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【AIOライト 15日目 15:45 (4/6・晴れ) 西の草原】


「さて、見えてきたな」

 例のモノリスが隠されている樹の横を通り過ぎてから六時間。

 ちまちまと襲い掛かってくる雑魚モンスターを蹴散らしながら歩いていた俺たちの視界に高い城壁のような物が入ってくると共に、心地いい程度に磯の香りが漂ってくる。


「アレがハナサキ」

「丸二日ってところか。かかったなー」

 街の名前は漁村ハナサキ。

 だが、こうして実物を見れば分かる通り、その規模は完全に漁村ではなく港街と呼ばれるべき規模である。

 そして、俺たちが求める携帯錬金炉についての情報が存在している街である。


「でもまあ、これで後は街の中に入って、それぞれの錬金術師(アルケミスト)ギルドのギルドポータルを登録すれば一段落か」

「その通りだ。登録さえ終えれば、ギルドポータルの機能で、自由に行き来が可能になる。そう言うわけだから、最後まで油断せずに行こう」

 俺たちは雑談しながらも、周囲に注意を払いつつハナサキに近づいていく。

 そしてマップの名称が西の草原からハナサキの海岸に変わり、磯の匂いが強まり、波の音がほんの少しだけ聞こえるようになった頃だった。


「敵影発見しました。こちらに向かってくるようです」

 シアが敵影を発見し、声を上げる。


「来たか。全員戦闘準備」

「距離的にもラスト戦闘ってところですかね」

「うしっ、それじゃあ頑張らないとな」

「シア、援護頼むぞ」

「はい」

「「……」」

 敵の名前はプレンバンディットLv.6で、数は四体。

 見た目は完全に人間で、短剣を持ち、ボロボロの着の身着のままな衣装を身に付けたその姿は名前通りに野盗の姿である。

 うん、数はホムンクルス込みでこちらの方が多いが、油断は禁物だな。


「全員、一人で一体担当しろ!」

「ういっす!」

「了解!」

「分かりました!」

 ジャックさんはそう言うと、腰の短剣を二本抜き、ホムンクルスであるスカルペルも起動して、プレンバンディットに切りかかる。

 その動きに人型を相手にする淀みのような物は見えない。

 どうやらジャックさんはかなり対人慣れしているようだ。

 これならば、負けは無さそうである。


「……」

「スピードタイプは苦手なんだけど……な!」

 続けてクリームブランが接敵し、相手の短剣を大型の盾で受け止めつつ、メイスを振りかぶる。

 躊躇いや不慣れさは見えるが、ホムンクルスのレチノールによる火力支援も入り始めているので、こちらも大丈夫そうだ。


「……」

「それを言ったら対人自体が苦手だっての!」

 マンダリンも戦闘を開始する。

 こちらは間合いの差を生かし、相手を懐に入れない事を第一として立ち回るつもりであるようだ。

 勿論、完全には防げていないので、反撃も受けているが、ホムンクルスのウンシュウによる回復があるので、問題は無さそうである。


「……」

「マスター!『癒しをもたらせ』!」

「ありがとな!シア!」

 で、最後に俺の方だが、俺のステータスと装備なら、真正面からの殴り合いが一番効率が良いという事で、プレンバンディットが攻撃を行うタイミングでこちらも攻撃する方法を取っている。

 なので、一応盾で短剣の刃が直接刺さるのは防いでいるが、お互いにダメージは積み重なっていく。

 だが、俺の方はシアの魔法によって回復力が強化されていて、こうしている今も少しずつ回復はしているので、ダメージレースに負ける事はないだろう。

 しかし、ダメージとは別に問題が起きていた。


「うわ!金盗られた!?」

「盗みを働くとかめんどくさ!?」

「名前通りでいいじゃないか。額は……大したことはないようだな」

「いや、そう言う問題じゃないかと」

 それはプレンバンディットの攻撃を受ける度に所持金が減っているという事実。

 一回一回は微々たる額だが、確実にお金は盗まれていた。

 倒してもお金が返ってくる保証はない。

 うん、これは早々に倒すべきだな。


「シア!」

「『ペイン』!」

「!?」

 シアが『ペイン』を使用してプレンバンディットの動きを止める。

 そこへ両手で斧を持った俺が連続で攻撃を加えて、プレンバンディットのHPバーを削り切る。


「ふんっ!」

「『ブート』!」

「助かった!」

「流石シアちゃん!」

 そうして自分の担当を倒したところで、まだ倒し切れていないマンダリンとクリームブランが相手をしているプレンバンディットへ奇襲を仕掛け、こちらも倒す。


「ジャックさん」

 で、最後のジャックさんが相手をしているプレンバンディットの方はどうなったかと思って見たが……。


「もう、終わっている」

 既に終わっているようだった。

 ジャックさんの足元にはプレンバンディットの死体が転がっている。


「さあ、剥ぎ取りを終えたら、街の中に入るとしよう」

「はい」

 ジャックさんには疲れはおろか、息の乱れすらも見られなかった。

 どうやら余裕の勝利であったらしい。

 なお、剥ぎ取りについては、壊れた装備品(短剣)と少量のG、それに盗られた分のお金が戻って来ただけだった。

 素材らしい素材が手に入らないのは……一応、相手が人だからだろうか?

 まあ、いずれにしても、これでハナサキへの旅路は無事に終わりである。


「ハナサキ到着!」

「やったぞー!」

 そうしてハナサキに到達した俺たちはパーティを解除すると、それぞれの錬金術師ギルドを探し始めたのだった。

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