ゲート1日攻略権4
夜滝の体調を見るためにゲート付近まで戻ってきた。
波瑠に夜滝を任せて圭たちはゲートまで運んでいたバイペッドディアをゲートの外に運び出す。
外に停めてあるのは大型のトラック。
これは借りたもので倒したモンスターを運んで買い取ってもらうならほぼ必須なものであると言っていい。
大きなギルドなら自分たちで所有している場合や中には運転手付きで外に待機しておいてもらうレンタルサービスもある。
元々荷物の輸送もしていた圭は免許もあるので車両だけ借りてきたのだ。
トラックの荷台にバイペッドディアを載せる。
肉がメインで皮も利用できるがそんなに高価ではないのであまり気を使わず適当なぐらいでいい。
「調子はどう?」
「もう大丈夫だよ」
時間が経つほどに頭の中がスッキリとしていく思いがあるほどだったと夜滝は思う。
夜滝の様子を確かめながら狩りを再開した。
「すごーい……」
夜滝は強くなった。
頭の真ん中に小さく丸く空いた穴を見ながら波瑠は思わず感心してしまった。
魔力のステータスは変わらない。
魔力どころかほとんど能力的なところは変わらないのに夜滝の魔法は強くなっていたのだ。
その理由は才能の覚醒だろう。
夜滝によるとより精密に魔力を操って魔法を使うことができるようになったらしい。
少ない魔力でも効率的に、大きな魔力もしっかりとコントロール出来る。
魔法がより緻密に使えることによって結果的に夜滝の魔法は強くなったのだ。
「ダブルキャストか」
さらに夜滝は同時に二つの魔法を使えるようにもなった。
水の玉と水の槍を同時に作って飛ばす。
玉と槍を作って飛ばすだけじゃないかと思いがちだがそれぞれ違う形を作ってキープするのは魔法を使う人なら大変さが分かる。
飛ばすのだってそれぞれ感覚が違う。
魔法のコントロールに優れた一部の人にしか使えない技術なのだ。
それを夜滝は全く異なる魔法でもやってみせる。
水の触手を操りながら水の槍を飛ばしてみせるのた。
あれだけ出来るなら魔法使いの夜滝単体でも戦える。
和輝もその技量に舌を巻いていた。
「私を見習って頑張りたまえよ」
鼻高々にドヤ顔の夜滝は圭の肩に手を乗せた。
このまま魔力が上がっていけば夜滝は今現在一流と言われる魔法使いにも肩を並べられる可能性すらあった。
「負けないかんね!」
それに対抗心を燃やしたのは波瑠だった。
夜滝や圭と同じくF級になった波瑠も同じくF級のバイペッドディアではなかなかレベルアップしなかった。
しかし度重なる戦闘でようやく波瑠もスキルの使い方というものを覚えた。
体にまとわせた魔力が風になり波瑠の速度を上げてくれるのだ。
『弥生波瑠
レベル13
総合ランクG(F)
筋力F(F+)(英雄)
体力G(F)(一般)
速度E(D)(神話)
魔力F(英雄)
幸運F(英雄)
スキル:風の導き
才能:有翼のサンダル』
風の導きというスキルを使っている状態の波瑠は才能の有翼のサンダルによる補正と加えて1つ等級が上がるほどであった。
さらには装備による補正もあると全体の等級も1つ上がるほどだった。
「うりゃりゃぁー!」
そして風の導きは単に波瑠の移動の速さを上げてくれるだけじゃない。
風を腕にまとわせれば攻撃の速度も上げることができた。
「ふううむ……圭よ、スカウトに集中した方が良いのではないか?」
「……俺もそんな気がします」
夜滝も波瑠も圭が才能を見抜いたのだと聞いた。
どちらも素晴らしい能力を持っていて圭の人の才能を見抜く能力に関してはずば抜けていると和輝も思った。
「やだよ、圭さんいないとやんないから」
「私も圭がいるからこうして戦っているんだよ」
しかし圭の戦いの才能に関しては正直高いとは言えない。
人を探してギルドでも作った方が儲かるんじゃないかと和輝は思ったが波瑠も夜滝も圭がいるから共に覚醒者として戦うのだ。
いないのなら別の道を探すとあっさり言われてしまって嬉しいやら複雑やらな気分になる。
共に戦う相手ももちろん大事な要素。
「飼い慣らすといえば聞こえは悪いかもしれんが上手く才能あるものを取り入れるものだ」
夜滝、波瑠それにカレンもそう。
圭が誘ったから覚醒者としてやっていこうと思った。
今も圭がいるから一緒にチームとして戦っている。
戦いに関して才能はないが人を見抜き、人に慕われる才能が圭にはあるのかもしれない。
とんでもない幸運な男。
それはいいが孫娘がそれで泣くことにならないか心配な和輝おじいちゃんであった。
「ほら、優斗!」
「ひ、ひいい!」
「危ない!」
「け、圭さんありがとうございます……」
「うーむ……優斗は覚醒者に向いておらんな」
一方で能力的には優れていても性根が優しすぎて優斗はバイペッドディアすら倒せないでいた。
装備の使い方を知るというために優斗も戦いに参加させられるのだけど敵を目の前にするとガチガチになってしまって全くダメだった。
和輝は小さくため息をつく。
全てのものを使いこなせる必要はないがある程度使用感を知らねば作るのも難しいところはある。
今こうして優しく立ち回ってくれる人たちがいる間に少しでも慣れてほしいものであった。