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危機的状況4

「こっちはどうだか、な」


 ヘルカトは上半身がモンスターの下にあり、下半身がモンスターから出ている。


 魔石がモンスターの下敷きになっていれば圭ではモンスターを除ける力がないので取り出せない。


「まあ、やるだけやってみようか」


 見つからなくても構わない。

 ヘルカトの背中にナイフを突き立てる。


 背中側は背骨があって簡単ではなかった。


 解体屋なら機械を使ったりして内部を見て場所を特定し、キレイに解体する。

 圭にそんな設備もなく小さなナイフ一本しかないので当たりをつけて適当に切り刻んでいく。


「やった! あったぞ!」


 もう諦めようかと思い始めていた時、ナイフが骨ではない硬いものにぶつかった。


 よく見えなかったので思い切って腕を突っ込んだ。

 硬い物を掴み、引き抜くと落ちてきたモンスターよりも大きい魔石。


「それに…………これは!」


 そして魔石を取る時に指に何かが当たっていた。

 もう1度腕を突っ込んで取り出してみると魔石の横に何と小さな石があった。


 手に取ってみると表面に不思議な模様があり、ほんのりと魔力を感じる。


 スキル石だ。割るとスキルが入手できる特殊な石で超がつく貴重品。

 スキルにもよるが売れば一生贅沢ができる金額になることも夢ではない。


 無惨な姿になっているトラックの運転席を漁り、配達の手紙などを入れていた肩がけのカバンを見つけ出す。


 その中に魔石とスキル石を入れて崖上に上がれる道を探そうと崖沿いに歩いていく。


 何のスキルでいくらになるか期待に胸を膨らませ歩いて行けたのも長くは持たなかった。

 変わり映えしない景色、痛む体、モンスターに遭遇するかもしれない緊張感が精神を消耗させた。


 なんだか具合も悪くなってきた。


 歩いたのは何時間だろうか、何十分だったのだろうか。

 時計は壊れていて長針がブルブルと触れるだけになっていたのでそこら辺に捨てた。


 しばらく経って気づいた。


 ほんのわずかながら地面が傾斜している。

 つまりは微妙ではあっても上に近づいている。


 崖上を目指しているからほんのわずかな希望にはなるがそれでも傾斜は緩やかだった。


 そのうちに喉がかわいてきて、お腹が空いてくる。

 見渡す限り赤茶けた大地には食べられそうな物はおろか水すら見えない。


 生ける死体があるなら今の自分のような感じだろう。

 空な目をしてひたすら歩き続け、目的地なんてわからないのだ。


「も……ダメ」


 段々と自分の足なのに前に出ているのかすら分からなくなっていく。

 前屈みになった体がやがて倒れていき、手をつくこともできずに地面に顔をぶつけた。


 起きて歩かなきゃ。

 そう思うのに体が動かない。


 地面に近くて呼吸するたびに乾いた口に乾いた土が入ってくる。


「ケホッ……クソッ…………」


 顔すら動かすこともできない。

 体は動かないのに段々とまぶたが勝手に下りてきて、圭は意識を手放してしまった。

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