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本日は二話更新です
こちらは二話目です
【AIOライト 8日目 06:03(1/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】
「さて、今日は色々と確かめに行かないとな」
ゲーム開始八日目。
昨日から打って変り、空は見事に澄み渡っていた。
と言うわけで、今日は何の躊躇いもなく南の森林に行く事が出来るだろう。
尤も、今日南の森林に行ってやるのは自動生成ダンジョン関係のもろもろではなく、その下準備。
普通の薬草集めと、新装備であるプレンスチールタバルジンと新緑の杖の調子と性能を確かめる事だが。
うん、よくよく考えたら、回復アイテムぐらいは自分で用意しろと言う話である。
実際に参加する前に気づいたので問題はないが。
「……」
それとだ。
ゲーム開始から丸々一週間が経ち、少しずつだがプレイヤーたちの動向に変化が現れて来ている感じがある。
具体的に言えば、まず街の路地裏なんかで悲愴さをにじませながら座り込んでいるようなプレイヤーはほとんど見かけなくなった。
錬金術師ギルドに引き籠っている可能性もあるが、外部からの救出は望めないと分かって行動し始めたものが少なからず居るという事だろう。
「今日は何処に行くよ?」
「流石にそろそろ戦闘レベルも上げるべきだと思うんだ」
「だよなぁ……どうにも同じアイテムを作ってるだけじゃ駄目みたいだもんな……」
「何時までも街の周囲なら安全って保証もないしなぁ……」
街の近くで採取だけをしていたプレイヤーたちも、少しずつ街から離れて戦闘を行うようになって来ている。
掲示板情報になるが、同じアイテムばかり作っていても錬金レベルの経験値は殆ど得られないと言う検証報告が上がって来ていて、錬金レベルを上げるためにはモンスター素材に手を出すしか無くなってきたのだろう。
味の無いカロリーバーに心を折られたとも言うが。
「自動生成ダンジョン……挑めると思うか?」
「やってみないと分かんねえって」
「そうだぜ、あいつ等に後れを取っていられるかよ」
そして俺よりも先に進んでいるプレイヤーたちについては……どうやら自動生成ダンジョンのボスに挑んで倒せるかどうかという所まで来ているようだった。
彼らの平均戦闘レベルは6あると言うし、何と言うか既に雲の上の人と言う感じがし始めている。
まあ、俺にはそこまで急ぐ事は出来ないので、自分のペースでまったりと進むだけだが。
「ボソッ(おい、アイツってまさか……)」
「ボソッ(亀ヘルメットに斧、可能性はあるな……)」
「ボソッ(近寄らないでおこうぜ……)」
「ん?」
後何故だかは分からないが、今朝から微妙に他のプレイヤーから避けられている気がする。
視線を向けると何処か慌てた様子で視線を逸らされるし、ほんの僅かにだが他のパーティを組んでいないプレイヤーに対してよりも距離を取られている気がする。
「んー……何かしたか?」
だが俺にはそんな対応を取られる覚えはない。
こういう時に距離を取られるようになる原因としては何かしらの悪評が存在するのが普通だが、俺にはそんな悪評を立てられるような覚えはない。
いやまあ、俺の持っているレア度:PMのアイテム、新芽の指輪と新緑の杖の件が公に明らかになったら多少の悪評は立つかもしれないが、この二つのアイテムについて俺は完全に秘匿しているし、新緑の杖の見た目にしても多少変わった見た目の杖を持っているとしか思われないはずである。
「自意識過剰なのかなぁ……」
実際のところ、そうした隠し事があるせいで、避けられていると俺が勝手に感じてしまっているだけなのかもしれない。
避けられている感じがすると言っても、そんなあからさまに避けられているとか、無視されているとかという話でもないのだし。
「ま、気にしててもしょうがないか」
いずれにせよ、今日もどうせソロ活動なのだ。
となれば、そこまで気にすることでもない。
そう判断した俺は南の大門を抜けて、南の森林の奥地へ向かって歩き始めたのだった。
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【AIOライト 8日目 08:21(1/6・晴れ) 南の森林】
「ふうむ……だいぶ掴めてきたな」
草花の採取ポイントからアイテムを回収しつつ、俺は二時間ほど森の中を歩いていた。
で、その間に三回ほどモンスターとの戦闘があり、俺はそれらの戦いによって新しい武器の調子についてだいたい掴んでいた。
「プレンスチールタバルジンはいい感じだな」
まずプレンスチールタバルジン。
こちらは文句なしだ。
両刃になったおかげで振りの返しが早くなったし、威力についても数字通りの変化が出ていた。
重量、重心、強度も問題なく、片手でも両手でも問題なく扱えた。
シンプルであるが故に扱いやすい。
そんな感じの出来上がりだった。
「新緑の杖は……多少癖があるな」
対する新緑の杖は……少し扱いが難しい。
まず、打撃武器としては使えない。
杖と言う武器そのものに何かしらのマイナス補正がかかっているのか、数字以上に与ダメージが低かった。
だがMPを消費するだけあって魔法の効果は確かだった。
『ブート』はプレンキャタピラのHPを一撃で三分の一以上持って行って見せた。
『リジェネ』と『ソイル』は俺の回復力を上げ、目に見えてHPの回復速度が上がっていた。
だが、後ろ二つには欠点もあった。
「片腕が使えなくなるのはキツイよなぁ……」
『リジェネ』は発動と同時に新緑の杖から黒茨が伸び、俺の腕に絡み付いて来た。
当然ながら、この間左手は新緑の杖を持つしかなくなった。
『ソイル』は地面に両脚が付いていなければ、回復力強化の効果を受けられなかった。
それはつまり、回避や攻撃の為に走り回っていると、効果が無いと言う事だった。
「正面からの足を止めての殴り合いなら十全に使える……か?」
そんなわけで、俺としては癖が強いという評価を下さざるを得なかった。
勿論弱くはないので、使いどころを俺がきちんと考えれば問題はないだろうが。
「まあ、いずれにしてもこれで後の問題は戦闘レベルをどう上げるかだな。とりあえずはアイテムを置きに……」
俺は入手したアイテムを倉庫ボックスに移そうと考え、街の方向へと足を向ける。
そんな時だった。
「頼もう!そこの亀ヘルメット!」
俺の目の前に長い金髪を後頭部でまとめた碧眼の少年が茂みの中から突如現れ、腰に提げていた細剣を恭しく抜き始めたのは。
07/19誤字訂正