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「と言うわけです」

「……」

 俺が一通り話し終えると、番茶さんは渋い顔をしていた。

 だが、そんな反応になるのも当然の事だろう。


「推定物理耐性持ちに戦闘中の自然回復。まだ序盤も序盤で、マトモな威力のある魔法攻撃も見つかっていないというのに酷い組み合わせもあったものだ」

 本当に全てが俺の推測した通りであった場合、現状でリジェネパンプキンを倒す手段は存在しないと言っても過言ではないのだから。


「そうですね。俺もそう思います。でも一番の問題は……」

「それだけの相手がただの雑魚モンスターでしかないという事か。いやはや、色々な所から自動生成ダンジョンの厳しさは伝わっていたが、ここまでとは」

 だが一番の問題はあのリジェネパンプキンがただの雑魚モンスターであるという事実である。

 これについては俺自身が目の前でポップするのを見ているから間違いないし、ゲームの定番としてダンジョンのボスが居るのはそのダンジョンの最奥、そうでなくともそれ相応に深部に行った場所であり、出現する場にはそれなりの雰囲気という物が漂っている。

 例外は……まあ、幾らでもあるが、この定番を常時完全に外すゲームと言うのはあまりない。


「さてと、では情報の対価としてゾッタ君にこれを渡しておこう」

「ん?」

 番茶さんが手元で何かを操作すると、俺のメニュー画面に番茶さんからのメッセージが送られてきたと言う旨の画面が表示される。

 番茶さんから贈られてきたメッセージのタイトルは……『現在確認されてる自動生成ダンジョンとモンスターの一覧』。


「え、いいんですか?俺が頼んだのは……」

「問題ないよ。ゾッタ君がくれたパンプキンと言う種族のモンスターは、現状地上では確認されていないモンスターだし、その危険性も明らかだ。特に何かしらの魔法攻撃手段を必須とする可能性があると言う情報は大きい。知らなければ詰みさえ有り得るからね」

 えーと、リジェネパンプキンに関する情報はそこまで重要な物なのだろうか?

 いや確かに、知らないと色々と拙い相手ではあるが……。


「それとだ。君が求めた現在発生している自動生成ダンジョンについての情報と言うのは、そこまで価値があるものではないんだよ」

「えっ」

「なにせ発見から72時間で消滅してしまうダンジョンだからね。移動と準備の手間を考えれば、情報の賞味期限は残り50時間を切るぐらいの所だろう」

「あっ……」

 言われてみれば確かにそうだった。

 俺が行った『回復力溢れる森の船』は南の大門から確実に一時間以上は歩く距離にあった。

 探す手間も考えれば街からダンジョンに入るまでに二時間はかかるだろう。

 そこに準備を整えた上で行くならば、行った後にダンジョンに入って探索をするならば。

 そう考えたら丸一日は最低でも欲しいところだろう。


「他にも掲示板を調べればある程度は出てくると言うのもあるが……まあ一番大きな理由はそれだ。だからモンスターの情報も付けたわけだね。取引とは公正公平であるべきものなんだ」

「なるほど」

 取引は公正公平であるべき、か。

 うん、良い言葉だ。

 俺も出来るだけ真似できるようにしよう。


「中身を確認しても?」

「勿論いいとも」

 俺は番茶さんに確認を取った上でメッセージの中身を確認する。

 自動生成ダンジョンについては十以上の名前とレア度、それと出現が確認されたモンスターの名前が記載されていた。

 モンスターについては……少なくとも20種類以上のモンスターの名前と特徴が記載されている。

 これを口頭で全て話すのは大変そうだ、番茶さんがメッセージを使ったのも良く分かる。


「現状確認されている自動生成ダンジョンの中で最もレア度が高いと同時に危険視されているのは、『紅蓮蜥蜴の徒(サラマンダー)』のパーティが東の丘陵で発見した『痺れ招く火山の塔』だね」

「『痺れ招く火山の塔』……」

「レア度は3で中は溶岩が所々で流れている塔らしい。最も発見したパーティは入り口で平均レベル30なんて言うモンスターの群が屯しているのを見て即座に踵を返したらしいがね」

 賢明な判断だろう。

 レベル12のリジェネパンプキンですらアレだったのだ。

 アレの3倍近いレベルのモンスターが屯している空間に策なく突っ込むだなんて、現状ではただの自殺行為である。


「まあ、焦る必要はないと思うよ。レア度2のダンジョンから運よく素材を持ち帰れたパーティからの報告で、レア度2の素材を錬金術に使おうと思ったら錬金レベル不足で使えないというメッセージが出たという話が流れて来ている」

「つまり、結局まずやるべきはレベル上げですね」

「ま、そう言う事だね」

 レア度2のアイテムはまだ扱えない……か。

 それについては普通の薬草同士が錬金できなかった件から考えて何となく分かっていたが、メッセージが出たならば確定でいいだろう。


「さて、ゾッタ君はこれからどうするつもりだい?」

「とりあえずはステータス異常が解消されるまで部屋で掲示板でも見ながらじっとしています。慌てても仕方がないですから」

「そうか。それじゃあ私はこれで」

「ええ、また何か有ったらよろしくお願いします」

 そうして十分な量の情報を得た俺は、ギルドポータルに『巌の開拓者(ノーム)』本部を登録すると、第24支部に移動した後に自分の部屋に戻ったのだった。

レア度はレベル制限にもなっています。

具体的には(レア度-1)×10のレベルが必要ですね。

戦闘レベルと錬金レベルのどちらが参照されるかは……まあ、状況によりにけりです。

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