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【AIOライト 4日目 06:02(半月・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】
「朝……だな」
朝、目覚めた俺はいつものように味のしないカロリーバーを頬張り、満腹度を回復する。
掲示板情報によれば錬金レベルが3になれば、薄塩味のカロリーバーと薄い砂糖水が追加されるそうなので、出来れば今日中にそこまでは到達したいところである。
尤も、それ以上に試したい事が今日は在るのだが。
「さて、まずは装備品の修復だな」
部屋の外に出た俺は、ギルドのショップで一緒に錬金鍋に入れたアイテムの耐久度を回復出来るレア度1の修理結晶を大量に購入……いや、貰う。
詰み防止の一環なのか、レア度1の修理結晶だけは無料で購入出来るようになっていたのである。
まあ、プレイヤー側としてはありがたい話だが。
なお、修理結晶とはこういうアイテムである。
△△△△△
修理結晶
レア度:1
種別:素材
耐久度:100/100
特性:プレン(特別な効果を持たない)
ギルドショップでのみ販売されている耐久度回復用のアイテム。
修理対象に付与する形で使用する。
このアイテムよりレア度が上のアイテムに対して効果を及ぼす事は出来ない。
▽▽▽▽▽
「えーと、アイテムを作る時と同じくらいか?」
修理結晶を持ち帰った俺は説明文通りに装備品の修復を行う。
なお、錬金術の過程の一つであるキーボードの打ち込みについては、アイテムを作る時と同じくらいの難易度だった。
打ちこみを間違えた所で、回復する耐久度の量が少し減るだけらしいが。
いずれにしても耐久度の回復は問題なく出来た。
「じゃあ次はこっちだな」
続けて俺は錬金鍋に普通の丸太と普通の薬草を投入する。
そして変形を選択し、防具の一つである腕防具を選択する。
「ん?普段より多い?」
続けて俺は魔力を注ぎ込むのだが……何となく普段よりも多く魔力を吸われる感覚がした。
一体どういう事だろうか?
難易度としては他の防具や装備品と変わらないと思うのだが。
「少し気合を入れるか」
俺は姿勢を正し、少しだけ普段よりも気合を入れる。
何となくだが、普段よりも難易度が上がる気がしたからだ。
そして俺の予想は正しかった。
『halfmoonWo0sorelu monoHaosorelu AnomooNn0youni wakaTaleteha kaNAwanuTo』
「はっ、上等」
明らかに難易度が上昇している。
文字数が増えている。
と言うか不意討ちの0は止めろ、見分けづらい。
だが問題はなかった。
あの料理を錬金術で造ろうとした時に比べれば、明らかに難易度は低いのだから。
「よし完成」
どうにか俺は無事に文字を打ち終え、錬金術を成功させる。
出来上がったアイテムの性能は……
△△△△△
プレンウッドアーム
レア度:1
種別:防具-腕
防御力:30
耐久度:100/100
特性:プレン(特別な効果を持たない)
普通の木で出来た籠手に極々僅かな癒しの力が宿ったもの。
強度に不安は残るが、軽いので非力な人間でも手軽に身に付けられる。
回復力+1
▽▽▽▽▽
うん、悪くない。
と言うわけで早速装備する。
△△△△△
ゾッタ レベル2/2
総攻撃力125
総防御力140
右手:ビギナズハンドアクス
左手:プレンウッドバックラー
頭:プレントータスメット
胴:ビギナズクロス
腕:プレンウッドアーム(回復力+1)
脚:ビギナズグリーヴ
装飾品1:アイオライトのピアス(精神力+1)
装飾品2:プレンウッドリング(回復力+1)
▽▽▽▽▽
「これで一応全部位埋まったのか」
俺はメニュー画面の装備品を見ながらそう呟く。
ビギナズと付いた初心者装備がまだ三枠埋めてしまっているが、この分で行けばそう遠くない内にここも換装できるだろう。
そうすれば、脱初心者と言えるのではないかと思う。
【ゾッタの錬金レベルが3に上昇した。錬金ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】
「と、レベルも上がったか」
俺はインフォメーションを受けて、目の前に表示された画面を操作する。
今回上げるのは……とりあえず装飾品でいいか。
分類側を全部13にしたいとは思っているけど、上げるなら一つ一つ目標の値まで上げてから次の項目に移りたい。
まあ、ただの趣味のようなものなので、そこまでのこだわりはないが。
△△△△△
ゾッタ レベル2/3
戦闘ステータス
肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10
精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力14+2・感知力10・精神力11+1
錬金ステータス
属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10
分類-武器類10・防具類10・装飾品12・助道具13・撃道具10・素材類13
▽▽▽▽▽
「さて、錬金レベルが3に上がったという事は……」
俺は自動販売機に近づく。
すると今までは手をかざしただけでアイテムが出ていたのに対して、今は選択画面のようなものが出て来ており、そこには事前情報通りのアイテムが追加されていた。
なので俺は即座に薄塩味のカロリーバーを選択、取りだして口にしてみる。
「ああ……ただの塩味がこんなにも嬉しいものだなんて……」
感動的だった。
何処か涙のようなしょっぱさを感じたが、それでも感動的だった。
少なくとも心が折れるような事はない。
ただデータを食っているだけと言う感じもしない。
まだマトモではないけれど、それでも少しは普通に近づいた味に俺は涙を流さずにはいられなかった。
ああ、うん……これならまだ頑張れる。
頑張ろうと思える。
心の底から俺はそう感じた。