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【AIOライト 3日目 11:42(4/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


「あー……」

 気が付けば俺は見た事もない場所で床に寝転がっていた。

 周囲にはたくさんのプレイヤーが居て、俺に暫く視線を向けては興味を無くしたのか目を離していく。


「うん……」

 俺は少しずつ周囲の状況を認識していく。

 天井は木造で、灯りは行灯、『巌の開拓者(ノーム)』の建物に似た雰囲気は感じた。

 だが今までに見たどの『巌の開拓者』の建物よりも、そこは広かった。

 受け付けは確実に20は超えていたし、ギルドポータルである天秤も他の支部の数倍は大きかった。


「ここが『巌の開拓者』の本部か」

 間違えようが無かった。

 そう、ここは『巌の開拓者』の本部であり、『巌の開拓者』に所属するプレイヤーが死んだ場合に送られてくる場所だった。


「おや、ゾッタ君じゃないか」

「番茶さん」

 身体に少しだるさを感じつつ、立ち上がった俺は、とりあえず死に戻り場所と書かれた札が提げられている縄で囲まれた場所から外に出る。

 すると『巌の開拓者』内で唯一俺がフレンド登録している相手である番茶さんが話しかけてくる。


「えーと、どうして此処に?」

「今日は死に戻りが多発しそうな感じだったからね。情報収集の為に来たんだよ」

「情報収集?」

「ああそうだ。とりあえずデスペナで何を失ったのかの確認と、失わなかったアイテムの倉庫ボックスへの移動をしておくといい。レンタルしている部屋の入り口はあそこだ」

「……。分かりました」

 とりあえず俺は番茶さんの言うとおりに自室に移動すると、倉庫ボックスの中に無事だったアイテムを収納する。

 どうやら今回はかなり運が良い方だったようで、『回復力溢れる森の船』内で回収したアイテムの内失ったのは回復力溢れる樹の枝一本だけ、後はその前に入手していたアイテムだった。

 うん、俺にしては珍しく運が良いな。


「アイテム整理してきました」

「ああこっちだ。こっちで水でも飲みながら話そう」

 アイテム整理が終わった俺は番茶さんの下に赴く。

 なお、流石は『巌の開拓者』本部と言うべきか、水と雑談スペースくらいはこの共有のエリアにもあるらしく、番茶さんは土間部分から一段高くなった畳敷きのエリアで胡坐をかいていた。


「お疲れ様。さて、こっちが聞きたい情報はゾッタ君の発見した『回復力溢れる森の船』についてなのだけれど……ゾッタ君の方は何か聞きたい事はあるかい?」

「そうですね……じゃあ、此処が何処なのかと、どうして番茶さんがこんな事をしているのかについてで」

「それぐらいなら無償で話すよ」

 そう言うと番茶さんは水を一口飲んでから話を始める。


「まず此処は『巌の開拓者(ノーム)』本部。ヒタイの中では南東の方に在って、ギルドの前には1000人規模で人が入れるような巨大な広場が用意されている。死に戻りの際にはここに戻って来るけれど、此処にしかない機能もあるようだから、後でギルドポータルは登録しておいた方がいい」

「分かりました」

 やはりここは『巌の開拓者』の本部であるらしい。


「次に私がどうして情報収集をしているかだが……まあ、簡単に言ってしまえば情報屋の真似事だね。全員が全員ゾッタ君のように掲示板に情報を上げてくれるわけでもないし、別の錬金術師(アルケミスト)ギルドの掲示板は閲覧できない。そんなわけで、情報屋志望のプレイヤーが集まってお互いにフレンド登録をし、情報を融通し合っているのさ」

「なるほど」

 で、番茶さんは情報屋として活動していると。

 確かにどこかのギルドの掲示板に何か重要な情報が載っていても、他のギルドの人間にはそれを知る機会が無い。

 それを考えたら番茶さんのような人間は必須なわけか。

 ああそれと、掲示板の書き込みについて逐一調べているなら、『回復力溢れる森の船』について知っていても何もおかしくないな。

 俺は掲示板にしっかり書き込んだし。


「じゃあ、最初に言っていた死に戻りが多発しそうと言うのは?」

「それこそ簡単な話さ。ゾッタ君が探索していたであろう『回復力溢れる森の船』。今日になってそれと似たようなマップ……自動生成ダンジョンが各地で発生し始めたからさ」

 アレが自動生成ダンジョン?

 正直かなり手の込んだマップだと思っていたんだが……と、話の主題はそこじゃないか。


「自動生成ダンジョンについては後でヘルプの方で調べておくといい。基本的な知識についてはそこに全て載っている」

「分かりました」

 自動生成ダンジョンの基本的な仕様については番茶さんの言うとおり後で調べてみよう。

 それよりも今は自動生成ダンジョンにどんなものがあるのかについて知るべきだ。


「じゃあ、俺は『回復力溢れる森の船』について話しますから、番茶さんは他の自動生成ダンジョンがどんな物なのか話して貰えますか?」

「分かった。交渉成立だね」

 そうして俺は自動生成ダンジョン『回復力溢れる森の船』について話し始めた。

 どういうマップなのか、どんな敵が居たのか、どんな特性を持った素材が得られるのかと言った情報をだ。

 で、特に奴……リジェネパンプキンについては念入りに話しておいた。

 もしかしたら物理耐性がある事まで含めて。

07/05 誤字訂正

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