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本日は二話更新になります。

こちらは一話目です。

【AIOライト 12日目 06:05 (5/6・晴れ) 南の森林】


「さて……」

 翌朝。

 シアが作った普通のアップルパイを二人で仲良く楽しんだ後、俺とシアは南の森林にやって来ていた。


「まずは人目がつかない所まで全速力で行くか」

「はい」

「「「!?」」」

 そして全速力で森の中に向かって駆け出した。

 理由は言うまでもない。

 たった一日……いや、半日の間で生じてしまったシアのストーカーを撒く為である。

 通報ボタンが出ていない事から性的な関心はないようだが……それでも不快な事には変わりないし、シアの能力について明かすかどうかは、まず俺だけがその能力を知った上で判断した方が色々と都合がいい。


「待ってよ!師匠!!」

「誰が師匠だ!付いてくんな!!」

「面倒な方ですね」

「全くだ」

 そう言うわけで、特にしつこかった上に何故か俺の事を師匠呼びしてきたシュヴァリエと言う厄介な相手もいたが、俺とシアは南の森林の奥地に移動し、無事に二人きりになったのだった。



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「さて、無事に撒けた所で一つ一つ確認していくか」

「はい」

 南の森林の奥地にやってきた俺とシアの前では、ノンアク状態のプレンディールLv.3が周囲を警戒しつつ草を食んでいた。

 周囲には他のプレイヤーの影は勿論の事、敵影もない。

 この場ならば、シアがどういう能力を持っていても問題は起きないだろう。


「じゃあ、まずはシア自身の能力からだ。シアは魔法とかは使えるのか?」

 では、一つ一つ確認していこう。

 まずはシアに魔物型ホムンクルスが持つような特殊能力があるかだ。

 なにせシアは見た目は人間型だが、エルフ耳と言う人間型には無い特徴を持っているし、そもそもレア度を表示すれば(プレイヤー)(メイド)と十中八九表示される、普通のホムンクルスとは一線を画す存在だ。

 何かしらの特殊能力を有していても不思議はない。


「少し待ってください……そうですね。マスターまたは私自身に対して使えそうな魔法が二つあるみたいです」

「ふむ」

 そんな俺の予想は正しかったらしい。

 シアは少しの間悩んだ後、指を二本立てて、俺に見せる。

 それにしても二つかぁ……もしかしなくてもアレとアレか?

 シアの素材的にだが。


「事前に使うべきものっぽいなら、使ってみてくれ」

「分かりました。では、『癒しをもたらせ』」

 シアが不思議な響きを伴う言葉を紡ぐと同時に、俺の全身が緑色の光に包まれる。

 ステータス画面に何かが追加されたりはしていないが……まあ、たぶん効果はそう言う事だろうな。


「じゃ、軽く戦ってみるか」

「はい」

「ディル!?」

 と言うわけで、俺はプレンディールに接近、軽く斧で角を叩き、ノンアク状態にあったプレンディールをアクティブにさせる。


「ディル!」

「おっと」

 当然、プレンディールは反撃で俺に攻撃を仕掛け、敢えてそれを避けなかった俺のHPバーはダメージで削れる。


「やっぱりか」

 が、削れたHPバーは直ぐに回復を始める。

 それも戦闘中だというのに、身体を癒す事にだけ集中している時と同じくらいの速さで。

 どうやら『癒しをもたらせ』には対象の回復力を強化する力があるらしい。


「シア、戦闘中に使えそうなのは何か有るか?」

「えーと、はい、あります。『力を和らげよ』」

 シアが『癒しをもたらせ』とはまた別の魔法を使う。

 すると俺の全身が黄色い光に包まれ、その直後から受けるダメージの量が減る。


「ディル、ディル!ディル!!」

 よく聞けば、俺の盾がプレンディールの爪や蹄を受け止める時に出す音も、硬いもの同士がぶつかり合う音から、柔らかいクッションを殴りつけるような音になっている。

 これはつまりそう言う事なのだろう。


「なるほどな。『ソフト』と『リジェネ』ってところか」

「たぶん、そう言う事だと思います」

 シアの作成には特性:リジェネを持った素材が多く使われていて、核は特性:ソフト持ちの物だった。

 その結果として、シアにもそれらの特性に関係する魔法を使う能力が与えられたという事なのだろう。

 これは活用のしがいが有りそうである。


「よし、それじゃあソフトプラティロッドの方を使ってみてくれ」

 さて、シア自身の能力が分かったところで、次はシアに持たせてある武器、ソフトプラティロッドの性能について確かめるとしよう。

 こちらは昨日作った時に見た情報通りなら、中々に強力な代物になっているはずである。


「分かりました。では……『ペイン』!」

「ディルウウウウゥゥゥゥ!?」

 シアの杖から光の球が放たれ、その弾に当たった瞬間、プレンディールは苦痛に喘ぎ、絶叫する。

 プレンディールのHPバーの下に表示された状態異常の名前はペイン、俺もソフトプラティプスから受けた状態異常である。


「ディ……ル……」

「ん?」

「あっ」

 と、痛みに耐えきれなかったのであろう。

 プレンディールは泡を吹きながら横倒しになり、状態異常の表示もペイン(激痛)からスタン(気絶)に変化する。

 痛みに耐えきれないと気絶状態になるというのは、貴重な情報だな。

 覚えておこう。


「シア」

「はい、『ブート』!」

 と、そんな事を俺が考えている間に、シアの杖から再び光の球が放たれ、杖カテゴリの武器が持つ基本の魔法の効果によってプレンディールのHPは消し飛ぶ。

 うん、中々に威力があるようだ。


「さて、それじゃ剥ぎ取りをしてみますかね」

「よろしくお願いします」

 俺はプレンディールの身体を剥ぎ取り用ナイフで突く。

 そして、手に入れたアイテムの詳細を確認する。



△△△△△

プレンディールの肉

レア度:1

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


プレンディールの生肉。

このままでも食べれない事はないが、味も安全も保証できないので、素直に調理する事をオススメする。

部位はモモ、骨付き。

▽▽▽▽▽



「肉……」

 俺は思わずシアの方を見る。

 線が細く、エルフっぽいシアは肉を調理できるのだろうか?

 いや、そもそも調理してくれるのだろうか?と。


「心配しなくても、街に帰ったら調理しますよ」

「よし」

 シアの言葉に俺は思わずガッツポーズをしていた。

 だがそれも仕方がない事だろう。

 俺にとってシアの料理には、それだけの価値があった。

 と言うか、こんなに可愛い子の手料理に喜ばない男子など存在するだろうか?いや、居ない!


「じゃ、もう少し奥地にまで行って、少し戦ったら、帰り始めるか」

「はい」

 いずれにしてもこんなに嬉しい事はない。

 と言うわけで、俺は少々浮かれ気分のまま、南の森林を更に奥へと向かったのだった。

07/31誤字訂正

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