません。マスター。実を言えばもう無いです」

「へ?」

 そう言うとシアは装備品以外のアイテムをインベントリから取り出し、俺の前に並べてくれる。

 そこにはプレングラスボトルに、今日の戦闘や採取で回収した素材はあっても、朝の時点では持っていたはずの回復アイテムは綺麗さっぱりなくなっていた。

 シアは何処で回復アイテムを消費したのか。

 その答えは正直に言って考えるまでもなかった。

 ハイドオクトパスとの戦いの最中に、よくよく考えてみれば不自然に俺のHPが回復していた覚えがあったからだ。


「……。すみませんでした。本当にもう色々と」

 俺はシアに対して心の底から申し訳ないという気持ちを込めつつ頭を下げる。


「え、えーと……マスターは悪くないと思いますよ。マスターが我が身を省みずに戦っていなければ、ただやられて死に戻りしていたでしょうし」

「……」

 それに対してシアは気にしなくていいと言ってくれるが……いや、もう何も言うまい。

 全ては俺が悪いのだから。

 この気まずさも含めて、俺の痛みについては全てを受け入れるべきだ。


「ほ、ほら、マスター。アイテムの補給の方、よろしくお願いします。明日からも頑張るんでしょう」

「はい、頑張らせてもらいます」

「そうです、その意気です」

 だが何時までも気落ちしていたら、それこそシアに負担をかけることになる。

 そう判断した俺は、適当な素材を売る事でお金を確保して普通の薬草と普通の小麦粉を購入、購入したそれらをプレンメディパウダーへとせっせと変えるのだった。

08/20誤字訂正

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