30:4-3
本日は二話更新になります。
こちらは二話目です。
「……ふぅ」
指輪の名前を叫んだ所で錬金術そのものも完了したためなのだろう。
俺の中で高まっていた物が急激にしぼんでいく。
まあ、あれだ、所謂賢者タイムみたいなものだ。
「さて、とりあえず結果を確かめるか」
俺は手の中にある指輪を顔の前に持って来て、凝視する。
すると、いつものようにアイテムの説明を映した半透明の画面が現れる。
△△△△△
新芽の指輪
レア度:PM
種別:装飾品-指輪
耐久度:100/100
特性:リジェネ(回復力を強化する)
それはCommonではなくSoleである。
癒しと芽生えの力を秘めた新緑色の指輪。
この指輪は着用者に新芽の如き回復力を与え、如何なる災禍にも負けぬように支える。
回復力+2
▽▽▽▽▽
「……」
一目見て分かった。
あ、これ、アカン奴だ、と。
「い、いやまあ、でもゲームが進めばこれぐらいの性能の装備品は幾らでも作れるようになるよな」
俺はそう呟きつつも同時に考えてしまう。
ゲームが進めば一般的でも、この時点では作れてはいけない装備品であると。
うん、『AIOライト』に一般的な対人ゲームであるような相手のアイテムを奪えるPKがなくて本当に良かった。
デスペナの仕様上、身に付けていれば無くす可能性もないし。
と言うわけで俺は早速装備しておく。
「それにしてもこの文章と言い、レア度と言い、どういう……」
【ゾッタの錬金レベルが4に上昇した。錬金ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】
「うおっ!?」
と、新芽の指輪を装備した所で突然目の前にステータス操作用の画面が表示される。
先程レベルアップしたばかりなのにもう上がるという事は……うん、やっぱりこの新芽の指輪、今の時点で作れるようなものではないらしい。
とにもかくにも錬金レベルがレベルアップしたのだから、そこは素直に装飾品の項目を13にまで上げておこう。
で、レベルアップ操作が終わったところでメニュー画面を改めて見てみる。
△△△△△
ゾッタ レベル2/4
戦闘ステータス
肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10
精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力14+1+3・感知力10・精神力11+1
錬金ステータス
属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10
分類-武器類10・防具類10・装飾品13・助道具13・撃道具10・素材類13
▽▽▽▽▽
△△△△△
ゾッタ レベル2/4
総攻撃力125
総防御力140
右手:ビギナズハンドアクス
左手:プレンウッドバックラー
頭:プレントータスメット
胴:ビギナズクロス
腕:プレンウッドアーム(回復力+1)
脚:ビギナズグリーヴ
装飾品1:アイオライトのピアス(精神力+1)
装飾品2:新芽の指輪(回復力+2・特性リジェネ)
▽▽▽▽▽
「えーと、これは特性リジェネの影響か」
気が付けば戦闘ステータスの回復力の項目がまた少し変わっていた。
これまでの行動から察するに、手前から順番に素の数値、特性による補強、装備による補強と言う事なのだろう。
つまり、現時点で俺の回復力は実数値18と言う事になる。
単純なレベル上げによって素の数値を此処まで上げようと思ったら、回復力に特化しても戦闘レベルを6まで上げる必要があるのだから、中々の物であるのかもしれない。
「まあ、上がった効果についてはこの後すぐ見れるな」
俺は視界左上隅にあるHPバーとMPバーを見る。
どちらもまだ底の方が近く、気をつけないと部屋の中なのに死にそうな感じすらもある。
これがどれだけ早く自然回復するか。
それによって回復力が上がった恩恵は分かるはずである。
「さて、問題はレア度PMについてだな」
俺は困った時のヘルプ頼みと言う事で、ヘルプのタブを開き、レア度の項目を見る。
すると先程追加されたのだろう。
NEWの文字と共に『レア度PM』と言う項目が追加されていた。
「この程度は想定の範囲内ってか?」
俺は『レア度PM』の項目の内容を見てみる。
△△△△△
レア度PMとは
レア度PM……正式名称はレア度
GMが用意したシステムに頼らず、通常とは異なる方法を用いて製作されたアイテムに対して付与されるレア度。
アイテムの効果そのものは『AIOライト』の仕様の範囲内であるので、使用については問題ない。
名前については作成者が決定する。
▽▽▽▽▽
「……。使用そのものは問題ない……ねぇ。何か別の問題があるように聞こえてしょうがないな」
だがしかし、使う事自体に問題が無いのであれば、俺にとってはそれでいいのかもしれない。
これが狭量……いや、普通のゲームの真っ当なGMならば、チートと判断して即座にアイテム没収した上で、各種罰則を加えるところだからだ。
今回に限っては良い意味でこのGMは狂っていると心の中で思っておこう。
口に出してはやらないが。
「まあ、仮に何か問題が起きたなら、その時は自己責任と言う事なのかもな」
ただあの悪魔の事である。
使用は認めたが保証をする気は無いぐらいは普通にあるだろう。
いや、順当に考えれば、そうである方が自然なのかもしれない。
普通にやっていたら、新芽の指輪は絶対に手に入らないアイテムであるのだから。
「とりあえず今日はもうHPもMPも俺自身の気力も足りないし、寝ておきますかね」
気が付けば既に時刻は16:00を過ぎていた。
いつの間にか、かなりの時間が経っていたらしい。
そんなわけで、現状夜のフィールドに繰り出す気のない俺は、今日はもう部屋の中でゆっくりしている事に決めたのだった。
システムはそれを許容している。