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本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

【AIOライト 14日目 06:35 (5/6・雨) 始まりの街・ヒタイ】


「マスターの予想通りの雨ですね」

「んー……」

 今日は雨が降っていた。

 それ自体は予想通りである。

 が、予想外の部分もあった。


「どうしました?マスター」

「いや、予想ではもう少し激しく降ると思っていたんだけどな」

「激しく……ですか?」

「ああ、少し降りが弱い」

 それは雨の強さだ。

 七日目の雨は今日降っている雨よりももっと強く、音を立てて降っているほどだった。

 だが今日の雨は小雨な感じで、一日中浴びているならともかく、一、二時間程度なら浴びていても問題は無さそうな感じだった。


「えーと、それは悪い事なんですか?」

「んー、まあ、悪い事ではないと思う。厄介ではあるけどな」

「はあ……?」

 うん、実を言えば『AIOライト』世界の雨について、掲示板では二つの予想があった。

 一つは俺もそうだと思っていた七の倍数の日に降るというパターン。

 もう一つは七の付く日に降るというパターン。

 どちらが正解なのかはその日になってみなければ分からなかったのだが、今日の雨の様子から見る限りは……両方のパターンの組みあわせなような気がしてくる。

 それならば、今日の雨が若干抑えめなのも納得がいく。


「まあ、今は気にしなくていいさ」

「分かりました。マスターがそう言うなら、気にしないでおきます」

 だが、シアにも言った通り厄介な事ではある。

 二つのパターンの組み合わせだと、雨の日が一気に増える事になるし、なによりも雨関係で恐ろしい日がこの先に待ち受けている事になってしまうからだ。

 『百華統べる森の女帝』のレベルを考えたら、その日までにゲームが終わらせられるとも思えないしな。


「さ、目指すは西だ」

「はい、マスター」

 そうして俺とシアは西の大門から、西の草原へと出たのだった。


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【AIOライト 14日目 07:05 (5/6・雨) 西の草原】


「随分と沢山の人が居ますね」

「これは……そう言う事か?」

 西の草原には普段以上に多くの人が居た。

 装備や話をしている様子から察するに、どうやら彼らもハナサキへと向かうらしい。

 向かうらしいが……道中のモンスターとの戦いを避けるべく、多少の遅れが出るのは覚悟の上で、百人近い集団で進むつもりのようだった。


「おや、ゾッタ君」

「番茶さん」

 と、ここで集団の中から俺の数少ない顔見知りである番茶さんが出て来て、声をかけてくる。


「番茶さん、もしかしなくてもこの集団は……」

「ああ、ゾッタ君の考えている通りだ。携帯錬金炉獲得の為にハナサキに向かう事を考えている集団だよ」

 番茶さんはそう言うと、この集団の詳細について教えてくれる。

 まず面子については、各錬金術師(アルケミスト)ギルドの情報屋……通称『七茶同盟』の面々が集めたプレイヤーで、およそ三分の一がホムンクルス取得済みの戦闘面でのトッププレイヤーで、もう三分の一ぐらいは錬金術の方のトッププレイヤー、そこに微妙なレベルのプレイヤーや、道案内役を加えた結果として、百人以上の大集団になったとの事だった。

 なお、ハナサキぐらい戦闘面でのトッププレイヤーなら独力で行けるのではないかとも思うが、この数になるとそもそも近くで新たにモンスターが湧く事が無くなって結果的に早く辿りつけること、それに地上のモンスターではもう経験値が美味しくないという事から、戦闘面でのトッププレイヤーも参加しているとの事だった。


「まあ、今日が雨だと思っていなかったプレイヤーは参加を見送らざるを得なかったようだがね」

「保存食含め、そこは準備しない方が悪いです」

「ははっ、まあ、ゾッタ君ならそう言うだろうね」

 ちなみに雨具、保存食、寝具の準備については各自で行うようにとの事だった。

 まあ、これは妥当な条件だろう。

 それでも念のためにと言う事で番茶さんは多めに必要な物資を持ち込んでいるそうだが。


「ボソボソッ(あれ?そう言えばマスター、私たちの寝具は?)」

「ボソボソッ(そこは腹案があるから大丈夫だ。まあ、この分なら番茶さんから買い取ってもいいかもしれないけどな)」

 俺はシアと小声で少し会話をする。

 なお、財布の中身は今朝、要らないアイテムを幾らか売ったので、それなりに潤っている。


「さて、相談も終わったところで提案なんだが、ゾッタ君、一緒に行かないかい?私としては、君が一緒に行動してくれるのは中々に心強いと思っているんだが」

「そうですね……」

 俺は頭の中でメリットとデメリットを考える。

 メリットは間違いなくハナサキに着ける事、それと移動の間に色々と情報交換を行う事も出来るだろう。

 デメリットは到着が幾らか遅れる事に、シアに不快な思いをさせる可能性が少なからず存在する事。

 今この場ですら、わざわざ女性型ホムンクルスを他のプレイヤーに対して見せびらかすようにしている男性プレイヤーが何人か居るしな。


「ボソボソッ(マスター、私の事を気にしているなら大丈夫ですよ。通報能力なら私にも有りますから)」

「それは知っているが……」

 さてどうしたものか……。

 俺はしばしの間悩み、そして決める。


「すみません、番茶さん。俺とシアは二人で行きます」

「マスター……」

「そうか、まあ仕方がないね」

 俺とシアは二人でハナサキを目指すと。

 まあ、番茶さんにも何故俺たちが断ったのかと言う理由は分かっているのだろう。

 例の男性プレイヤーたちの方に少しだけ視線を向けると、残念そうな溜め息を吐く。

 うん、だがこればかりは仕方がない。

 傍から見れば俺も同じようなプレイヤーではあるのかもしれないが、ああ言う人間にシアは接触して欲しくない。


「では、二人とも気をつけて行くように。君たちと同じようにハナサキを目指しているプレイヤーは多いから、早々妙な事は起きないだろうけど、油断だけはしないでくれ」

「はい、気をつけます」

「お気づかい、ありがとうございます」

 そうして俺とシアは番茶さんに一礼をすると、二人だけでハナサキへと向かい始めたのだった。

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