捨てる神あれば2
見たこともない化け物が暴れ回り、人の兵器は化け物に対して何の効果もなかった。
苦肉の策を放った国もあるのだがそれでもモンスターは倒せず汚染された地域となってしまったところもある。
1番の問題は覚醒者も敵わないようなモンスターたちの存在である。
天災モンスターとも言われて、現在ではAランク認定されているがその当時倒されたAランクモンスターは極一部だった。
多くの上級モンスターは実はある程度暴れたあと姿を消してしまったのである。
そうしたモンスターがいた地域は壊滅してしまったのでどこに消えたのかは分かっていないが、一部の研究者によると抵抗もなく破壊に飽きてゲートに帰ってしまったのだと言われている。
飽きた時でなくても何かの要因などがあればモンスター側からゲートを閉じられるのではないかというのが最近の研究であった。
そして圭がヘルカトに放り込まれたゲートは重恭の通報を受けて覚醒者たちが到着した時にはもうなかったのである。
「ゲートを取ったお写真が残っていたのでゲートの存在は疑いませんがなぜ閉じてしまったのか……」
ふと圭はモンスターに潰されたヘルカトのことを思い出した。
モンスター側の都合でゲートが閉じたのではなく、あのゲートはヘルカトが開いたものでヘルカトが死んだから閉じたのではないかと思った。
「あの、そもそも俺はどうしてここに?」
それよりも疑問に思うことがある。
どうやって圭のことを見つけて助けてくれたのか。
「あ、そうですね。
そちらについてもお話ししておきましょう」
圭を見つけてくれたのは駆けつけた覚醒者ではなかった。
ゲートを見つけてヘルカトに襲われていた時、塔の上階では攻略が行われていた。
「アメリカのブレイブギルドと日本のヴァルキリーギルドが合同で攻略に当たっていました」
どちらも大きなギルドで圭も名前を聞いたことがある。
「じゃあつまり……」
「そうです。
ヴァルキリーギルドの覚醒者がたまたま圭さんを見つけたのです」
圭のポケットにあったサイフから身分証を見つけてそのまま日本のギルドであるヴァルキリーギルドが連れてきてくれたのであった。
「そうなんですか……」
運が良かったとでもいうべきか。
あと少しでも発見が遅れていたら助からなかったかもしれないと言われて圭はヴァルキリーギルドに感謝する。
「それで何があったのかお話しいただけますか?」
「分かりました」
圭は起きた出来事を話した。
ゲートを見つけて、いきなりそこからヘルカトが出てきた。
ヘルカトにゲートの中に投げ込まれて何とか無事だったが追いかけて中に入ってきたヘルカトに殺されかけた。
絶体絶命の状況で巨大モンスターが降ってきてヘルカトが押し潰されてしまった。
そして圭は助けを求めて歩き始めたがその途中で力尽きてしまったと正直に話したが魔石を勝手に取り出したことにだけは触れなかった。
分からないことがあれば質問をし、伊丹ではなく男性の方がメモを取る。
「大変でしたね。
こうなるとゲートがそのヘルカトに起因するものである可能性が高いですね」
「俺もそう思います」
伊丹の言葉に圭は同意する。
今回のような話は聞いたことがないけどヘルカトと切り離して考える方が不自然になる。
(……そういえば真実の目で人は見られるのか?)
ふと疑問が頭をよぎった。
「ご協力ありがとうございます。
今回につきまして塔内で起きた事件ですので治療費などはこちらの覚醒者協会で持つことになります。
そうした書類は後日お持ちいたします」
「あっ、そうなんですか。
ありがとうございます」
「ではお体に気をつけて、ごゆっくりお休みください。
もしPTSDなど精神的な問題がありましたらそれもこちらでフォローいたしますので」
「わ、分かりました」
伊丹と男性職員は病室を出ていった。
「……やっぱ見えてないんだよな」
『伊丹薫
レベル373
総合ランクC
筋力D(無才)
体力D(一般)
速度C(一般)
魔力C(一般)
幸運D(無才)
スキル:シャドウムーブ
才能:闇を見る目』
「レベル373ってなんだよ……」
圭の目の前に見えているウィンドウ。
気になってヘルカトの魔石を見た時のように伊丹のことも見てみた。
すると伊丹の能力値のようなものが見えたのである。
圭にははっきりと見えているが伊丹や横にいた男性職員にこのウィンドウは見えていないようだ。
総合ランクがいわゆる広く一般的に知られている覚醒者のランクと同じようなものだろうと圭は思った。
筋力や体力などのステータスがあることに圭は驚いたがそれよりももっと謎のことがあった。
「無才、とか一般ってなんだ……?」
一般は分からないが無才は字面からして才能が無いということだろうか。
ランクがBの人で才能がないなら圭なんてゴミみたいなものだ。
仮に無才が才能なしだとして一般が何を指すものなのかも分からない。
DとかCもどれぐらい凄いのか分からないけどそれぐらいが一般的ってことなのだろうか。
「うーん……分からん!」
考えても分からないことを考えても無駄である。
圭は手足を投げ出してベッドに横になる。