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ゲート1日攻略権3

 腕よろしく前足を振って後ろ足で走る姿はとんでもないインパクトがある。


「来るぞ、警戒しろ!」


 その上バイペッドディアはかなり好戦的なモンスターでもある。

 圭たちを見つけて1体のバイペッドディアが走ってくる。


 近くで見てみると意外と筋肉質で二足歩行なことも相まって可愛くない。


「こっちだ!」


 カレンが圭からもらった盾を構えて魔力を放出する。

 タンクはただ立っているだけじゃいけない。


 前にいるだけで襲ってくるモンスターもいるけれど敵が多かったり混戦になったりすると必ずしもタンクがターゲットにされるとは限らない。

 賢いモンスターになると見た目で弱そうな相手だったり軽装のアタッカーや魔法を使う後衛を狙ったりしてくる。


 そうならないようにタンクがいるのだ。

 モンスターの多くは人よりも遥かに魔力に対して敏感である。


 人でいえば気や気配と言い換えてもいい。

 そうなると相手の魔力を意図して向けられるとどう感じるのか。


 それは殺気を向けられているような敵意と捉える。

 適切な量の魔力を放てば仲間の魔力を覆い隠しモンスターは強い敵意を向けられていると感じ、自ずと狙いをタンクの方に向けるのだ。


 バイペッドディアがカレンの魔力に当てられて狙いをカレンに定める。

 体をねじり、前足を振りかぶって盾を殴りつけた。


「ぐぅ!」


 腕に衝撃が走る。

 たとえF級モンスターだって舐めてかかっちゃいけない。


 一般人が喰らえば即死級の威力を持っている。

 しかしカレンはわずかに押されただけで力負けはしていなかった。


 腕の痺れだって才能の効果もあってすぐに治る。


「やあああっ!」


 カレンが完全にバイペッドディアの攻撃を受け切った。

 その隙をついて波瑠が切りかかる。


 狙いは後ろ足。

 確実に倒すために機動力を落として戦いやすくする。


「ふん!」


 足を後ろから大きく切り裂かれて怯むバイペッドディアにカレンが盾で体当たりする。


「ナイス!」


 足にも力が入らず後ろに倒れ込んだところに圭が剣を振り下ろした。

 最初は肉を切り裂く感覚も少し苦手だったが戦っているうちに気にならなくなった。


 和輝の教えを受けた圭も少しは技術的に成長していた。

 一撃でしっかりとバイペッドディアの首を切り落として倒すことができた。


「出番がなかったねぇ」


 やはり人が増えて適正に役割分担できると効率は多く向上する。

 やることがなくても安全に倒せたならそれで良いと夜滝は笑顔を浮かべた。


 このバイペッドディアは南米の一部の地域では放置されたブレイキングゲートから出てきていて野生化している。

 なぜならこのバイペッドディアの肉は意外と美味いからである。


 ゲートを完全に攻略せず適切にモンスターの数やゲートの状態を監視、管理することでなんかしらんが勝手に増えるシカとして認知されている。

 つまり今倒したバイペッドディアも食べられるのである。


 食べられるということは売れるのである。

 ゲートもまだ近いのでバイペッドディアはちゃんと回収することにした。


 足にロープをくくりつけて引きずってゲート近くまで運ぶ。

 面倒でもこうして回収すれば1日攻略権分ぐらいの元は取れる。


 というか稼ぎやすいゲートなので1日攻略権が設定されている側面もあるのだ。


「ほい!

 意外と間抜けだねぇ」


「お、おおっ!」


 突進してくるバイペッドディアに夜滝が水の塊をぶつける。

 自分の走ってくる勢いと魔法の勢いで首が容易くへし折られながらぶっ飛んでいく。


 これは優斗が作った杖の効果もあった。

 自分の杖が活用されている場面を見て感動している。


 基本的に集団で動くバイペッドディアであるが仲間意識は低く頭も良くない。

 少し離れて石でも投げると上手く1体だけをおびき寄せることができた。


 倒しては運ぶを繰り返していく。

 バイペッドディアはそこら中を走り回っていて見つけるのにも苦労しない。


「ん……あれ?」


「夜滝ねぇ?」


 夜滝が水の魔法で動きを鈍らせて波瑠が首裏を大きく切り裂いて倒した。

 バイペッドディアの動きにも慣れてきて1体ずつなら倒すのも難がなくなってきたなと思っていたら急に夜滝がふらついた。


 圭が慌てて倒れそうになった夜滝を支える。


「具合が悪いのか?」


「んん……そうじゃない。

 なぜか急にくらっとして……今はすごく頭の中がスッキリとしたような」


「なんだろう?

 まさか」


『平塚夜滝

 レベル25

 総合ランクG

 筋力G(G+)(一般)

 体力G(G+)(一般)

 速度F(一般)

 魔力E(E+)(伝説)

 幸運F(英雄)

 スキル:思考加速(未覚醒)

 才能:魔道的並列思考』


「やっぱり」


 圭はもしかしてと思って真実の目を使った。

 夜滝のレベルが上がっている。


 装備品によって+補正が受けられていて分かりにくいが夜滝の速度はGだったのにFに上がっている。

 そしてさらに注目すべきは才能だ。


 スキルと同様に未覚醒という文字があったはずなのに無くなっている。

 つまり夜滝の才能が覚醒したのだ。


「夜滝ねぇのレベルが上がって才能が覚醒したみたいだよ」


「本当かい?

 それなら嬉しいね!」


 夜滝は圭たちと少しスタートが違う。

 最初からレベルが高く、そのためにモンスターを倒しても成長しにくかった。


 才能の覚醒という大きな変化があった。

 これがどのような効果をもたらしてくれるかは謎なのだが成長できたことは嬉しかった。

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