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55:10-2

本日は四話更新になります。

ご注意ください。

こちらは二話目です。

「すぅ……はぁ……」

 新紡の糸を造り出した俺は、錬金レベル上昇に伴うステータス操作を終えると、減ったHPとMPを回復させるために休憩をしていた。

 だが、ただ休憩をするだけではない。

 効率的に肉体を休めつつも、昂った精神状態は維持し続けるという事をしていた。

 今日やるべき錬金はまだ二つも残っているのだから。


「よし、始めるか」

 そして十分にゲージ類が回復した所で俺は錬金を始める。


「まずは……っと」

 俺は錬金鍋の中に回復力溢れる花粉を投入。

 黄色い粉が十分に散ったところで、右手に持った二つのプレンカッパーボトルを開け、その中身である柔軟な花の蜜とプレンエルフの血を鍋の中に注ぎ込む。


「ふんっ!」

 続けて魔力を注入する。


「コイツは……」

 だが魔力を注ぎ込んでも今回は熱くならず、冷たくもならず、茨のような物が湧き出るような事もなかった。


「へぇ……」

 しかし、変化はあった。

 俺の魔力を受け入れようとしない箇所が出来ていた。

 そこは間違いなくプレンエルフの血が集まっている場所だった。

 どうやら、積極的に俺に喧嘩を売ってきたその性質は血だけになっても変わらないらしい。


「なら、無理やり……染み込ませて……やるよ!」

 だから俺は魔力に指向性を持たせ、血が集まっている場所へとジェット噴流のように魔力を浴びせかけてやる。

 それと同時に錬金鍋の周囲を回る形で動き回り、液体の流れを強めてやる。

 すると抗い切れなかったのか、鍋全体に血が広まっていき、それに合わせるように鍋の中の液体も煮立ち始める。

 これならば、次の段階に移れるだろう。


「錬金術師ゾッタの名において告げる」

 俺は櫂を錬金鍋の中に挿し込む。

 目標の形は既に見えている。


「次代結ぶ粉、仲人招く甘き香り、森に住まう嫣然の娘の血を招け」

 液体が二つに粒子状の物が一つと言う組み合わせの為か、櫂の動きそのものは軽い。


「我に刃向けし娘の源、紅き水、自己を自己と証明せんとする意思。汝が意思の強さは称賛に値する。だが、我に刃を向けたその浅慮は許されざることである」

 だが軽いだけで、目的は達成できていない。

 本当に捉えるべき者、混ざるべき者は流れに乗る事で己を保とうとしている。

 この動きは……櫂では捉えられない。


「故に我は汝から奪い取る!」

 だから俺は櫂を引き抜くと、再び左腕を錬金鍋の中に突っ込む。

 突っ込んで、魔力を放ち、プレンエルフの血が俺の魔力を拒否するのを抑え込み、浸食する。


「汝が蛮勇を!汝が知恵を!汝が記憶を!汝が業を!頭中に収められし皆々を奪い取り、汝が罪を焼き清める!」

 プレンエルフの血の意思が、俺の左手に絡み付いてくる。

 俺の行いに抵抗するべく、俺への復讐を果たさんとするべく、俺を引き摺り込もうとしている。

 だが負ける気はない。


「意思は要らぬ!感情は要らぬ!それは汝が罪ではなく、汝の心中にあるべき物なり!我の干渉を受けずに輝かせ続けるべきものよ!」

 俺は足を踏ん張って、言葉を紡ぎ続けながら魔力を注ぎ込み続ける。

 注ぎ込み、代わりに余計な部分を取り除いていく。

 抵抗をものともせずに、在ってはならないものを引き千切っていく。


「次代結ぶ粉よ!汝が力を以って命の源泉たる紅き水は再び赤き水となる!!仲人招く甘き香りよ!汝が力を持って命紡ぐ赤き水は生者にあるべき芳香を持つ!!」

 そして取り除いた部分を埋め合わせるように、回復力溢れる花粉の力と柔軟な花の蜜の力を混ぜ込み、組み合わせ、一つとしていく。


「湧け沸け!赤き水!古き生捨て、魂継ぎ、新たな命を為せ!湧け沸け!赤き水!行く道変えて、根は変えず、新たな時歩め!」

 気が付けば錬金鍋の中の液体は完全な真紅にとなり、激しいうねりを伴っていた。

 そろそろ頃合いだろう。


「認めよ!改めよ!従えよ!静まれ!鎮まれ!調べ調和させ形を成せ!歩み止めぬ限り湧き続ける赤き水にして生命の根源と化せ!それこそが汝の新たなる姿にして在るべき姿である!!」

 俺は左腕を鍋の中から引き抜くと、右手にプレンエルフの血が入っていた方のプレンカッパーボトルを持ち、その口を錬金鍋へと向ける。


「さあ、我が前に汝が姿を顕し、我が手の内の器へと集い収まれ!新命の赤き水!」

 すると錬金鍋の中身が勢いよくプレンカッパーボトルの中に吸いこまれていき、明らかにその容積の数十倍の量……錬金鍋の中身が空になったところでその動きを止め、俺はそこで栓をした。



△△△△△

新命の赤き水

レア度:PM

種別:道具-薬

耐久度:100/100

特性:リジェネ(回復力を強化する)

  ソフト(柔らかくしなやかである)


それはCommonではなくSoleである。

独りでに増えていく力を持つ赤い水。

飲む者にもその力の恩恵を与えるが、甘い香りの影に鉄の臭いがするこの水を好んで飲む者は少ないだろう。

▽▽▽▽▽


【ゾッタの錬金レベルが7に上昇した。錬金ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】


△△△△△

ゾッタ レベル6/7


戦闘ステータス

肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10

精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力18+2+3・感知力10・精神力11+1


錬金ステータス

属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10+1・光属性7・闇属性10

分類-武器類13・防具類10・装飾品13・助道具13・撃道具10・素材類13

▽▽▽▽▽



「さて、此処からが勝負だな」

 そして操作を終えた俺は昂った気持ちを抑える事なく身体だけを休ませ始めた。

07/28誤字訂正

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