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12月20日:災前線より

某大会で四勝したので四連続更新するかぁ!って息巻いたはいいが普通にタスク生えて死んだので供養です

愚かな作者を笑ってください


「ははははは! ヤバすぎヤバすぎ!!」


全く同じ顔をした銃火器武装の奇襲者が、とんでもねぇイケメンに無双ゲーの如く薙ぎ払われる。その光景は本心からの興奮と、同時に不特定多数に向けた脚色を混ぜた大笑いをぱやぶさにもたらした。


実のところを言えば最終戦最後の配信をどこで行うのか、は賭けであった。


最前線か、あるいは大本営か。それとも未だ倒れる気配のない緑のレイドモンスターか。

どこが最も面白い戦場(とれだかのある)か……ただ派手な戦場に行けばいいというものではない。物事には"噛み合い"というものがあり、残念ながらぱやぶさよりも噛み合う者達がすでに目ぼしい戦場にいるのだから。


(あいつは王女の首とったるわ! っつってたけどまぁ無理っぽそうだし……レイドモンスターはカリントウちゃんが派手にぶちかましてるから今更言ってもカリントウちゃん撮影するカメラマンにしかなれなそうだからなー)


GUN!GUN!傭兵団はたった二人に迎撃されたという………羨ましいことだ。きっと彼らはしばらくシャンフロで再生数が稼げるし、謎多きツーマンアーミーが絡むネフィリムホロウなるゲームでも人を呼べるだろう。


改崎は……いつの間にか裏方に回っていた。様子を聞けば、「一番の目的は果たした」とのことだが彼の配信アーカイブにそれらしき出来事は残っていなかった。


徹夜騎士カリントウはもはや制御不能だ。完全にあのレイドモンスターを倒すことに全リソースを向けている。

彼女とそのリスナーの結束力は強い。寝ずの突撃を続けている彼女らの一団をレイドモンスター以外に差し向けるのは流石に愚策だということくらいは分かる。


端的に言って、普通に負けている。最前線の陣取りゲームは最後に確認した時点ではほぼ拮抗……シビアに評価するなら新王側が若干劣勢。

あるいは陣取りゲームで大逆転勝利! も十分にあり得る範囲ではあったが………戦術戦略を将棋に例えることはあれど、将棋にはできない動きが可能なのが実際の戦術戦略というもの。


「一発チェックメイトするなら今日しかないよなあ!」


ぱやぶさ自身に、シャンフロでワンマンアーミーをする強さはなく。編成できるのは比較的同じ方向を見てる烏合の衆が限度。

であれば攻める側ではなく守る側、新王アレックスの側控えとして撮れ高(・・・)を待ち構える。そしてその予想は最高の形で実現したのだった。


「アルブレヒトやべーっ! 無双ゲー始まってんだけど!!」


隕鉄鏡に向かって訴えかけるように叫びつつ、鏡が映す景色にアルブレヒトの奮戦はしっかりと映すことも忘れない。


「これ助太刀する必要無いっすね〜……新王サマ、どうします?」


「どうもこうもなかろう。アルブレヒトある限り、余の安泰に変わりなし」


「いや全くおっしゃる通りで!」


アレックスを怒らせたとて得るものはない。

故にぱやぶさは襲撃の報せを受けた時に、アレックスが露骨に挙動不審になっていた事には触れずにおく。


「しかしアレっすね………このギリギリのタイミングで暗殺狙ってくるとは普通に相手ガチだな〜」


思いつきによるものではない、全員が王女そっくりなアバターになってのこの念入りな襲撃。明らかに初日、いやそれ以前から練られた周到な作戦だ。


だが、彼らに誤算があったとするならやはりアルブレヒトが想像以上に強すぎた、ということか。

銃火器による一斉射撃というある種究極の「正解」をものともせず、守護と殲滅をたった一人で成立させる王認勇士の姿はむしろ暗殺者側に同情したくなる。


(つーか本当にアルブレヒト専属カメラマンになっちまうなこれ……ちょっとくらいちょっかいかけとくか?)


驚異的な速度で装備を充実させたガル之瀬程ではないにせよ、ぱやぶさもそこそこ(・・・・)程度にはレベリングを済ませている。

育てたからには少しくらいは行使したい、と考えるのは配信中なれどプレイヤーの性質(サガ)

そこでぱやぶさは、ふと思いつきで……否、出来心でぼそり、と呟く。


「……勝ったな、風呂入ってくる」





「はいじゃあどかん」


インターホンでも押すかのような気軽さで、ペンシルゴンは「空骨」「地奔」部隊が王城に設置した爆弾を起爆した。


轟音、衝撃、粉砕音。

無駄に専門職の知識が発揮された配置は限られた爆薬による破壊力を最大の規模で発揮させ、エインヴルス王城……その尖塔がゆっくりと傾き、折れていく。


「うーわぁ………」


「どしたのニーナちゃん」


「なーんか、犯罪の片棒担がされてる気がする〜」


「あのねえニーナちゃん。戦いに……それも主義と主義、勢力と勢力、王権と王権が競ってる以上どっちが悪いなんてことはないんだよ」


王城から損なわれた大質量の瓦礫が王城自身に降り注ぐ光景。玉座の間に侵入したRPAごと全てを崩落させる一手を打ちながらも諭すように、どこか自分を納得させるように「悪」などいないとニーナに説いたペンシルゴンであったが………


「とはいえ、強いて誰が悪いか(・・・・・・・・)っていえば……」


にっこりと、肉食獣の微笑みを見せながらペンシルゴンは断言する。


「白旗上げない方が悪いよね」


"使い捨て"を「捨てても痛手にならない」と考えているようでは二流。

捨てる、という「一手」を選べること。それこそが"使い捨て"の最大の強みなのだから。


「最強の騎士は生き埋めにされても王様を守れるかな?」





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