67/67
空き教室には誰もいなくて
廊下を歩いていると使われていないのだろうか、椅子や机もなく使用した形跡もない黒板が窓から見える。
せっかくだからと誘われて僕は少女とともに教室へ入る。
「綺麗だよね」
この綺麗さは手入れがされているゆえのものだろうが、使われないがゆえの綺麗さであるとも言えた。
「空き教室なのかな?」
僕は思わず訊ねてしまう。
「私もわかんない」
ロッカーには長らくモノが入っていた形跡もない。黒板に近づいても肝心のチョークがないため書いたりもできない。
オブジェがそこにあるだけだ。ここは僕たちが二人だけでいるにはあまりに広すぎる。そんなことを考えるとなぜか背中がゾクリとした。
「生徒さんが少なくてほとんどが空き教室だって聞いてるけど」
となるとここは使ってはいない教室ということになる。話を聞いてると都会のほうから移住してきている人もいるようだし、他の利用法を検討しているという話は納得のいく話だ。
「君は将来ここに住みたいとか思ったりする?」
ふと少女に聞いてみる。
「どうかなぁ。ここでバイトするのは好きだけど、永住とかは考えてなかったよ」
――あ、でもと少女は言う。
「お兄さんはどう?」
「いいところだとは思うけど、そこまで踏ん切りはつかないな」
それこそここへ来て10日も経っていないのだ。ただ、昔ながらの田舎の景観を見たいというときにこれほどの場所はそうそうないだろう。
「なるほど。じゃあ私がやっぱりここに住むことにするって言ったらお兄さんはどうする?」
「え?」
少女はそう言ったもののむず痒いような表情を浮かべて、「やっぱり言わなくていい」と訴えてくるのだった。
久々の投稿となりました。6000PV間近だったので、執筆ということで、ゆっくりやります。
よければ評価や感想などお待ちしていますので、ぜひ。