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【AIOライト 11日目 06:05 (4/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


「何とか耐えきった……」

 翌朝。

 どうにかして煩悩の誘惑を断ち切った最低限の眠りを得た俺は、無事に目覚めていた。

 なお、左腕がとても柔らかい物に包み込まれている点については気合で無視する。

 無視すると言ったら無視する。


「ん……おはようございます。マスター」

「お、おはよう、シア」

 と、俺が動いた事でシアも目を覚まし、俺に向かって笑顔で、小さく頭を下げてくれる。

 うん、可愛い。

 今日も一日頑張れそうだ。


「さて、それじゃあ腹ごしらえが終わったら、装備を作るか」

「はい」

 そうして気力が無事に満たされた所で、俺は腹ごしらえの為に自動販売機へと向かった。


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「なんかこれ違いません?」

「……」

 シアを作る過程で錬金レベルが上がり、肉や野菜、魚にちょっとした加工物シリーズが含まれるようになっていたカロリーバーの一本を食べたシアの感想がこれだった。

 だがまあ、シアがそう言う感想を抱いても仕方がない事ではある。


「まあ、同じなのは味だけだからな。違和感はあると思う」

 だって所詮はカロリーバー。

 プレイヤーのモチベーションを上げるために味は百種類以上用意されているが、食感などはワザと再現していない感じなのだ。

 恐らくは望郷の念を思い出させるために、あるいは錬金術による料理を行わせる為に。


「でも、これしかない。と」

「前に食料として買った普通のリンゴはいつの間にか悪くなっちゃっていたし、前に錬金術で料理を作ろうとしたら有り得ない難易度だったからなぁ……」

「……」

 シアが俺の方を静かに見つめてくるが、出来ないものは出来ないのだから仕方がない。

 特に料理については絶望的だ。

 現実でもまるで出来なかったし、ゲーム内の料理についても前回でよく分かっているからな。

 アレはレベルがちょっと上がった程度でどうにか出来るとは思えない。


「あの、マスター」

「どうした?」

「その、錬金術で料理を作ろうとした時、具体的にどう言う物を造ろうとか考えました?」

「いや、特には。ただの消耗品だったし、気合は入っていたけど、そう言うのは無かったな」

「そうですか……」

 あれ?何かシアが微妙に残念そうな物を見る目になっている。

 え?どういう事なの?


「えーと、シア?」

「マスター、今日装備を作り終ったら、適当な量のお金を作って、一度市場の方に出て材料を買いましょうか」

「いや、俺が作るのは……」

「私が作るので大丈夫です」

「!?」

 シアの手料理……だと。

 マジか!?マジですか!?俺まだ寝てないよな!いやっほ……


「アウっ!?」

「マスター、そう言う訳なので、トリップするのは程々にして、装備の方お願いしますね」

 気が付いたら頭に衝撃が来ていた。

 どうやら暴走していたところをシアに軽く頭を小突かれたらしい。

 ああうん、確かにやるべきことはやらないといけないな。


「分かった。任せておけ」

「はい」

 と言うわけで、カロリーバーも丁度食べ終えた俺は錬金術を始めるべく錬金鍋の前に立つ。


「と、そう言えば、シアは装備品に関して希望とかはあるか?」

「そうですね……一先ず枠は全て埋めてしまいたいですね。武器はたぶん、杖が合っています。防具については軽めの方がいいと思います」

「なるほど」

 まあ、納得の希望である。

 枠をすべて埋める方が、一つの装備品だけに全力を注ぎ込むよりも総合能力は高くなりやすい。

 武器が杖と言うのは、シアの細腕を考えたら合っているだろう。

 そう言う観点から杖以外にシアに合いそうな武器となると……後は短剣に細剣か、まあ、作った直後のアレを考えたら、拳武器も合いそうだけど、止めておこう。

 防具についても軽くした方がいいのは確かだろう。

 杖を使う以上は後方支援が基本だからだ。

 全身金属鎧とかは……シアの体力で着たら、その場から一歩も動けなくなりそうな気がする。


「ふむ……」

 で、そんなシアの希望を聞いた上で、俺は倉庫ボックスの中に残っている素材たちと睨み合う。

 うん、余り物ではあるが、数は十分にある。

 これならば問題なく行けそうだ。


「じゃ、作り始めるから、シアはそこで見ておいてくれ」

「はい」

 そうして俺はシアの為の装備を作り始めた。


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【AIOライト 11日目 15:18 (4/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


「ふぅ、これで一通りと言ったところだな」

「ありがとうございます。マスター」

 製作開始からおよそ八時間。

 何とか無事に俺はシアの装備品と俺自身の装飾品枠一つを埋める装備品、合計七個のアイテムを作り終えた。


「動きづらかったりはするか?」

「いえ、大丈夫です」

 と言うわけで、まずはシアの装備品から。

 シアの装備品は胴については柔軟な綿の実とソフトモスの苔皮を組み合わせた長い緑色のローブ……ソフトモスローブを。

 脚には柔軟な綿の実とソフトリギアの甲殻を組み合わせた動きやすいズボン……ソフトリギアズボンを。

 頭には普通の樹の枝とプレングラスの葉を組み合わせた葉っぱ型のバレッタ……プレングラスバレッタを。

 腕には普通の樹の枝二個から作った大型の腕輪……プレンウッドアムバンドを。

 武器には普通の丸太とソフトプラティプスの蹴爪を組み合わせた、ソフトプラティプスの尾のような形状をした杖……ソフトプラティロッドを。

 で、装飾品については俺のも同時に作る形で、普通の薬草の効果を付与したプレンウッドリングを作った。


「装飾品の残り一枠についてはまた今度な」

「はい」

 それでまあ、これらの装備品を身に付けたシアの姿だが……うん、ぶっちゃけヤバいくらい可愛い。

 装備品はデザインは完全にシステム頼みな上に、レア度:1で、極々平凡な品の筈なのに、シアが身に付けてみると既製品に見えないから不思議な物である。

 うん、つまりシアは可愛いという事だ。


「さて、それじゃあ出かけますかね」

「はい、お供させていただきます」

 そうして装備も一応整え終ったところで、シアの要望通りに外へと出かける事となった。



△△△△△

ゾッタ レベル6/8

総攻撃力175

総防御力162


右手:プレンスチールタバルジン

左手:プレンウッドバックラー

頭:プレントータスメット

胴:プレンキャタピラシャツ

腕:プレンウッドアーム(回復力+1)

脚:プレンキャタピラズボン

装飾品1:アイオライトのピアス(精神力+1)

装飾品2:プレンウッドリング(回復力+1)

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△△△△△

ゾッタ レベル6/8


戦闘ステータス

肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10

精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力18+2・感知力10・精神力11+1


錬金ステータス

属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10

分類-武器類13・防具類11・装飾品13・助道具13・撃道具10・素材類13

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07/29誤字訂正

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