見抜く将来性1
「わあ……」
後日圭たちは覚醒者の装備を売っているお店に来ていた。
「しかし意外とこんなところにあるんだねぇ」
肝心のお店は大きな複合商業施設の一角にあった。
まさか一般の人も行きかう普通の商業にあるなんてと思ったけどそういえばあったなと言われてみて気が付いた。
普段は使わないお店なのであっても気が付いていなかったのだ。
武器を売っているような危険なお店が一般の商業施設にあるのは理由がある。
それはもちろん覚醒者に来てほしいからである。
今では覚醒者は稼げる職業の1つとして見られている。
装備を見に来るついでにでも買い物していってもらえれば御の字なのだ。
そしてもう1つの理由としては安全を確保するためである。
突発的にゲートが発生することもある世の中において覚醒者は一般の人にとって守ってくれる存在であり、装備のお店があることでお店に覚醒者がいてくれる可能性を高めることで一般のお客の安心感を高めて集客を増やそうとしている。
商業施設の戦略として批判の声がありながらもこうして覚醒者のお店を誘致しているのだ。
「へぇ~いろいろあるんですね」
「波瑠も武器を考えてみたらいいかもな」
お店の中には装備別、覚醒者等級別に商品が並べられている。
装備には等級が低いと十分な効果を活かせないものもあるので一応の目安として等級でも分けられているのだ。
波瑠は装備を眺めながら目を輝かせている。
RSIで貸し出している装備は見た目に地味であるのだけどこうしてお店売っているものは商業的な側面もあるので見た目も気を使っている。
可愛い系も増えてきているが波瑠はスタイリッシュな感じが好みのようである。
武器も剣やナイフだけでなく、槍や斧、魔法使いのための杖もある。
波瑠は現在貸し出しのナイフを使っている。
スピードタイプであるしナイフでもいいと思うけれどほかの武器を試してみてもいいかもしれない。
「しかしこんなにあると迷うよな」
ざっと武器を見ただけでもたくさんの種類がある。
日本の企業で言えばRSIを筆頭にして、他にも海外企業もモンスター素材を利用した商品の開発にしのぎを削っている。
様々な企業が群雄割拠する時代なので自然と種類も多くなってしまう。
色々あって圭たちだけではとても決めきれないので店員さんにも相談しながら装備を見ていく。
ここで役立ったのが圭の真実の目であった。
『マリスキャット
エーフォン社製の片刃剣。
ゲートから採れたカイモン鉱石を精製したカイモンを鉄に混ぜ込んだ合金でできていて魔力の伝導率が高い。
しかしカイモンの含有率が低くもろくなってしまっている』
「これはダメだな」
手ごろな値段とエーフォン社製ということで勧められた剣をじっと見ていた圭は剣を棚に戻した。
装備のことは圭たちには分からない。
しかし圭には装備のことが分かる真実の目のスキルがある。
この剣は切れ味もよく、売れているということであるが真実の目で見る限りもろくて壊れやすいためにリピートして買いに来る人がいるのではないかと思った。
店員に勧めてもらってそれを圭が真実の目で見ていく。
高めでも何かの問題がある商品も多い。
それもそのはずでゲート内での素材やモンスター素材を利用した商品はまだまだ開発され始めたばかりで分かっていないことも多い。
いつでも手に入るというものばかりでもないので未熟な商品も多いのである。
その点でRSIの商品は品質が高いと圭は思った。
モンスター素材をしっかりと研究してできるだけマイナスな要素が発生しないようにしている。
「圭さん、これはどうですか?」
波瑠は圭に店員に渡されたナイフを見せた。
『22のナイフ
八重樫和輝が作ったナイフ。
B級モンスターガルアンドウルフの牙を中心としていくつかの金属を混ぜ込んで作られた。
丁寧に作られているために品質は良い。
魔力伝送率が高く、ガルアンドウルフの力が宿っていて魔力を込めると速度に補正を得られる。
適性魔力等級:B
必要魔力等級:F』
「これは……」
驚きそうになって圭はとっさに表情を引き締めた。
毎回波瑠や夜滝が圭のところに装備を持っていくので少し圭のことを店員がいぶかしんでいる。
物の能力を見抜けることがばれてしまうと面倒なことになるかもしれない。
「いいかもしれないな」
実際見た感じでは同じ等級の棚にある中でバフを得られる装備は多くなく、いい装備はやはり高かった。
このナイフは手ごろな値段でありながら品質も良く、バフも得られるなんていい装備どころではない。
必要な魔力がFなら波瑠でも扱える。
「そういえば……」
圭は自分が手に持った剣を見た。
この剣も店員に勧められたものの中で良いものを選んだのだけどこれも八重樫和輝が作ったものであった。
「これってどこの会社が作ったものですか?」
他のものは何とか社製となっていてどこかの会社が作ったものだと簡単にわかった。
けれどこのナイフは個人名が出てきてどこが作っているのか判然としない。
「ええと、こちらは……
八重樫工房の商品ですね」
「八重樫工房?」
聞いたことない会社だと圭は思った。