14:1-11
本日は土曜日なので2話更新になります。
こちらは2話目です。
「特性フラジル、効果は脆く砕けやすい……どういう意味だ?」
俺は目の前の結果に困惑せずにはいられなかった。
ただのゴミを二つ合わせて抽出した結果出てきたのは、脆い金塊と言う現実には決してありえないであろう物質だったからだ。
だがここは『AIOライト』と言うゲームの中だ。
それを考えれば……有り得ない事はないのかもしれない。
「脆く……砕けやすい」
それよりも今考えるべきはフラジルと言うプレンと違って明確な効果を有する特性についてだ。
フラジル……脆く、砕けやすい。
普通に考えればあっては困る特性なのではないかと思う。
なにせこの特性が付いている物は、通常の物よりも脆くて砕けやすい……ゲーム的に考えれば耐久度を消費しやすいものになっていると考えられるからだ。
となると装備品には付けられない。
付けるなら消耗品に対してだろう。
具体的にどんな消耗品に付けたらいいのかまではちょっと思いつかないが。
「とりあえずは倉庫ボックスに収めておくか」
いずれにしても貴重品には変わりない。
ならば売って僅かばかりのお金を得るよりも使い道を思いつくまで取っておいた方がいい。
そう判断した俺は脆い金塊を倉庫ボックスに移動させる。
そうして脆い金塊を移動して、錬金術が終わった時だった。
【ゾッタの錬金レベルが2に上昇した。錬金ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】
「ん?」
俺の頭の中でファンファーレが鳴り響くと同時に、目の前にステータス操作用の画面が表示される。
どうやら錬金レベルが上がったらしい。
「ふむ……」
俺は目の前の画面を少し注視してどの項目を上げるかを考える。
正直な所、錬金ステータスについてはどれを極端に上げたいという想いは無い。
それならば分類の方を平均的に上げればいいかもしれない。
どれでも平均的に作れるというのは、必要な道具を自分でそろえられるという事で、色々と都合がいいだろう。
なお、光属性は……捨てる。
「よし、これでいいか」
と言うわけで俺は装飾品の項目を選択し、上昇させる。
で、錬金術によって先程造り上げて装備した物含めて、俺のステータスはこうなった。
△△△△△
ゾッタ レベル1/2
戦闘ステータス
肉体-生命力13・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10
精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力13+1・感知力10・精神力11+1
錬金ステータス
属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10
分類-武器類10・防具類10・装飾品11・助道具13・撃道具10・素材類13
▽▽▽▽▽
△△△△△
ゾッタ レベル1/2
総攻撃力125
総防御力75
右手:ビギナズハンドアクス
左手:プレンウッドバックラー
頭:無し
胴:ビギナズクロス
腕:無し
脚:ビギナズグリーヴ
装飾品1:アイオライトのピアス(精神力+1)
装飾品2:プレンウッドリング(回復力+1)
▽▽▽▽▽
「まあ、初日だと考えれば悪くはないか」
装備品は六枠まで埋まり、装飾品はどちらも見た目だけではない物。
戦闘レベルも明日には上がるだろう。
この状況に混乱し、今日一日何も出来なかったであろうプレイヤーも居るであろう事を考えれば、俺の進み具合でもそれなりに進んだ方と言えるのではないかと思う。
「じゃ、明日に備えて今日はもう寝ますかね」
俺はそう独り言を呟くと、僅かに減った満腹度を味のないカロリーバーで回復し、部屋の灯りを消して、寝るのに邪魔な装備品外すと、畳敷きのエリアに用意されていた布団に横たわる。
そして、メニュー画面のギルドタブから掲示板の項目を選び、眠くなるまで適当に掲示板に見て回る事にしたのだった。
----------------
【AIOライト 2日目 00:17(5/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】
「……。日付は……変わってるな」
三時間ほど眠ったところで、何故だか俺は目が覚めてしまった。
そして暗い部屋の中、普段使っているものとはまるで感触の違う布団と、視界左上隅にあるHPバーを見て、『AIOライト』の世界が夢ではなく、現実に存在することを俺の頭は嫌でも理解する。
そう、現実なのだ。
こうしてじっとしていると嫌でも考えてしまうし、理解してしまう。
「此処は現実」
俺もやはり混乱していたのだ。
異常な状況に遭遇し、深く考える事を放棄して、心の平穏を乱さないように流れに乗った。
GMの思惑に乗り、掌の上で踊るように。
混乱から立ち直れない人間たちを見捨てて。
「そう、此処も現実なんだ」
現実の俺の肉体は今どうなっているだろうか。
あの悪魔の事だ。
プレイヤーにゲームをクリアさせる気があるなら、現実の肉体を何かしらの方法で保護することぐらいはしているだろうし、そうでなくともニュースか何かでこの異常事態を知った両親が警察に通報するぐらいの事はしてくれると思う。
していなくても……ゲームの中に居る俺に出来る事は何もない。
だから、考えるだけ、気にするだけ無駄な事かもしれない。
「帰ってやるさ。何としてでも」
代わりに考えよう。
どうすれば少しでも早くこのゲームをクリアして、現実に帰る事が出来るのかを。
クソッタレではあるけれど、それでも捨てがたい現実に帰る方法を。
「……」
そして一泡吹かせてやろう。
この『AIOライト』と言うゲームを考え、生み出したあの悪魔に。
だから今は眠ろう。
一歩一歩は遅く短くとも、決して歩みを止めない事こそが最も早く遠くへと進む方法であるはずだから。
説明の関係上、やはり初日は長くなってしまいました。
06/26誤字訂正