見抜く将来性3
店構えを見て良い武器作りそうと3人とも思った。
「えっと……入り口はどっちだろうね」
職人の場所、って感じがあって入るのをちょっとためらってしまう。
「あれ、お客さんですか?」
「えっ?
うわっ……大きい……あっと、すいません!」
「大丈夫です。
大きいのは本当なんで」
いきなり影が落ちてきて圭が振り返るとそこに人が立っていた。
圭も小さい方じゃないのに圭よりも頭1つ分は大きい男性だった。
堀が深めでしっかりとした顔をつきしているその男性は八重樫工房を見ていた圭たちを見てニッコリと笑った。
つい大きいと口に出してしまって圭は慌てて謝るけど不快に思った様子もなかった。
「刀匠見学、それとも覚醒者さんですか?」
「覚醒者です。
装備を見に」
刀鍛冶の見学もやっているのかと驚いた。
工房の見た目通りのこともしているのだな。
「覚醒者の方がわざわざ来てくれるなんて。
こちらにどうぞ」
「おお……!」
男性の案内で工房の中に入る。
いつかテレビで見たような刀などを作る雰囲気ある工房に圭も声を漏らした。
男児たるものこうしたものに多少の憧れがある。
「今おじいちゃん、呼んできますので少々お待ちください」
大きくて威圧感はあるけれど色眼鏡で見ないでちゃんと接してみるとこの大きな男性も優しくて人当たりがいい。
「でも……あの人、こ、高校生……ぐらいかな?」
「ええっ?」
「だって制服だったよ?」
「あっ、そういえば……」
体つきはいい。
ああいうのがタンクの才能を持っていたら安心するなと圭は考えていた。
一方で波瑠は別のことを考えていた。
大きくて、顔や体格だけを見ていたら圭よりも年上にも見える男性だったけれどその服は制服だった。
どこの制服かまでは知りようがないけれど高校か、下手すると中学の制服を男性は着ていた。
そうしたコスプレの趣味でもない限り服装から予想するに学生ということになる。
圭もその他の特徴が大きく印象に強すぎたが波瑠に言われてようやく制服を着ていたことに気がついた。
「じゃあ……」
「まあ中学生ってことはないだろうねぇ」
のんびりとお昼食べたりもしてから移動してきたので時間的には高校生や中学生が帰ってきてもおかしくはない。
流石にあの体格と落ち着きで中学生ってことはないだろう。
「待たせてすまないね」
「あれ?」
工房の人が来たら聞いてみようか。
でも聞くのもちょっと怖いようなと思っているとツナギを着た女性がやってきた。
こちらも大きい。
先ほどの男性よりは少し小さいがそれでも圭より大きくて八重樫工房には大きい人しかいないのかと思わせられる。
肩まである髪の毛を後ろでひとまとめにした顔立ちのハッキリとした女性で、どう見ても男性の言っていたおじいちゃんではない。
「悪いね、社長である爺さんは町内会の集まりで少し席を外してるんだ。
代わりに私が対応するよ。
八重樫カレンだ」
「村雨圭です。
覚醒者の装備をお作りしていると聞いて見せてもらえないかと思いまして」
「わざわざこんなところにまで見にくるとは物好きだね」
そうは言いながらもカレンは嬉しそうな顔をした。
「武器は別の場所に保管してある。
こっちだよ」
カレンに連れられてやってきたのは工房の地下だった。
明かりをつけると意外と小綺麗な地下に武器やモンスターの素材と思わしき物が並べられている。
「こっちが覚醒者用の装備だ。
こっちのものは素材だから触らないようにしてくれ」
「わあ、スゴい!」
「どれもうちで作った一点物だ。
爺さんが昔気質な人であんまり表に出したがらないから中々買い手もいなくてな」
武器だけでなく防具も色々とある。
見た目には地味ではあるが落ち着いていて圭は好きだった。
「魔法使い用の杖はあるかい?」
「杖か?
杖はこっちだよ」
木製、金属製など杖も種類がある。
小さくて木の棒のような完全に魔法の補助に寄せたものもあればある程度打撃武器として使ってもいいような大きいサイズの杖も存在している。
ここの八重樫工房で置いている杖はサイズがやや大きめで無骨な感じがある。
打撃に使ったりモンスターの攻撃にさらされても簡単には壊れなさそうである。
「あんたの体格なら軽いほうがいいだろう。
……そうだな、この辺りはどうだい?」
カレンが夜滝の体つきを見て何本か杖を選んでくれる。
『18の杖
八重樫和輝が作った杖。
D級モンスターマダラトレントの素材を切り出して作られた。
丁寧に作られているために品質は高く魔力の流れや魔法の発動を補助してくれる。
魔力伝送率が高く使用時に魔力に補正を得られる。
適性魔力等級:E
必要魔力等級:G』
中々良さそうな杖だ。
大きな木から削り出したいかにも魔法使いと言った杖であるがその効果はしっかりとしている。
「姉ちゃん、刀匠体験のお客さん来てる」
「なんだって?
まだちょっと早いじゃないか……爺さんも帰ってきてないし。
優斗、ちょっとこちらのお客さんの相手を頼むよ。
刀匠体験の方は私が行くから」
「分かった」
どの杖がいいか見ていると先ほどの大きな男性が地下に降りてきた。