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初めましての方は初めまして。
そうでない方はお久しぶりです。
VRMMO物となりますので、今作もよろしくお願いします。
【2021年 6月 30日 20:35(水曜日・晴れ) 日本】
「ふぁ……」
その日も俺はいつも通りの夕食を摂って、いつも通りに風呂に入って、いつも通りに明日の大学の授業の為の勉強をしていた。
そうしたいつも通りの日常の中、気分転換と眠気覚ましを兼ねてスマフォで何か面白いものが無いかと探した時にそれは見つけた。
「『
『Alchemist Inquiry Only Light』……公式の略称は『
公式の説明によれば、プレイヤーは錬金術師となって、『賢者の石』を作るべく、様々なアイテムを造りながら、様々な容姿のホムンクルスたちと多くの危険に満ち溢れた旅を行う完全オリジナルのRPG。
登録及び基本プレイは無料だが、ゲーム内課金要素は有り。
オープンβテストは既に終了済み。
事前登録受付は後25分ほどで終了で、ゲームの開始は2021年7月1日の00:00……つまりは後3時間ほどでゲームが開始されるとの事だった。
「ふうん……」
俺は公式が用意しているスクリーンショットの内容を見ていく。
そこには大手の最新のスマホゲーでも滅多に見られないような美麗なCGが載せられており、
PVも見てみたが、演出もキャラの動きも悪くなく、実際に聞くかどうかは別としてBGMも中々に良さそうではあった。
うん、時間が無いのでβテストの評判を見る事は出来ないが、これならば大外れは無さそうである。
「開発会社は……イヴリーブラ社?初めて聞く名前だな」
だが、ここで俺はふと気になってゲームの開発社名を確認する。
これだけ良いものを作る会社であるならば、名前に聞き覚えがあるかもしれない。
それにこの世の中にはスクショ詐欺、PV詐欺など幾らでもあるし、一応は確認してみるべきだろう。
だが、開発会社として記載されているイヴリーブラと言う会社の名前は一度も聞いたことがない名前だった。
もしかしたら新興の会社であるのかもしれない。
「ま、ツマらなかったら無課金プレイか即捨てのどちらかにするだけだ。課金ってのは、課金をしてもいいとプレイヤーの側が思ったらするべき物なんだから」
まあ、もしかしたら何処かの大手の傘下だとか、ダミーだとか、皮だけ変えて中身は何処かと同じですとかのパターンがあるかもしれないが、大半のプレイヤーにとっては問題なく遊べて、一時の気晴らしが出来ればそれでいいのだ。
本当に新興の会社で、良いゲームであるならば今後も要注目、お布施も兼ねて多少の課金はしましょう。
それぐらいの気持ちでいいのだ。
俺はただの大学生であり、間違っても廃人あるいは廃神様では無いのだし。
なお、余談と言うかこれはただの一個人の意見であるが、基本無料をうたっているのに課金しなければマトモにプレイする事も出来ないゲームと言うのは課金ゲーとしては最も駄目な形態だと思う。
ユーザーに嘘を吐くのは、色々と論外なのだ。
「と言うわけでポチーっとな」
ま、そんな事はさておいて、俺はいつも通りの規約にさらっと目を通すと事前登録ボタンを押した。
登録時間は2021年6月30日の20時47分。
無事、事前登録の受付時間内である。
「さて、勉強を再開しますかね」
そうして事前登録を済ませた俺は、アプリのダウンロードを行わせつつ、勉強を再開したのだった。
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2時間後。
「ふうん、なるほどねぇ」
明日の為の勉強を終えた俺は、これから始まるAIOライトに備えてネット上で多少の情報収集を行っていた。
まずはβテストの結果。
こちらについては概ね好評だった。
CGにBGM、ストーリーにキャラクター、アイコン関係のUIの良さも褒められていたが、どうやら要求されるスマフォのスペックと容量からは信じられない程に動きが軽快で、とにかくストレスフリーであったらしい。
そのため、事前登録者数も締め切りの頃には10万人に到達していたとの事で、新興のゲーム会社が出したゲームとしてはかつてないぐらいの高評価を受けていた。
と言うか……うん、俺が知らなかっただけで、ネット上では既にかなり話題になっているようで、日付変更と同時のサービス開始にはかなりの期待が持たれているようだった。
まあ、俺は我が道をゆくタイプのヲタクだからしょうがない、うん。
「となると……」
自分の情報収集能力のなさを嘆くのはこれくらいにしておこう。
今はAIOライトについてだ。
βテストのテスターたちの報告によれば、AIOライトのプレイヤーのスペックはスキル制ではなくレベルとレベルアップに伴うポイントの割り振りによると言う。
ゲーム開始時にポイントの割り振りもあると言うし、名前共々事前に決めておくべきだろう。
と言うわけで、俺はしばし考え込み……多少ネタに走る事にした。
「さて、いよいよだな」
そうしている間にも時間は流れ続ける。
時計は既に23時59分を指していた。
「楽し……み……だ……?」
そして日付が変わった瞬間。
一瞬俺のスマフォから電光のようなものが俺に向けて走った。
すると俺の意識は深い深い暗闇に向けて真っ直ぐに沈んでいき……
俺の平凡で変わりのない日常は終わりを告げた。
明日の12時までは4時間ごとに更新するつもりですので、よろしくお願いします。
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