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本日は二話更新になります

こちらは二話目です

「ああ?船に乗せろだ?馬鹿言うな。余所者を乗せる船何ぞハナサキにはねえよ」

「ああ?船に乗せろだ?馬鹿言うな。余所者を乗せる船何ぞハナサキにはねえよ」

「ああ?船に乗せろだ?馬鹿言うな。余所者を乗せる船何ぞハナサキにはねえよ」

「……」

「あの、マスター。これって……」

「まあ、システム的に封鎖されているって事なんだろうな」

 全部で四人ほどのNPC漁師に船に乗せてもらえないかと頼んだ結果、その全てで同じセリフを返されてしまった。

 これはもう誰がどう考えても、GMによってハナサキでは船に乗る事は出来ないとロックされてしまっていると言う事だろう。

 袖の下系統を試す事も出来なかったからな。


「うーん、もう少し試してみるか」

「試すって何をですか?」

 まあ、ついでなので、もう少し遊んで……ゲフン、試してみよう。

 と言うわけで、俺は別のNPC漁師に近づく。


「この辺りではどんな魚が獲れますか?」

「ああ?どんな魚が獲れるだ?馬鹿言うな。余所者に話す事何ぞハナサキにはねえよ」

「この船は別の都市に行ったりはしますか?」

「ああ?何処に向かうだ?馬鹿言うな。モウテンを突くような質問をしても無駄だよ」

「私は錬金術師ですが、何か役立てる事はありますか?」

「ああ?錬金術師だ?馬鹿言うな。仕事ならギルドを通してだ」

「漁師の仕事は長いのですか?」

「ああ?仕事が長いだ?馬鹿言うな。余所者に話す事何ぞハナサキにはねえよ」

「船はどうやれば作れますか?」

「……。ハナサキまでしか来れて無いような奴に教える事はねえよ。知りたけりゃあビまで来れるようになってからだ。これ以上言う事はねえよ」

「なるほど」

 うん、少しだけだが成果が有ったな。

 まずビと言う地名が確定。

 それと盲点……いや、モウテンと言うのも少し怪しいな。

 微妙に定型文から外れている感じがある。

 これはもしかするともしかするかもしれない。


「待たせたな。シア」

「いえ、それよりもマスター、今のは……」

「まあ、上手くいけば美味しい程度な、ちょっとした情報収集だな。成果もあった」

「ビ……ですね」

「そうだ。尤も、実際に行けるのはだいぶ先になるだろうけどな」

 実際、名前が分かったところで、行けるのはかなり先の話だろう。

 なにせ()だ。

 ここが鼻先(ハナサキ)なのだから、陸路で行くならば、恐らくはほぼ世界の真反対、ヨーロッパからユーラシア大陸を横断して中国に行くような物だろう。

 まあ、世界が丸いのであれば、海を越えた直ぐ先にあるのかもしれないがな。

 と言うか、もしかしなくてもこの世界って羊を真上から見たような形をしているのだろうか?

 あのヒントとの整合性を考えるとそう捉えるしかないのだけれど……何故そんな形にしたんだ?

 ま、今は考えなくてもいいか。


「さて、残念ながら船には乗れなかったわけだが……シア、何処か行きたい所はあるか?」

 それよりも今は休日を楽しむとしよう。

 と言うわけで、シアに何処か行きたい所はあるかと聞いてみる。

 すると、シアは少し悩んだ後に口を開いてくれる。


「砂浜……と言うのが、街の中にあるなら行ってみたいです」

「分かった。じゃあ、海岸線沿いを歩いて探してみよう」

 砂浜か……現実だと子供の頃に一度行った事があるぐらいで、その時もあまり天候が良くなかったから、俺も殆ど知らない場所である。

 うん、『AIOライト』の中なら、足が砂で汚れたりもしないだろうし、丁度いいかもしれない。

 なので俺はシアと手を繋ぐと、ハナサキの街の海岸線沿いを歩きはじめることにした。

 ああ……シアの手の温かさと柔らかさが心地いいなぁ……。



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【AIOライト 16日目 13:25 (半月・晴れ) 漁村ハナサキ】


「ありましたね。砂浜」

「だな」

 露店でヒタイとは比べ物にならない程の種類を持つ軽食を買って食べつつ歩く事およそおよそ二時間。

 俺たちは砂浜を見つけていた。


「ただ……ちょっと小さ目か?」

「そうですか?少し遊ぶぐらいなら、この大きさで問題はないと思いますけど」

「うんまあ、俺とシアの二人だけなら確かに問題はないか」

 ただそのサイズはあまり大きくない。

 浜に同時に入って遊べるのは、30人ぐらいが限度だろうか。

 所々に小舟のような物が上げられている所を見ると、遊ぶためではなく、小型の船舶を泊める為の場所なのかもしれない。


「あー、確かに砂だな」

「砂ってこんな感触何ですね」

 俺とシアは揃って砂浜に下りると、軽く歩いてみる。

 足裏から伝わってくる感触は昔感じた事がある砂場のそれと殆ど変わりない。

 どうやら、ここはきちんと再現されている方の場所であるらしい。


「と、採取ポイントもあるんだな」

「試しに採ってみましょうか」

「そうだな」

 で、砂浜を改めて見回してみれば、所々に採取ポイントがあるのが見えた。

 なので、俺もシアも試しにと言う事で何回か採取をしてみる。



△△△△△

普通の白砂

レア度:1

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


極々普通の砂。

白くさらさらとしており、熱することで溶かす事も出来る。

▽▽▽▽▽


△△△△△

普通の白砂

レア度:2

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


極々普通の砂。

白くさらさらとしており、熱することで溶かす事も出来る。

▽▽▽▽▽



「ん?」

「あれ?」

 俺は採取した二つの普通の白砂を見てみる。

 すると、二つの普通の白砂は説明文などは同じなのに、レア度だけが異なっていた。

 そしてシアが回収したものとも見比べさせてもらったが、俺と同じ場所で回収したのにレア度が違うと言う事もあった。

 これはえーと、とりあえずレア度:1とレア度:2、どちらが採れるかはランダムであり、レア度が表していたのは希少さではなく、質だったという事なのだろうか?

 ああうん、でもよくよく考えてみたら、昨今のソシャゲには時々ある話だよな。

 レア度は希少性だけではなく質も表していますっていうゲーム。

 それを考えたら質だけ表しています、と言うのでも、そこまでおかしくはないか。

 『AIOライト』はソシャゲじゃないけどな。


「えーと、どうしましょうか?」

「とりあえず回収出来るだけ回収しよう。ゆっくりと景色でも楽しみながらな」

「はい」

 とりあえず普通の白砂の使い道は既に思いついているので、回収出来るだけ回収するとしよう。

 そして休日であるのだから、沖の方を航行している船でも眺めながら、ゆったりする事にしよう。

 そうして俺とシアは日暮れまで砂浜で過ごすと、近くにあった『巌の開拓者』ハナサキ第15支部から第7支部に帰るのだった。

08/14誤字訂正

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