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本日は二話更新となります。

こちらは一話目です。

【AIOライト 5日目 06:05(2/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


「……。妙にぐっすりだったな」

 気が付けば朝だった。

 普段ならば日付が変わった頃に一度は目覚めるのだが、昨日はだいぶ疲れていたらしい。

 途中一度も目覚めずに朝になってしまった。


「まあいいか、今日も一日頑張っていこうかね」

 俺は布団から起き上がると、いつも通りの食事を摂った後に『巌の開拓者(ノーム)』ヒタイ第24支部を後にした。

 目指すは東、丘陵である。



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 東の丘陵。


「予想通りとはいえ酷い混み合い方だな……」

 そこは始まりの街・ヒタイの東側にある小高い丘、ちょっとした崖、小さな谷などが連綿と続くマップであり、このマップの北と南にはこの周辺で一、二を争う高さの山がそれぞれ一つずつそびえている。

 うん、これならばいっそ西の草原の起伏を幾らか激しくした場所と言った方が正しいかもしれない。

 どうにも『AIOライト』は出現する敵の種類のランダム性が強くて、未だにどのモンスターが何処なら確実に出るかとか分かっていないようだし。


「えーと、目的の採取ポイントのタイプは……っと」

 さて、この東の丘陵。

 西の草原より少しだけ厳しいとは言えど、視界が開けていて、モンスターの不意討ちとFFの危険性が低いため、やはり初心者向けのマップである。

 そのため、今日も非常に多くのプレイヤーで賑わっている。

 が、初心者向けとなっている理由は戦闘関係だけでなく、採取出来る物の内容にもある。


「んー……俺の武器だと叩くのは無理だな」

 東の丘陵には西の草原と同じく石を拾える採取ポイントがある。

 だがそこで拾えるのは普通の石だけではなく、鉄鉱石や銅鉱石と言った金属を含む鉱石もなのだ。

 そう言った鉱石を集め、抽出し、インゴットを生み出せれば、そこから初期装備よりも性能が上の装備品を作れる。

 その為に金属製装備を作りたいプレイヤーで賑わっているのだった。

 なお、この石採取ポイント、鎚や大型武器を使って採取をすると、鉱石類が取れやすいとの事だった。

 俺の斧ではサイズが小さくて駄目らしいが。


「とりあえず、距離を取りますかね」

 いずれにしても、今俺が居る場所の近くのポイントはプレイヤーで混み過ぎていて、モンスターが出現しなくて安全に採取できる代わりに、一回の採取に時間がかかり過ぎる。

 そんなわけで戦闘レベルも上げたい俺としてはこの場に留まる理由は無かった。

 そのため、俺は他のプレイヤーの集団をすり抜けると、北に見える山の方へ向かって真っ直ぐに走り始めたのだった。



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【AIOライト 5日目 08:22(2/6・晴れ) 東の丘陵】


「おっ、取れたか」

 二時間ほど移動すると、周囲に見えるプレイヤーの数は流石に少なかった。

 と言うわけで俺は遠慮なく採取ポイントからアイテムの採取を開始、普通の石ころは捨てて、普通の鉄鉱石と銅鉱石だけをインベントリ内に収めていく。

 これもまた掲示板情報だが、同種の鉱石二つでインゴット一つ、インゴットと適当なアイテムの組み合わせで簡単な武器、防具、装飾品ならば作れるとの事だった。

 つまり、初期装備を外そうと考えるならば、インゴットが三つ……鉱石が最低でも六個は要る計算である。

 鉱石の採取確率はそれほど高くないが……まあ、足りない運は試行回数でどうにかするしかない。

 他のスマホゲームでやっていた期間限定イベントのキャラをゲットするためにガチャを回し続けるのに比べれば、比べようがないぐらいに気も楽である。


「さて、次の採取ポイントは……と、敵か」

「ゴフゴフゴフ」

「ん?」

 俺は次の採取ポイントに向かおうとする。

 と、そこで俺はプレンボアLv.2と言う猪型のモンスターを見つけたので、攻撃を仕掛けようと武器を構える。

 だがそうして武器を構えた所で気づく。


「はっ、たぁ!」

「メエェガアァァ!!」

「ゴッゴッ……」

「やべっ」

 プレンボアが向かおうとしている先で、プレンゴートと言う山羊型のモンスターと、鎌を振り回して戦っている何処かで見た覚えがある小柄な女性プレイヤーが居る事に。

 このままプレンボアが進めば、二対一になってしまう事実に。


「こっちだっての!」

「ゴフッ!?」

 俺は素早くインベントリから半端な数になっていた普通の銅鉱石を取りだすと、プレンボアに向かって投げつけ、当てる。

 すると、俺の思惑通りに俺の事を敵と認識したのだろう。

 プレンボアは鼻息を荒くしつつ反転、俺の事を睨み付けてくる。

 そして、数度蹄で地面を軽く蹴った後……


「ブヒイイィィ!」

 口から生えた牙をこちらに向けつつ真っ直ぐに突進を仕掛けてくる。


「うおっと!やれやれ、情報通りだが怖いな……と!」

「ブヒィ!?」

 勿論、真っ直ぐに突っ込んでくるだけの攻撃を受けてやるほど俺は優しくないので、素早く横に跳んでプレンボアの攻撃は回避する。

 そして突進を回避された事に気づいて停止しようとしたプレンボアの背後に近づくと、斧で思いっきりケツを切り上げてやる。


「おらっ!おらっ!おらっ!」

「ブヒイブヒイブヒイ!?」

 こうなれば後はもう簡単だ。

 プレンボアの振り返ろうとする動きにだけ注意を払い、ひたすらに身体の後ろに攻撃を仕掛けてやればいい。

 そうすれば多少時間はかかるが、問題なく倒せる。


「トドメ!」

「ブヒイィィ!?」

 そうして結局、俺は無傷でプレンボアを倒す事に成功した。

 そして思う。

 同格の特性なしのモンスターと一対一ならば、パンプキンのような特殊なモンスターでなければ、問題なく戦えると。


「さて、向こうはどうだろうな……」

 プレンボアから牙の剥ぎ取りを終えた俺は、プレンゴートと戦っていたプレイヤーの方を向く。

 プレンゴートと戦っていたプレイヤーは……


「『ブート』!」

「メェガアァァ!?」

 いつの間にか本のようなものを取りだし、手から放った光の球によってプレンゴートを倒していた。


「ふんっ!一昨日来なさい!この山羊風情が!」

「……」

 そして女性が放った言葉で俺は一つの確信を得てしまった。

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