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21:3-1

本日は二話更新になります。

こちらは一話目です。

【AIOライト 3日目 07:13(4/6・晴れ) 南の森林】


「うん、いい感じだな」

 ゲーム開始三日目。

 西の草原と東の丘陵は多数のプレイヤーで混み合っており、北の湿地帯は対策が無いという事で、消去法で俺は南の森林にやって来ていた。

 で、まずは昨日作ったプレントータスメットの調子を確かめたのだが、何の問題もなかった。

 斧と盾を激しく動かしてもずれる事はないし、額から後頭部の首近くまで守ってくれているから防御能力も高い。

 見た目のダサさを除けば本当に優秀な装備だった。

 そしてその見た目のダサさも……もしかしたらどうにか出来るかもしれない事が分かった。


「しかし、目立つな。あのパーティ……いや、プレイヤーか」

 俺の視線の先には全身を赤一色で染め上げた布製装備を身に付けているプレイヤーが居た。

 その色は本当に真っ赤としか言いようが無い色であり、それなりに森が深い南の森林と言うマップの中でも良く目立っており、明らかに自然に出来上がるような色では無かった。


「染料かぁ……たぶん作ったか買ったかだな」

 つまり、アイテムを染めるアイテムが何処かにあるという事である。

 それが何処にあるかまでは俺には分からないが、まあ、いずれ手に入る機会はあるだろう。


「さて、もう少し奥まで入ってみますかね」

 俺は適当に採取ポイントでアイテムを回収しつつ、森の奥へと分け入っていく。

 当然、森の奥に入れば入るほどモンスターとも遭遇するわけだが……ぶっちゃけ、余裕だった。

 今日最初に戦ったプレンキャタピラは初日に戦った相手であったし、その後に現れたプレンニュートと言う巨大なイモリのようなモンスターも、プレンチキンと言う鶏型のモンスターも、特にこれと言って特殊な攻撃をしてくるわけでもなかったので、多少の手傷を負っただけで難なく倒せてしまった。

 まあ、初期ステータスでもどうにかなっていた相手なのだし、当然の結果と言えば当然の結果なのだろう。


「ふうむ……」

 ただ手傷を負った事には違いない。

 と言うわけで俺は試しにプレンメディパウダーとプレンメディブックを使用してみた。

 結果から言わせてもらうならば、この二つのアイテムには明確な違いがあった。


「瞬間的な回復量はパウダーだな」

 まず回復量については圧倒的にパウダーの方が高かった。

 プレンメディブックが一回の使用で俺のHPバーを15%ぐらい回復するのに対して、プレンメディパウダーは50%近く回復していたからだ。


「でも、合計の回復量で言えばブックだな」

 だが、パウダーは使いきりなのに対して、プレンメディブックは耐久度を見る限り10回は使えるようだった。

 つまりアイテム一個当たりの総回復量ではブックはパウダーの三倍近いレベルになるという事である。


「問題はブックはMP消費がある事。それに恐らくは使い手のステータスの影響を受ける事だな」

 違いはまだある。

 プレンメディブックは使用の際に俺のMPを10%程消費する。

 そして、実際に回復する際にだが……確証はないが俺の撃魔力を参照してきている気がする。

 それは裏を返せば撃魔力が高いプレイヤーなら俺よりも遥かに高効率で味方を回復できるという事でもあるが、撃魔力が低いプレイヤーが使った場合にはお察しな事になるという事でもある。


「んー……まあ、詳しい事は掲示板に上げておけば誰かが検証してくれるだろ」

 とりあえず俺は同一の情報が一通り見た限りでは無さそうな事を確かめてから、プレンメディパウダーとプレンメディブックについて『巌の開拓者(ノーム)』の掲示板に書き込んでおく。

 勿論造り方についても一緒にだ。

 こうしておけば、まあ、誰かが後を追って確かめてくれるだろう。

 HP回復アイテムの重要性なんて理解できない方がおかしいし。


「さて、インベントリの空きはまだあるし、もう少し奥まで行ってみますかね」

 俺は書き込みを終えると、インベントリに十個以上空きがある事を確かめてから更に森の奥へと向かった。



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【AIOライト 3日目 10:25(4/6・晴れ) 南の森林】


「なんだあれ?」

 歩くこと暫く。

 すっかり人気が無くなり、見渡す限り森しか広がっていないような場所で俺は妙な物……地面から直立している白磁の扉を見つけていた。


「近寄ってみるか」

 俺は扉に近づいてみる。

 扉の高さは3メートルほどで、幅は2メートルは間違いなくある。

 これならば、大抵のプレイヤーは難なく入れるだろう。

 だが、扉の周囲にあるべきもの……つまり壁や繋がっている先の部屋などは無く、裏に回ってみれば表にあった扉の持ち手などは付いていなかった。


「……」

 俺は奇妙に思いつつ、扉の表に回ると、何かしらの反応を期待して手をかざしてみる。

 すると、俺の前に半透明の画面がポップしてくる。


【ゾッタは『回復力溢れる森の船』を発見した】

「船?」

 首を傾げる俺の前に次の画面が表示される。


【『回復力溢れる森の船』 レア度:1 階層:3 残り時間71:59:59】

「……。時間制限つきのダンジョン。ってところか?」

 恐らくこの白磁の扉はワープ装置のようなものなのだろう。

 で、『回復力溢れる森の船』と言うのはこの扉の先に広がっている場所の名前。

 レア度は難易度で、階層と残り時間についてはそのまま捉えればいいだろう。


「試しに行ってみるか」

 俺は掲示板に妙なものを発見したから挑んでみると、スクショ付きで書き込むと、白磁の扉に触れてみる。

 すると次の瞬間、俺の視界はギルドポータルを利用した時のように滲みだし……


「ここは……」

 気が付けば草木に浸食された何処かの木造の部屋の中に移動していた。

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