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本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

「ナイスファイト」

 俺は両手に何も持っていない事を示しつつ、ゆっくりと彼女に近づく。


「あら、貴方は……」

 対する彼女は武器である鎌については背中に付いていて直ぐには取りだせないようになっているが、手に持った本はしっかりと握ったままだった。

 あの本は恐らく掲示板で上がっていた普通の毒草と普通の白紙本の組み合わせで造れるプレンダメジブックだろう。

 効果はプレンメディブックの攻撃版でよかったはずである。

 それをしっかりと握っているということは……警戒されているという事だろう。


「プレンボアの惹き付けありがとうございます」

「いやまあ、こういうのはお互い様だからな」

「そうですか」

「そうだとも」

 さて、こうして改めて前に立てば、何故彼女に見覚えがあったのかは直ぐに分かった。

 以前に『巌の開拓者(ノーム)』ヒタイ第24支部ですれ違った彼女だからだ。


「「……」」

 そして、どうしてあの時、彼女の動きが記憶の片隅に引っかかったのかも先程分かった。

 何と言うか……うん、そんな事があっても別におかしくはないよなと思う。

 凄い偶然なのは確かだが。

 だがまだ確定ではない。

 だから確かめてみる。


「えーと、間違ってたら悪いんだが、従兄弟の糸子(いとこ)だよな?」

 そうして俺が名前を言った瞬間。


「なっ!?」

 彼女は大きな口を開けて驚きを露わにし……


「なっ……」

 すぐさま、今までの行動で何か有ったのか顔を青ざめさせ……


「ブ……『ブート』!」

「おっと」

 手に持ったプレンダメジブックを発動。

 光の球を放ってきたので、俺は落ち着いて身を捻り、その攻撃を回避した。


「危ねえな。当たったらどうすんだよ」

「うっさい!うっさい!うっさい!!何でこんな所に粟太(あわた)兄が居るのよ!」

「そんなの巻き込まれたからに……っと、とりあえず落ち着け。色々と危ない」

 俺は両手を前に出して彼女……糸子の動きを制する。

 流石に此処からさらに何発も撃たれたら、堪ったものではない。

 なにせ俺の抗魔力は7しかないのだから。


「ぐぬぬぬ……リアフレも家族もいないから色々とヒャッハれていたのに……もしかしたらとは思っていたけど本当に親戚が居ただなんて……」

 どうやら糸子もあの時点で俺がそうではないかと思っていたらしい。

 思っていたらしいが……遭いたくはなかったらしい。

 と言うかもしかしなくても、最近の落ち着いた様子の糸子と比較してだが、現実に居る時よりも元気になってないか?

 ウェーブかかった髪や身長、美少女とよく言われる顔つきなんかは現実と変わらないが、全体的に活発な感じになっている気がする。


「しかもしかもよりにもよって粟太兄の上にクソダサヘルメットを被った姿だなんて……ムギャオオオォォォ!」

 うん、元気になっているな、これは。

 ちなみに俺と糸子の関係は……まあ、普通だろう。

 お互いを従兄弟と言うよりは兄弟として認識して、異性だとは思っていない感じがあるし、ここ最近はマトモに会話した覚えもない。

 何と言うか年齢的に避けられている感じはあった。

 だがまあ、俺の方が上の形で歳の差が5歳も有れば仕方がない事ではあり、これは普通の関係だとは思うが。


「はぁ……死にたい。こんな状況でリアバレするとか死にたい」

「はいはいっと、で、リアバレが嫌ならどう呼べばいいんだ?」

 いずれにしてもこのままでは話が進まないので、むりやり進めてしまうとしよう。


「……。フルネームはグランギニョル。長いからギニョルでいいわ」

「分かった。ギニョルだな。俺はゾッタだ」

「ゾッタ……ね。分かったわゾッタ兄」

「止めろ、ゾッタの方で兄は付けないでくれ。何か嫌な予感がする」

「ちっ、嫉妬から刺されるぐらいは期待したのに」

「怖いわ」

 とりあえずは俺と糸子……グランギニョルは『AIOライト』内での名前について交換し合う。

 それにしても刺されるの期待とか……いやまあ、見た目だけなら美少女だし、それに兄と呼ばれていたら嫉妬に狂った連中から闇討ちにされるぐらいは確かにありそうだが……。

 うん、状況と相手次第じゃ洒落にならないし、気をつけよう。


「で、ゾッタは仲間についてはどうしたのよ?」

「仲間はいない。現状はソロだ。そう言うギニョルは?」

「居ないわ。女プレイヤーなんて数えるほどしか居ないし、男プレイヤーはどいつもこいつも嫌な目で見て来るもの。そう言う事が出来ない仕様になっていると分かっていても、あんな連中と一緒に居るだなんて無理」

 そう言うグランギニョルの顔はかなり渋い。

 どうやら今日ここまでに至るまでに色々と面倒な事が有ったらしい。

 まあ、中身は見ての通りだが、見た目はいいもんな。

 そう言うのが寄ってくるのも仕方がないか。


「そもそも、ゲーム開始から一週間も経っておらず、一人でも十分に戦える頃なのにパーティ組んで囲って安全に叩きましょうだとか、僕が守ってあげるだとか、専属錬金術師になって欲しいだとか、そんなくっそ下らない提案してくる連中なんてどうせこの先碌な事にならないっつうの。そんな連中と組むなんてこっちから願い下げだってえの」

「お、おう……」

 あ、うん、違った。

 違わなくないけど違った。

 もしかしなくても心意気についてはこの従兄弟はガチ勢側だわ。

 愚痴については吐き出したくて仕方がない本音だったのだろうけど、色々とヤバい。

 よくよく見れば装備品も一通り揃ってるし、武器もたぶんビギナズじゃなくなってる。


「えーと、とりあえずフレンド登録だけして別れておくか?」

「そうね。そうしましょうか」

 だがそれでも……それでもリアル従兄弟には変わらない。

 だから、この状況では何時でも連絡ぐらいは付けられるようにしておいた方がいい。

 そう判断した俺はグランギニョルとフレンド登録を交わし、その場を後にしたのだった。

以前にもちょっと出てきた彼女ですね。

なのでメインヒロインはありません。

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