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17:2-3

「おらぁ!」

「ガメッ!?」

 トロヘルの大槍がプレントータスの頭に突き刺さり、赤い燐光が弾け飛ぶと同時にプレントータスのHPバーが削れる。


「ガメエェ!」

 トロヘルの攻撃を受けたプレントータスの頭上のマーカーがノンアクティブの敵である事を示す緑色の物から敵である事を示す赤へと変わる。

 そして、マーカーの変化に合わせるようにプレントータスがトロヘルに噛み付こうと、その見た目から想像出来るよりもかなり速く前進を始める。


「ゾッタ!」

「ほいっと!」

「!?」

 そこで俺がプレントータスの側面から接近、すくい上げるような動作で斧を振るい、プレントータスの後ろ脚を切りつけ、その動きを止める。

 此処までのダメージは……二人合わせて30%から40%と言う所か。


「ガア……」

「む……」

「手を出すなよ」

 と、ここでプレントータスは四肢、頭、尻尾を甲羅の中に収め、甲羅の穴も蓋のようなもので塞いで完全に閉じこもってしまう。

 その守りは見るからに堅牢そうで、トロヘルに言われるまでもなく手を出す気にはなれなかった。

 うん、あのままトロヘルに攻撃を行おうとしたり、俺の方に向けて攻撃を仕掛けようとしてくれれば色々と楽だった。

 が、そこまで簡単には倒させてくれないらしい。


「暫く待てば出て来るのか?」

「ああ、出てくる。出てきたら同時に攻撃するぞ」

「了解。ちなみに甲羅に手を出したら?」

「ダメージはほぼ通らない上に反射ダメが来る」

「そっちも了解」

 俺とトロヘルの二人はプレントータスの尻尾側に回り込むと、それぞれに武器を構えて、プレントータスが動くのを待つ。


「ガメェ……」

 そしてプレントータスが再び頭を出してきた瞬間。


「行くぞ!」

「おう!」

「ガメェ!?」

 俺の斧が振り上げられてプレントータスの後ろ脚を切り裂き、トロヘルの大槍がプレントータスの後ろ脚に突き刺さる。

 その痛みに生命の危機を感じたのか、あるいはAIとしての定められた行動なのか、プレントータスは再び甲羅の中に逃げ込もうとする。


「逃がすか!」

「ガメアアァァ!?」

 が、それよりも速く俺の斧の返す刃がプレントータスの身体を傷つけ、そのHPバーを削り切り、絶命させる。


「ふう、終わったか。やっぱ二人だと一回で削れる量がまるで違うな」

「そうなのか?」

「ああ、昨日やりあった時はもう少しかかった。森の中で槍を自由に振り回せなかったのもあるだろうけどな」

「なるほど」

 俺とトロヘルは地面に倒れ込んだプレントータスの死体の周囲で、一応おかわり……次のモンスターが間近に迫っていないかを確認する。


「先に剥ぎ取ってくれ」

「分かった」

 周囲の安全を確かめたところで、まずは俺が剥ぎ取り用ナイフでプレントータスの死体を突く。

 すると昨日と同じようにプレントータスの身体から白い光の粒子が生じる。

 が、トロヘルがパーティに居るためだろう、プレントータスの死体は消えていなかった。


「これって、トロヘルの側からはどう見えているんだ?」

「俺の方からは死体消滅って名前が付いたゲージが表示されているな。プレントータスの死体を視界の外に出しても、視界の端の方にゲージだけは表示されているようだし……」

「戦闘中にこっそり剥ぎ取りってのは無理なわけか」

「みたいだな。だから戦闘中剥ぎ取りをやるなら予め示し合わせた上でだな。ゲージが無くなるまで視界の端でちらちらと動き続けるみたいだから案外うっとおしいぞ」

 続けてトロヘルがプレントータスの死体を剥ぎ取り用ナイフで突く。

 するとプレントータスの死体の姿が薄くなり、そのまま消えてしまう。

 どうやら白い光の粒子は本人にしか見えないようになっていて、ゲージがゼロになるかパーティ全員が剥ぎ取りを行う事で死体が消えると言うシステムになっているらしい。

 それにしても視界の端でゲージが動き続けるか……うん、想像してみたら確かに邪魔そうだった。


「じゃ、採取ポイントを漁りながら、次のモンスターを探しますかね」

「分かった」

 詮索無用と言う申し合わせ通り、俺もトロヘルも相手が入手したアイテムを気にする様子を見せずに、次の行動に移る。

 なお、俺の入手したアイテムはプレントータスの甲羅と言う紐か何かを着ければそのままヘルメットになるんじゃないかと思える素材だった。

 うん、見た目はこの上なくダサい事になりそうだが、今日の狩りが終わったら作ってもいいかもしれない。



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「それにしてもゾッタよ」

「どうしたトロヘル?」

 その後も大した問題はなく採取と狩りは続いた。

 採取については草むらのポイントからは薬草と毒草が、岩がある場所からは石が取れた。

 何に使えるかは分からないが……まあ、何かには使えるだろう。


「何で門の前に居る連中の殆どはパーティメンバーが六人揃っていても、モンスターが出る辺りにまでは来ないんだろうな」

「単純に怖いんだろう。戦う事がさ」

 狩りについてはプレンラビット、プレンマッシュと言うモンスターに遭遇したが、どちらも特に問題は無く狩れた。

 特にプレンラビットは動きが速いだけだったので、一人でも余裕なくらいだった。

 プレンマッシュについては……状態異常を与えそうな胞子は撒いていたので、一応二人で良かったとは思うが、こちらもやはり一人でも何とかなりそうな気配は有った。


「怖いねぇ……まあ、分からなくはねえか」

「それに門の外に出ているだけ、あのプレイヤーたちはまだマシだと思う。中にはずっとヒタイの路地裏でブツブツと何かを呟いているだけのプレイヤーだっているしな」

「そういやそうか。なら、錬金レベルだけでも上げようと思っているアイツ等はかなり健全な方なのか」

「俺はそう思うよ。たぶん、あの味無しカロリーバーで嫌でもやる気を出さざる得なくなったんだろうさ」

 トロヘルがヒタイの方へと顔を向ける。

 そこでは今も千人近いプレイヤーが街近くで屯している事だろう。

 だが、そうして外に出て来ているだけ彼らはまだいい。

 錬金レベルが上がれば、ゲームクリアに対して何かしらの形で貢献することも出来るだろう。

 しかし、採取すらしていない面々は……少なくとも現状では誰も助けたりしないだろう。

 そんな余裕があるプレイヤーが居るとは思えない。


「アレか……アレは本当に心が折れるよな……」

「何もしないでいるなんて決意をアレの前で抱き続けるのは無理だと俺は思うぞ……」

 なお、カロリーバー(無味)についてはトロヘルも心が折られたようだった。

 表情が見てはいけないものを見てしまったような感じになっている。

 その気持ちには激しく同意できるので、俺からは何も言わないが。

働かざる者食うべからず。と言う事です。

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