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本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

【AIOライト 15日目 18:12 (4/6・晴れ) 漁村ハナサキ】


「さて、今日はもう肉体的には休むべきだな」

「えと、その前にいいですか?マスター」

「どうした?シア」

 部屋に飛ばされた俺は、寝るのに邪魔な装備品を外すと畳の方に腰掛ける。

 で、どうやらシアは先程の会話について言いたい事があるらしい。


「その……先程の方はもしかして……」

「ああ、GM(ゲームマスター)だ。どうしてあんなところに居たのかは分からないけどな。ま、気にしてもしょうがないな。あの悪魔の考えなんて、ただの一プレイヤーが気にしたって意味はない」

「……」

 俺の言葉にシアは何故か口を開けて呆然としている。

 その姿自体は可愛いから良いのだが……どうしてそんな表情になるのだろうか?


「マスター……胆力ありますね」

「そうか?」

「そうですよ」

 と、我に返ったシアが今度は何処か疲れた様子で口を開く。

 うん、どうしてあれだけで胆力がある事になるのか分からないな。

 あのGMなら、あのぐらいの暴言なんて気にするはずがないぞ?


「まあ、GMについては放置だ放置。考えても仕方がないからな」

「はあ……」

「それよりもヒントについて考えるぞ」

「あ、はい」

 俺はシアを畳の方に招くと、フレンドへのメッセージを送る項目をメモ代わりにして、老婆が出してきた携帯錬金炉の入手法についてのヒントを考える事にする。


「えーと……ヒントは『羊の鼻が見つける白花と赤い右目の澱みが器となる。限られし時に眠るものと青い左目在りし場の涙が泉となる。器の中に泉の源来れば汝の炉は産声を上げるだろう』でしたっけ」

「そうだな、それでいいはずだ」

 シアがヒントを暗唱する横で、俺はまずヒントの内容を要素ごとに分割してみる。

 すると、恐らくは携帯錬金炉作成には四つのアイテムが必要になる事が分かった。

 つまり、


・羊の鼻が見つける白花

・赤い右目の澱み

・限られし時に眠るもの

・青い左目在りし場の涙


 である。

 恐らくだが、この四つのアイテムの内、前二つと後ろ二つをそれぞれ錬金し、そうして得た二つのアイテムを錬金して一つにする事で、携帯錬金炉が出来るのだろう。


「んー、羊の鼻が見つける白花と言う事は、いい香りがする白い花何でしょうか?」

「いや、それなら羊の鼻がとは言わないだろう。羊と人の鼻の間に感度の差は大きくあっても、好き嫌いにそこまでの差があるとは思えない。そもそも好き嫌いは主観的な物だしな。むしろこれは……場所なのかもな?」

「場所ですか?」

「ここはハナサキだからな。ハナサキが鼻の先という意味なら、この世界全体が羊の頭の形をしていると言う想定で、羊の鼻が探るのは海か浜辺、白花はこの周辺にあると言う事になるな」

「ほへー……凄いですね。マスター」

「白花が文字通りに白い花なのかまでは分からないけどな」

 シアが感心した様子で俺の事を見つめてくる。

 うん、嬉しさでちょっと照れそうだ。

 と、イカンイカン、考えが脇に逸れそうだな。


「で、この予想が正しいとなると……赤い右目と青い左目も想像が付くな」

「そうなんですか?」

「始まりの街がヒタイ、おでこだからな。ここが鼻の先なら、赤い右目は北の湿地、青い左目は南の森林だ」

「なるほど。それじゃあ、澱みは泥か何かで、涙は水ですかね?」

「そうだな、その可能性が高い……ああ、というか左目在りし場ってのはもしかしなくてもあの湖の事か?ヒタイ側に崖があるし、見方によってはそう見えなくもないな」

「そうなると凄くデカい目があったんですね……」

「まあ、そうなるな……」

 赤い右目と青い左目についてはほぼ間違いないだろう。

 尤も、間違いがない場合、話に聞くだけでも厄介そうな北の湿地に行かざるを得ない事になるわけだが。

 うーん、先駆者様が何か分かり易くて簡単な対応を思いついていないか、後で掲示板を覗いてみるか。

 湖については……一泊二日で行くつもりであれば、問題なく行って帰って来れるだろう。

 一応でも、だいたいの位置は分かっているしな。


「後は限られし時に眠るものですけど……」

「あー、そっちはまるで分からない」

「そうなんですか?」

「ああ、まるで分からない」

 後の問題は限られし時に眠るものだが……こちらについてはシアに言った通り、まるで分からない。

 限られし時だけならば時間制限か何かがあるという事で、自動生成ダンジョンあるいは期間限定のイベントか何かだとは思う。

 だが眠るものと言うのが分からない。

 他の文言と違って、具体的な像が浮かばない。

 眠るものという言葉からイメージするのは本当に眠っているものから、封印されているもの、死んでいるものと言ったところだが、ものはものだ。

 物でも、者でも話は通ってしまうと思うし、当てはめようと思えば、何だって当てはまってしまうと思う。


「いや……、あるいは何でもいいのか?」

「マスター?」

 だがもしかしたらそれが答えなのかもしれない。

 自作するという部分から生じるプレイヤーの個性を表す部位。

 それが限られし時に眠るものなのかもしれない。

 であれば……本当に何だっていい可能性もありそうである。

 尤も、何でもいいからと言って適当な素材を放り込んだら、相応のしっぺ返しがありそうだが。


「ふうむ……シア、とりあえず今日はもう休むぞ」

「いいんですか?」

「ああ、だいたいの目星は付いたからな。後はまあ、それっぽい素材を見つけてから、それが正解かを考えよう」

「分かりました」

 そうして俺たちは、今日の所はもう休むことにした。

 さて明日は……ほぼ休みでもいいかもしれないな。

 折角新しい街に来たのだから。

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