67:13-4-D2
「じゃ、まずはアイツとだな」
「分かりました」
「いいだろう」
「じゃ、私から始めるわ」
俺たちがまず目を付けたのは、他のモンスターから離れた場所でゲコゲコと鳴いている体高が1メートル近くある蛙だった。
名前はノイズトードLv.7、自動生成ダンジョンの特性上、状態異常ノイズを使ってくるのは確定だが、それ以外にも舌による引き寄せ攻撃や強靭な脚を生かした跳躍とキックを行ってくるモンスターである。
まあ、それでもこの四人なら何とかなると判断し、俺一人が前に出て、残りの三人は後ろでそれぞれの得物……シアは杖を、グランギニョルは本を、ブルカノさんは導火線の付いた見るからにそうだと分かる爆弾を取りだす。
「『ブート』!」
「ゲコッ!?」
俺の右手側を光の球が駆け抜けていき、ノイズトードの身体に勢いよく突き刺さり、ノイズトードは鳴き声を上げつつ少しだけ仰け反る。
今の攻撃でノイズトードのHPバーは30%程削れていた。
「ゲッ……」
「じゃあ次はアタシだな」
「コオオオォォ!?」
続けて俺の頭上を飛び越える形でブルカノさんの爆弾が投じられ、ノイズトードの近くで大きな音と共に爆発。
爆風と共に生じた赤い爆炎はノイズトードの全身を包み込み、一気に50%以上のHPバーを削ってみせ、俺も若干の温かさと勢いを持つ風を頬で感じ取る。
事前の質問の答えとして爆弾を使う事は聞いていたが、想像以上の威力と迫力である。
「よし、なら次は……」
「行きます!『ブート』!」
「ゲ……ゴボォ!?」
いずれにしてもこれでノイズトードのHPは20%以下。
俺はトドメを刺すべく、ノイズトードに向けて駆け出そうとする。
が、俺が走る出すよりも早く、俺の左手側を光の球が通過、直撃した光の球のダメージによってノイズトードのHPバーは底を突く。
後ろを振り返ってみれば、そこにはノイズトードに杖の先端を向けるシアの姿。
どうやらシアの魔法によってノイズトードはトドメを刺されたらしい。
「よしっ、大勝利ね」
「呆気なかったな」
「やりました」
「……」
「どうしたのよゾッタ兄」
「いや、何でもない」
俺はグランギニョルの言葉に小さく首を振る。
うん、一瞬だけ、俺はこのパーティに必要ないと思ってしまったが、今回はたまたま必要なかっただけだ。
俺は前衛、足止め、必要なかったという事は、初撃で決着がついて、余計な消耗が無かったという事。
うん、何処にも何も問題はないな。
ちょっと悲しくはあるけれど。
「さて、剥ぎ取りだな」
「そうね」
「マスター、お願いします」
「分かった」
とりあえずモンスターを狩ったのだから、剥ぎ取りをするとしよう。
と言うわけで、俺はノイズトードの身体を剥ぎ取り用ナイフで突く。
△△△△△
ノイズトードの皮
レア度:1
種別:素材
耐久度:100/100
特性:ノイズ(聞き取れない雑多な音を持つ)
ノイズトードのよく伸びる皮。
加工すれば、様々な用途に用いる事が出来る。
▽▽▽▽▽
「ふうむ……」
ノイズトードの皮……か。
確か状態異常系の特性は、武器に付ければ攻撃の際に状態異常を付与したり、それ関係の魔法の起動文が加わったりする。
防具に付ければ、その状態異常に耐性を持たせられる。
装飾品に付ければ、耐性が付いたり、起動文が加わったり、色々と効果がある。
だったかな?
うん、防具に使うのに丁度良さそうではあるな。
「ふむ、特性:ノイズは色々と面白そうではあるな」
「ブルカノの爆弾だとそうよね」
「マスターを巻き込まないでくださいね」
「そこは気をつけるから大丈夫だとも」
と、俺がノイズトードの皮について考えている内に、シアたちは三人で話をしていた。
その様子はとても仲よしそうで……なんだか友人のように見えるというか、もしかしなくても友人関係になっているような気がする。
うんまあ、シアの友人関係が広くなるだけなら、そんなに気にする事ではないか。
「爆弾か……そう言えば、爆弾のダメージって範囲かつ魔法分類でいいんだよな」
「ああ、それで間違っていない。おかげで誤爆されるのではないかと思われて、色々と大変だがな」
「うんまあ、さっきも爆風は来てたな」
それよりも今気にするべきはブルカノさんの爆弾だろう。
掲示板情報でそう言うのが存在しているとは聞いていたが、実物は俺の想像以上に爆弾だった。
アレを事前の相談なく投げられたら……うん、流石に怖いな。
威力も範囲も一歩間違えたら
「それにしてもどうしてブルカノさんは爆弾ばかりを?」
「そんなの爆弾こそが正しい錬金術師の主要兵装だからに決まっている」
「しゅよう……へいそう?」
なお、そんな物を躊躇いなく投げた事からも分かるように、ブルカノさんは爆弾の錬金と攻撃を好んでおり、ゆくゆくは専門家になりそうな感じである。
正しい錬金術師の主要兵装と言う言葉については……よく分からない。
きっと他のゲームか何かからの影響ではないかと思う。
「そうだとも!ばく……」
「はいはい、それよりも、とっとと次の敵を狩るわよ。まずは全部のモンスターを狩らないと、採取一つ安全に出来やしないんだから」
「あ、そうですね」
「分かった」
「む……」
なお、長引きそうな話については、グランギニョルが有無を言わさず切って見せた。
その表情から察するに、どうやら今までにも散々聞かされてきた話題であるらしい。
それならば……うん、俺たちも出さないように気をつけるとしよう。
そして今は次のモンスターに集中しよう。
「じゃ、次はアレを狩るわよ」
そうしてグランギニョルが次の相手として示したのは……
「~~~」
宙に浮かぶ巨大な半透明の生物。
ノイズクラゲLv.6だった。