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レッツレベルアップ1

「それで向こうの会社から連絡が来て、調査に時間が欲しいってことになったんです」


「そうなのか。


 じゃあ解決も時間の問題だな」


 未だに最終的な目標は定まっていない。

 圭の能力を活かして金を稼ぐとぼんやりと言うけれど自分で覚醒者を集めて会社を起こすなりするのか、あるいはどこかの企業に保護してもらっていくのかとか方法も色々あるのだ。


 その中でとりあえず波瑠を筆頭にして育てて、圭や夜滝も強くなっていってみようということは決まっていた。

 その方法をどうするのか悩んだ。


 波瑠を今の段階で覚醒者として登録はさせられない。

 G級になってしまうしそこから強くなってしまった時にごまかすのも難しいからだ。


 だからといって未登録覚醒者がゲートに挑むことも出来ない。

 ある程度の強さもなきゃモンスターも倒せないしスタートが厳しいのである。


 1番いいのは高い等級の覚醒者チームを雇ってレベリングすることだけどそんなことできるのは大金持ちぐらいである。

 レベルアップの方法も他にはないか探りながら波瑠をどうにか成長させる方法を考えた。


「覚醒者協会に報告するにしてもお金は出るらしいのでどっちにしろもらったようなものですよ!」


 圭は今波瑠と夜滝を連れて自由狩猟特別区域という場所に来ていた。

 世界にゲートが溢れてから覚醒者が出てくるまで人類はモンスターに押されて領土の大きな部分を奪われた。


 当時現れたほとんどのゲートはブレイキングゲートで覚醒者がいなければどうしようもなかった。

 覚醒者たちの頑張りによって多くのゲートは閉じられたのであるが人里離れた土地や分かりにくい場所にあったゲートはどうしても残されてしまった。


 さらに広く世界に出てきてしまった全ての魔物を倒し尽くすのも不可能だった。

 人口の多い大都市やそれを繋ぐ幹線道路、主要施設などを中心として取り戻した人類であるがモンスターが多く、取り戻せていないところもある。


 こうしたところは政府によって立ち入り禁止区域とされてフェンスを立てて24時間監視をしていた。

 覚醒者が増えて経済が安定してくると立ち入り禁止区域の奪還も始まったのだけど別の政策も始まった。


 夜に放たれたままのモンスターはゲートが残っていることによっていまだに増えたりするのだがゲートがなくても増えていた。

 生殖活動をしていて増えていると見られるのだけどそのせいであるラインから奪還も難しくなったのである。


 しかし転んでもタダじゃ起きないのも人類であった。

 こうして増えるモンスターを脅威ではなく資源ととらえるようにまでなり始めた。


 総力を上げてモンスターを討伐して取り戻すのには足りないが放置してモンスターが増えるのも困る。

 そこで考え出したのが自由狩猟特別区域という制度である。


 基本的にゲートがなければ覚醒者は塔に入るしかない。

 けれどそれ以外でも戦いの腕を磨いたり多少のお金を稼ぐ場として覚醒者に限って立ち入り禁止区域の一部をモンスターの狩猟をしていいとして解放したのだ。


 攻略しなきゃブレイクを起こすゲートは攻略してもらうために制限を設けてしっかりとしたチームなり組まねばならない。

 一方で自由狩猟特別区域はゲートよりも制限が緩く大きな部分を覚醒者の自己責任に任せている。


 奥まで踏み入らねばモンスターの等級も高くなく、新しい武器を試したり魔石を採取して収入に当てたりする人も多くいる。

 圭や夜滝は自由狩猟特別区域に行くことがなかったので中々そこまで考えも及ばなかった。


「準備はできましたか?」


 そして今日一緒に来ているのはもう1人いた。


「あっ、はい!」


 捕獲チームの小橋安美であった。

 今回小橋に来てもらったのは簡単に言えば護衛役みたいなものである。


 けれども小橋に圭の能力や波瑠のレベル上げをしたいことは伝えていない。

 今日来てもらったのは波瑠に覚醒者として活躍することを諦めさせたいということでお願いをしていた。


 波瑠は一応夜滝側の親戚関係にある子だということにして、どうやら覚醒をしたみたいだけど等級は低そうで覚醒者とやっていくことを諦めさせるのに現実を見させるためにここに来たことになっている。

 現実的にモンスターを倒すのは命を奪う行為であり、それに耐えられない人もいる。


 低級覚醒者だと弱くて危険も伴うので実際に戦ってみれば諦めるのではないかと考えた、ことにした。

 それで圭や夜滝だけではどうしても危険があるのでC級覚醒者の小橋に協力を頼んだ。


 先日ゲートで圭がケガをした件でやや負い目があった小橋は夜滝の頼みに協力することにした。

 自分も覚醒者としてやっているので低級覚醒者がいかに大変かもわかっている。


 覚醒者として登録しない道もあると最近ではよく言われたりもする。

 低い等級の覚醒者として登録されてしまうぐらいなら隠していくことも理解はできると小橋も思う人だった。


 車で自由狩猟特別区域に進入し、圭や波瑠はトランクに積んでいた装備品を身につけていた。

 これはRSIから貸し出される装備品で事前に申請していればタダで借りることができる。


 不自然にならない程度ならいくつか予備の装備も借りられるので波瑠の分も借りてあった。

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