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ゲーム開始です

【AIOライト 1日目 06:02(満月・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


『ゾッタ様の番になりました。ゲームを開始いたします』

「……」

 俺の目に映る風景が変化していく。

 白い床は古びた石畳に、滝のように流れる0と1の数字は漆喰で固められたレンガの壁に、俺以外に誰も居なかった空間は俺と同じような服を着た色取り取り……黒、金、赤、青、緑、白、銀、灰と言った髪色の人間たちがひしめき合う広場に変わる。


『それでは、心行くまで『AIOライト』の世界をお楽しみください』

 俺の身体が動かせるようになる。

 人々の喧騒が耳に聞こえ始めてくる。

 そよ風が髪の毛を揺らし、何処かから焼けた肉の匂いが漂ってくる。

 足は石畳の硬い感触を俺へと返し、街を行き交う人々は誰かにぶつからないように巧みに歩きつつ、楽しそうに会話を楽しんでいる。

 俺の感覚は……この世界が誰かが造り出した偽物であると認識できなかった。

 俺の感覚はこの世界が本物であると強烈な刺激で伝えて来ていた。


「……。はっ!いかんいかん」

 と、俺は次のプレイヤーが俺の近くに現れたのを見て、何時までも呆けてはいられないと慌てて行動を開始する。

 そうだ、GM(ゲームマスター)が言っていたではないか。

 ゲームのスタートは設定を終えた者から順番だと。

 裏を返せば、後の者ほど設定を終えるのが遅かった者……今の状況に混乱し、精神状態を立て直す事が出来なかった者だと考えるべきである。

 そんな者たちが一斉にこの場に現れれば……何が起きるかの想像は容易い。


「とりあえずはヘルプにあった通りに動くべきだな」

 俺はメニューを開きつつ、広場の外に足を向ける。

 彼らには悪いが、この世界のリアルさに心乱された今の俺には俺以外の面倒を看れるだけの余裕はない。

 まずはやるべき事をやって、自分が落ち着ける環境を造り出さなければいけない。


「えーと……」

 俺は改めて自分のステータスを見る。



△△△△△

ゾッタ レベル1/1


戦闘ステータス

肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10

精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力13・感知力10・精神力11


錬金ステータス

属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10

分類-武器類10・防具類10・装飾品10・助道具13・撃道具10・素材類13

▽▽▽▽▽



「……」

 改めて思うが少々ネタに走り過ぎた感じがある。

 とりあえず光属性の魔法攻撃を受けた時は死んだと思おう。

 どうにもヘルプを読んだ限り、1ポイント変化するだけで基準の10から考えて一割分の変化が生じるらしいし、戦闘ステータスの錬金術への影響も、その逆もあるらしいし。

 まあ、低くした項目がどの程度の悪影響を及ぼすのか、それを補う必要があるかどうかについては、どの項目が何に影響するかを考えるついでに後で考えればいいだろう。

 なお、初期設定のポイント振りは10±3の範囲だった。

 6以下は止めておけと言う無言のお達しなのだろう。

 そして14以上は初期レベルには相応しくないという事なのだろう。

 ちなみに名前横のレベルは、左が戦闘レベルで右が錬金レベルであるらしく、これが1上がるごとに対応したステータスの項目に振るポイントも1貰えるそうだ。


「と、装備の方も見るか」

 俺はメニュー画面の上部にある装備のタブをタップする。

 すると、俺が今装備している物がアイコンで表示され、アイコンをタップすると装備品の詳細が表示される。



△△△△△

ゾッタ レベル1/1

総攻撃力100

総防御力50


右手:ビギナズハンドアクス

左手:無し

頭:無し

胴:ビギナズクロス

腕:無し

脚:ビギナズグリーヴ

装飾品1:無し

装飾品2:無し

▽▽▽▽▽


△△△△△

ビギナズハンドアクス

レア度:1

種別:武器-斧

攻撃力:100

耐久度:∞/∞

特性:ビギナズ(耐久度∞ 戦闘レベル10以上のキャラは使用不可能)


初心者錬金術師に贈られる斧。

誰でも扱いやすいように造られているが、攻撃力は最低レベル。

▽▽▽▽▽


△△△△△

ビギナズクロス

レア度:1

種別:防具-胴

防御力:25

耐久度:∞/∞

特性:ビギナズ(耐久度∞ 戦闘レベル10以上のキャラは使用不可能)


初心者錬金術師に贈られる服。

誰でも着れる用に造られているが、防御力は最低レベル。

▽▽▽▽▽



「ふうむ……?」

 攻撃力100で最低レベルって事は……武器の攻撃力と戦闘ステータスの攻撃力は別と言う事なのだろうか?

 まあ、少し検証すれば分かりそうな部分だし、気にすることはないか。

 で、防具についても四部位合わせれば100になりそうだし……武器と同じような感じがするな。

 特性についても後で調べてみるとしよう。

 この分だと色々ありそうだ。

 ああそれとだ、ついでだし事前登録特典だとかいうアイオライトのピアスとやらを確認しておくか。



△△△△△

アイオライトのピアス

レア度:1

種別:装飾品-ピアス

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


事前登録特典。

菫青石の宝石、アイオライトを填め込んだピアス。

着用者の感性を研ぎ澄まし、精神を安定させる力がある。

精神力+1

▽▽▽▽▽



「とりあえず付けておくか」

 菫青石……ああ確かに青い宝石が小さく付いているな。

 精神力を上げる効果もあるようだし、枠も空いているからとりあえず付けておくか。

 で、改めてステータス確認。



△△△△△

ゾッタ レベル1/1


戦闘ステータス

肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10

精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力13・感知力10・精神力11+1


錬金ステータス

属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10

分類-武器類10・防具類10・装飾品10・助道具13・撃道具10・素材類13

▽▽▽▽▽



 精神力の部分に+1と付いているのがアイオライトのピアスの効果なのだろう。

 つまりこれで俺の精神力の実数値は12になったと言う事だろう。


「さて、広場の方がだいぶ騒がしくなってきたな……」

 俺はメニュー画面のマップというタブをタップして、地図と時計を呼び出す。

 現在時刻は06:15、顔を向ければ、俺がさっきまで居た広場の方はだいぶ騒がしくなっている事が分かった。

 もしかしなくても俺が懸念していた通りの事が起きているのだろう。


「早いところ、錬金術師ギルドとやらを探し出さないとな」

 だから俺は改めて広場から背を向け、液体の入ったフラスコの看板……七つある錬金術師(アルケミスト)ギルドを探して街を歩き始める。

 なにせ、ヘルプのタブ、ゲーム序盤にやるべき事にこう書かれていたのだ。


『ゲームを開始したら、まずは七つある錬金術師ギルドのいずれかに所属しましょう。 ※錬金術師ギルドに所属しなければ、街の外には出られず、錬金術も行えません』


 と。

 何故自動所属でないのかや、何故七つもギルドがあるのかは分からない。

 分からないが、このゲームを一切進められないのでは、参加しないという選択肢は流石に有り得ない。


「此処がそうか」

 そうして街をさ迷い歩く事およそ三十分。

 やがて俺は少し脇道に入ったところで目的の看板を見つけ出し、その看板の下にある扉に入った。

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