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万物は真下へと落ちる、万象は攻略法を秘める

もしかしたら今週だけ毎日投稿が崩れるかもしれないです。なるべく毎日投稿を崩さないつもりですが、一応先に報告させていただきます。

「…………はぁ、マジかぁ」


ログアウトし公式サイトを確認した所、確かに修正項目に「一部モンスターの行動パターンに修正を行いました」の一文があった。

これだけでは一体どのモンスターであるのか分からないが、修正前と後を体感した俺からすればその一部モンスターが何を指しているのかが分かる。


「厄介な事になったな……」


元々ボーナスステージ的な仕様の抜け穴だったから、いつかは修正されるだろうとは思っていたが……予想以上に対策が早かったな、いやむしろ速かったな。


「となると予定も大幅に修正しないといけないか」


ゼリー飲料を咥え、椅子にもたれかかりながら今後の予定を考える。修正された以上水晶群蠍を利用した金稼ぎはもはや不可能となった。

となると新たな金策を考えなくてはいけないわけだが、今日のうちにそれを見つけ出すモチベーションは流石に無い。


「んんん……やっぱり最終的に金稼ぎするためには周回できるだけのレベルが必要なわけで……じゃあやっぱりレベリングを軸に? けどなぁ……」


ウェザエモン戦以降、それなりに戦闘を繰り返してきた筈だがあれからレベルが上がらない。

やはりレベル80が近くなるとレベルも上がりづらいな、とはいえエリアボスやギミックボスをパーティでとはいえ倒しているのでそろそろレベルアップしてもいい頃なんだが……


「レベルアップ……周回……」


そうなるとやっぱり水晶群蠍が頭にチラついてしまう。あのモンスターはありとあらゆる面で素晴らしい、フィールドの特徴に合致した生態も絶妙に頭の悪いAIも落とすアイテムの美味しさも。

表面上を見れば水晶群蠍クリスタル・スコーピオンは酷いモンスターに見えるかも知れない。だが単純な物理による突撃がデフォルトのAIや非アクティブとアクティブの関係性、アイテムを落とす法則性や水晶群蠍単体の性能は絶妙に倒せそうで倒せなさそう感が実に攻略意欲を湧かせるんだよなぁ……


「倒せそうで倒せない……突撃AI……」


それになによりあそこで採掘できるアイテムを諦めきれないというのが本音だ。単純に鉱石ではなく宝石というのがミソだ、宝石は素材としてではなく換金アイテムとしても優秀だからな。

どうにかして水晶群蠍という脅威を無効化して採掘だけはしたい、この際それが可能なら水晶群蠍のアイテムは諦めてもいい。

とはいえ待ち伏せ奇襲モーションが追加されてしまったからには、従来のエスケープからの安全確保も困難だ。対策として考えられるのは物理的に距離を話して襲撃までの時間を引き延ばすくらいだが……


「物理的排除……アイテムドロップを考慮しない……」


ぢゅいぃ、と中身のないパックを吸いながらバラバラの思考を纏めていく。何か掴めそうな気がする、後一つ何か……散らばった情報を纏めて固定する思考のネジがあれば…………


「うぷぉっ」


吸い過ぎたらしく、息を吸い込んだ拍子に口の中で弾けるようにしてゼリー飲料の飲み口を口から離してしまう。

重力という地球というサーバーに搭載された物理エンジンに従ってゼリー飲料のパックは僅かに放物線を描いてすぐに床へと落ちていく。

とっさに手を伸ばすが、やはりゲームと違って動きが思い通りにならない現実ではキャッチのモーションは二手ほど遅く、中身が飛び散ることこそなかったがパックは床に叩きつけられてしまう。それを見た瞬間、俺の脳裏に電流が走る、発想の超新星爆発が起きる、電球が光る、ええいなんでもいい、散らばった思考が一つの答えを導き出す。


「……ニュートン降りてきたわ」


落下、そうだ落下。

万有引力……全ては上から下へと落ちる、物理エンジンは基本的に何もかもに平等に物理法則を課す。なおバグは除くものとする、ありゃもっと高次元の何かに叛逆してる。

水晶巣崖はどこにある? 立地条件は? 水晶群蠍の思考パターンは? 待ち伏せる程の執念を手に入れた蠍達は何処まで追ってくる(・・・・・・・・・)


「ふふ、ふふふふふ……運営め、修正自体は素晴らしいと賞賛しよう。だがその程度でこの俺が屈するとでも思ったか……?」


最初は甘んじて受け入れるつもりだったが、気が変わった。今夜は寝かさないぜ、何せまた修正しなきゃいけない案件を俺が増やしてやるんだからなぁ!


必要なピースは後一つ、そのためにやるべき事は考えるまでもない。トライアンドエラーとレベルアップだ。














「あ、サンラクサン! 戻ってたんですわ?」


「エムルか、進捗どうだ?」


「エードワードおにーちゃんは少し考えるから明日まで待ってくれって言ってましたわ! あとビィラックおねーちゃんが呼んでたですわ!」


「よし、ビィラックの方から片付けていこう」


ひょいとエムルを頭の上に放り投げれば、エムルも慣れたもので空中で姿勢を直して頭の上に着地する。伊達にお荷物と運び屋はやっていないからな。


「なんだかサンラクサン燃えてるですわ?」


「わかる? 友達(カモ)の家に乗り込んだら袋叩きにされてさぁ、お礼参りに行くために準備しようかなって」


「それ多分謝った方がいいと思いますわ……」


「そいつらとても恥ずかしがり屋でさ、会いに言っても隠れてるし挨拶がわりに殺しにかかってくるから……」


「それ本当に友達って言うですわ?」


僕とクリスタル・スコーピオン君はとっても仲良し! なにせ俺の懐は潤い向こうの住処は綺麗になる、ウィンウィンの関係だよ……コミュニケーション手段は主に暴力だけどな。


「というわけで殴り込みに行くためにちょっと下準備を……な」


ビィラックのいる工房に到着した俺は、頭にエムルを乗せたまま中を覗き込む。


「おう、来たけぇの」


「進捗どう?」


頭に例のごついゴーグルを着けたビィラックは、ファンタジーな格好にSFなパーツがくっついたちぐはぐな姿で俺を出迎える。


「仕上げの段階じゃな、はよう遺機装(レガシーウェポン)を渡しぃや」


「あいよ」


二人との相談の結果、別に使わないしバラしても問題ないよねと言うことで同じカテゴリでありながら二種類存在した杖型の遺機装「規格外武装:収束機構型【コメットカタパルト】」を取り出す。


「分解するなり好きにしてくれて構わない」


「おお、おお……明日の朝まで待っちょれ、それまでにわちは神代の鍛治……その深奥を学び取っちゃるわ」


「頼むよー」


お前にはロボやパワードスーツやSF武器が使えるかどうかがかかっているんだ。

なぜかざわつく心に首を傾げつつも、俺は工房を後に


「ちょい待ちい、聞きたいことがあるんじゃった」


「ん?」


振り向けば、ゴーグルを外したビィラックがこちらを見据えていたので、俺もちゃんと身体をビィラックの方へと向ける。


「聞きたいこと、っちゅうよりある種の頼みなんじゃがな……水晶群蠍の素材、アレを使って遺機装(レガシーウェポン)を作らせて欲しいんじゃ」


「え? それは構わないが、そもそも造れるのか(・・・・・)?」


俺はてっきり「古匠」とは壊れた遺機装を直す(・・)職業とばかり思っていたのだが。


「普通の武器のように造れるわけじゃあのうて、多分何度も失敗する。じゃからワリャの持ってる素材を無駄に消費するかもしれんが……」


「いいよいいよ、是非ともトライアンドエラーを繰り返してくれ」


「ありがたい……! ところで、作るのは双剣でええか?」


その言葉に、俺は否定の返答を返す。双剣は湖沼の短剣、帝蜂双剣、兎月の三本を強化する形でやって行く方針であるし、別の武器種も使って行った方が結果的に選べる択も増えると言うもの。


「作るのなら…………」










その後もいくつかの施設を訪れ、最終的な作戦に至る為の準備を終えた俺は水晶巣崖……ではなく、その下の奥古来魂(おうこらいこん)渓谷(けいこく)へと来ていた。


「なんでこっちに来たですわ?」


「去栄の残骸遺道は確かに経験値的には美味いが、敵が硬いし何してくるかもわからない。だったら少し経験値は少なくなるが倒しやすいこっちの方が結果的に経験値効率が良くなるのさ」


それにネックの歌う瘴骨魔(ハミング・リッチ)への対策としてドジっ子剣こと焔軍将の斬首剣、さらには約束通り魔術師が新たな魔法を覚えるために必要となるアイテム「魔術書」を手に入れたことで新たに魔法を習得したエムルもいる。


「ノルマはそうだな、レベル80。アンデッドを一掃するくらい暴れようか」


「アタシの新魔法が唸りを上げるですわ!」


悪いが新しくお前に覚えさせた魔法、殆どアシスト用なんだけどな。

何故か自分を邪悪だと理解していないどす黒い悪扱いされている(している)ので一応弁明的説明


・SF-Zoo

「S」hangri-la 「F」rontier 「Zoo」の略称であり、シャングリラ・フロンティアに登場する動物型モンスターの観察撮影をメインとするクラン。

基本的に動物好きなプレイヤーで構築されているが、その内訳は「ファンタジーな動物を「見るのが」好き」なプレイヤー、「ファンタジーな動物を「愛でるのが」好き」なプレイヤー、「ファンタジーな動物を「調べるのが」好き」なプレイヤーと過程が統一されていないというチグハグが存在する。


ですので、エムルに対しても「愛玩用の喋る動物として」興味があるのか「ペットとして」興味があるのか、「世界観的に」興味があるのかでごっちゃになっているのです。

ぬいぐるみのように扱うプレイヤーもいれば、普通に他人のペットのように扱うプレイヤーもいるし、所詮モンスターと割り切っているプレイヤーもいます。

可愛いし味方にもなるけど普通にア◯ルーメ◯ルーに斬りかかる感じ、とでも言えばいいでしょうか

そんなわけで「目的は一緒でも過程がごっちゃな厄介な集団」であるために「ラビッツに招いたものなら可愛がる者、調べる者、あくまでもNPCとして扱わない者で面倒なことになる」という意味でペンシルゴンに厄介者扱いされているのです。そのくせ「モンスター捕獲のノウハウ」に関してはシャンフロの中でも飛び抜けている上にプレイヤー相手には特に危害を出さないあたり厄介な集団ですね

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