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人を選ぶ描写がございますので、ご注意ください。

「さて……どうするかね……」

 手近な樹の裏側に身を隠していた。

 目の前のプレンエルフ二人がモンスターであり、倒すべき相手である事には納得した。

 あの百人中九十九人くらいが美人だとか可愛らしいだとか表現しそうな相手に攻撃……それも斧による攻撃を仕掛けて倒すというのはかなり後ろめたい事ではあるが、敵である以上は仕方がない。

 諦めて全力でぶん殴るとしよう。


「敵は二人で、両方遠距離攻撃持ち……でいいんだよな」

 俺は木の影からプレンエルフ二人の様子を窺うが、二人は最初に現れた位置から動かずに、弓持ちは弓を構え続け、杖持ちは周囲の警戒を行っているようだった。

 弓が遠距離攻撃可能武器なのは言わずもがな。

 掲示板情報になるが、杖についてもMPを消費することで物魔弾と言う通称の物理攻撃属性を持つ遠距離攻撃がデフォルトで可能であるらしい。

 となれば、目の前の二人についても、最低でもそれぐらいは出来ると考えるべきだし、杖持ちについてはちゃんとした魔法を使って来る可能性もある。

 うん、杖持ちの魔法については特に注意すべきだ。

 毎度の話だが、俺の抗魔力は常人以下なのだし。


「となると……杖持ちを先に……いや、無理だな」

 俺はプレンエルフの二人の視界から逃れるように、木の影から木の影へと慎重に近づいていく。

 そして弓持ちの方にまずは狙いをつける。

 本音を言えば杖持ちの方から優先して狙いたいが、弓持ちの腰には短剣がある。

 となれば、こちらが接近すれば、間違いなく弓持ちはそれを抜いてくるはずである。

 そんな状況で、杖持ちを殴ってる暇があるとは思えない。

 だからまずは弓持ちを潰す。


「……。そろそろ駆けるしかないな」

 俺とプレンエルフ二人との距離は残り10メートル程。

 此処までは上手く身を隠して来れたが、此処から先は身を晒さないわけにはいかないだろう。

 そして、弓持ちがこちらに弓矢を向けている点からして、しっかりとこちらの位置は捕捉出来てるようだった。

 つまり、被弾は避けられない。


「すぅ……よしっ!突貫!!」

 俺は木の影から飛び出すと、盾を前面に構えた状態でプレンエルフに向かって真っ直ぐに走る。


「シッ!」

「ブート!」

「ぐっ!?」

 矢が盾に刺さってHPバーが少しだけ、杖持ちの杖から放たれた光弾によって20%以上のHPバーが不快感と共に削れる。

 間違いない、杖の方は魔法攻撃だ。

 だが、動きが止まる事は無かった。

 これならば、いける。

 速攻を決められれば十分に行ける。


「……!?」

「おせえ!」

「!?」

 俺は走る勢いを乗せた斧をプレンエルフの顔面に思いっきり叩きつける。

 するとそれだけでプレンエルフのHPは30%近く削れる。

 どうやら、ありがたい事に、その見た目通りに体力は無い方であるらしい。


「ふん!ふんっ!」

「!?」

 なので俺は弓持ちが腰の短剣を抜くまでに二度、斧で攻撃を行ってHPバーを削る。


「させるかよ!」

「ブ……っつ!?」

「!?」

 そして短剣が抜かれると同時に後方に跳び、俺の背後に回って魔法を放とうとしていた杖持ちの腹を思いっきり蹴る。

 これで双方のHPが削れたが、魔法の発動は阻止できた。


「おらぁ!」

「……!」

 勿論この間に弓持ちは短剣を握ってこちらに来ている。

 そして既に攻撃を回避できる距離には無かった。

 故に俺は弓持ちの短剣を腹で受け止め、HPバーが半分以下になるのを確かめつつ、両手で持った斧を振り下ろし、弓持ちにトドメを刺す。


「……」

「!?」

「はぁはぁ……」

 弓持ちの身体が崩れ落ちるように転がる。

 だがまだ戦いは終わっていない。


「ブート!」

「後ひと……ぐっ!?」

 振り返ろうとした俺の背中に杖持ちの魔法攻撃が当たり、一気にHPバーが残り20%を切る。

 つまり、後一撃受けたらお終いと言う事である。


「……」

「させるか!」

 杖持ちが次の魔法を放とうとする。

 しかしその前に俺の斧が肩に入り、発動は阻止される。


「ふんっ!」

「!?」

 そして、そこから俺は左手を振るい、杖持ちの杖を盾で思いっきり叩く事によって弾き、手から離れた杖に斧を一振りして破壊。


「はははははっ!」

 続けて、武器を破壊されて逃げ出そうとした杖持ちの腕を掴み引き、転ばせるとその上に馬乗りになる。

 そして、血のように紅い燐光を浴びながら、俺は何度も何度も杖持ちに斧を叩きつけ、笑顔を浮かべながら一方的に杖持ちのHPバーを削り取っていく。


「……ふぅ。勝ったか」

 やがて斧を叩きつけても杖持ちの身体から紅い燐光が出なくなる。

 どうやら無事に倒したらしい。


「さて、剥ぎ取るか」

 人型のモンスターから剥ぎ取るのに多少嫌な物は感じるが、そう言うゲームだから仕方がないと割り切って、俺は剥ぎ取り用ナイフで杖持ちのプレンエルフの身体を突く。



△△△△△

壊れた装備品(杖)

レア度:1

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


人型のモンスターが身に付けていた装備品だったもの。

戦闘の結果壊れてしまっていて、修理結晶でも直す事は出来ない。

こうなってしまえば新しい装備品に作り直すしかないだろう。

▽▽▽▽▽



「ふむ」

 壊れた装備品(杖)……か。

 適当な素材と組み合わせて、新しい杖に作り直せと言う事だろうか。


「じゃ、弓持ちの方は?」

 俺は続けて弓持ちのプレンエルフの身体を剥ぎ取り用ナイフで突く。


「ん?」

【液体状のアイテムを獲得しました。インベントリ内のプレンカッパーボトルを使用して回収します】

「ああなるほど」

 すると見覚えのないメッセージが表示される。

 どうやら容器を持っている状態で液体状のアイテムを回収すると、専用のメッセージが表示されるらしい。



△△△△△

プレンエルフの血

レア度:1

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


プレンエルフの血液。

紅く、生暖かく、血なまぐさいそれは確かに宿主の体内に流れていた物であり、宿主の力の一部を秘めている。

ただし、その力の方向性は不明。

▽▽▽▽▽



「でも血か……」

 それにしてもそれで回収出来たのがプレンエルフの血かぁ……正直、あまり使い道があるようには思えない。

 と言うか、迂闊に見せたらそれだけで色々言われそうな素材である。

 後、何に使えと言うのだろうか。


【ゾッタの戦闘レベルが3に上昇した。戦闘ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】

「ん?ああ、上がったのか」

 と、此処で戦闘レベルが上がった事を告げるメッセージが流れる。

 どうやらようやく上がったらしい。

 と言うわけで、今回も回復力を上昇させる。

 まずは装備品込みで20まで上げたいのだ。



△△△△△

ゾッタ レベル3/4


戦闘ステータス

肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10

精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力15+1+3・感知力10・精神力11+1


錬金ステータス

属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10

分類-武器類10・防具類10・装飾品13・助道具13・撃道具10・素材類13

▽▽▽▽▽



「さて、レベルも上がった事だし帰りますかね」

 無事に目標であるレベル上げも出来たし、素材も手に入った。

 俺は自分の活動の結果に満足すると、街の方へと足を向けた。

07/13誤字訂正

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