12月20日:こたえをしめす
前話のサブタイが日付しか書いてないのは「空白の方が決着前の一瞬の静寂感あっていいな」って思ってやってみたんですけど無を表現する文字が無いせいで12月20日:(←ここで文章が途切れてる)みたいになっちゃって失敗だな………って反省してるところ
無を表現する文字、何
◆
可能な限り安定したプラスの
対人戦と言うのはつまるところこれに集約する……俺はそう思っている。1ミリでもHPゲージが長ければ勝ち、初手に全てを賭けて制限時間一杯逃げ切りますなんて戦法も突き詰めてしまえば初手のプラス数値を限界まで伸ばしてタイムアップまでマイナス数値から逃げ切る、って戦法だ。
やり切ったら隙だらけの必殺技だとか自分の身を削るような大技ってのは対人戦においては
とはいえ、だ。小足だの下段キックだのTODだのだけで勝てるなら対人戦なんてとっくのとうに文化ごと消え去っているわけで。
スーパーアーマー、無敵時間、最速発生、優先度、遠距離、即死、多段ヒット………なんだっていい、塩試合を打ち砕く強い力を、それをさらに打ち砕く搦め手を、それら全ての裏をかいてやっぱり小足TODだの……そんな戦いの円を環境と呼び、故に環境の新陳代謝は”回る”と形容されるのだ。
対人戦はこの円がどれだけ綺麗な丸を作っているかで評価が決まる。クソゲーの場合は大抵この円がこじんまりしていてその隣に
だが、偉そうな御高説を垂れたところで、対人戦の勝ち方なんていつだってシンプルだ。
ガタガタ言ってないで相手のHP消し飛ばして勝ち星を獲ればいい。それがシンプル、勝利への最短ルート。
「こうなりゃ燃え尽きるまで燃え上がろうぜ」
大盾を踏み、跳躍。バック宙返りとバク転を繰り返してガル之瀬から一気に距離を離す。あれほど詰めたかった互いの距離を、限界まで遠ざける。
「完全燃焼だ!!」
「…………!!」
今からやることにはどうしても距離がいる。ディプスロのやつが作った決闘用結界はドーム状、距離はまぁ……及第点だろう。
あれほど近距離戦を仕掛けてきた俺が一気に距離を離したことにガル之瀬は驚いた様子だったが……こちらの意図を読み取ったのか、向こうもまた構えを変える。
……妙な構えだ。武器を拾わず盾だけで構えているし、その構えも身を守るような前にかざす構えではなく一番近いのは………
「マジかよオイ」
投げるのか? あのタワーシールドを?!
なるほどどうして、面白い隠し玉じゃねぇか。受けるでも流すでも弾くでもなくそれを選んだって事は……さては向こうも持ってやがったな、必殺技を!!
あいつ、最初は盾チク戦法の塩試合野郎だとばかり思ってたのにまったく最高だぜ。最高だからこそ………勝って終わりにしたいよなぁ!!
「ガル之瀬! 今何時だと思う!!」
「何……?」
「イベント終了二分前!!」
「!!」
その言葉に、ガル之瀬だけではなく周囲のプレイヤー達も「あ、」と言いたげな表情を浮かべる。言いたげ、っていうか言ってる。
俺の役目はプレイヤーを引き付けて足止めすること、でけぇ音の鳴るおもちゃの囮! だがその役目も残り二分で終わる。そうしたら……こんな風に戦う理由もなくなる。
「戦う理由が残ってるうちに派手に決めようじゃねーか! 決着をな!!」
「……つくづく配信映えする野郎だな」
「何?」
なにかぼそっと呟いたようだが、この距離だと流石に聞こえない。奴が展開している隕鉄鏡が奴の近くに寄っているので、あいつの配信には声が乗っているんだろう。ちょいちょい俺が展開している隕鉄鏡も寄ってくるから俺の台詞全部拾われてるんだろうな~…………はぁ。
「
「上等!!」
もういい、配信垢を消すのとペンシルゴンを殴り飛ばす算段は後で考えればいい。今はこの対決の決着だけを!
握りしめた皇金剣を………思いっきり、ぶん投げる。そして俺本体は両手を地面に、足を曲げて伸ばしての前傾姿勢、すなわちクラウチングスタート!!
「
俺の
メインジョブ故にその技は全てフルスペックを発揮する!
「よっしゃあッ!!」
投げた皇金剣の落下と気合の声を合図に、爆ぜるように勢いよく前へと飛び出す。稼いだ時間で使えるようになったスキルをフル活用し、前へ! しかしタイミングは外さない。
加速による慣性だけで走らずとも前に進むほどの速度を得た瞬間に………体勢を変える。現実の身体能力じゃ10メートル程度でそんな速度は出ないが、ゲームだからこそ物理法則を理不尽で踏み越える!
選んだ姿勢は飛び蹴り。そして突き出した足の裏にカチリと嵌るかのように、落ちてきた皇金剣の柄頭を蹴って押し込む!!
剣を蹴って飛ばすのではなく、蹴って共に飛ぶが故にその姿は槍の如く。故にこの奥義の名は───
「貫け! 「コギト・エルゴ・ハスタ」ァァア!!」
皇金剣だけではなく俺自身も含めて黄金の輝きを纏ったヒーローの必殺技じみた飛び蹴りだが、あいにく狙う相手は無抵抗で食らってくれるほど殊勝ではないようだ。
飛び蹴りを以って武器を直接蹴り込む、蹴武の奥義が高速で迫る中で……ガル之瀬が動いたのが見えた。
「奥義なら……こちらも
もはや隠す気なく、盾を投げる姿勢。だが異様なのはその盾にとんでもない輝きが宿っていること。もはや光源と言っていいほどのその輝きは、奴を中心にこの場が昼間に思えるほどに輝き照らしている。現代人である俺は「LED?」とシケた思考になってしまうが………
それほどまでの輝き、力が盾だけに収束している。いや、身体にも何かしらの強化スキルが付与されているんだろうが、盾の輝きに霞み消し飛んでいるのか。
あれがどういう条件なのか………もはやどうでもいい。解析したところでダメージが変わるかよ。今更こっちもやることは
あちらもまた、正面からこちらを打ち破るつもりだ。既に俺が駆け出したタイミングで投擲を始めていた。視線の先で奴の手からタワーシールドが離れる。
瞬間、盾が加速した。内側に込めた光がロケットエンジンのように水星の如き尾を引いて一気に勢いを強めたのだ。
「………「
随分と物理法則無視した良い名前じゃねえか! だが…………
環境ってのは、戦法戦術戦略が円を描いて作られる。塩試合を打ち砕く大技があるように、
それを凌駕する搦め手があるんだぜ?
◆◆
俺が装備した指輪「
使うアイテムのレア度的にも、作成の難易度的にもそう大したものではない………ちょっとシャンフロに慣れたきた頃のプレイヤーが作って「言うほど強くないな?」と死蔵するような……そんなアクセサリーだ。
この「総回復量は多いが、瞬間回復量は微小」という性質が
だが…………実は
俺を長く苦しめ、同時に俺を長く助けてきた「愚者」の
「
そうさ、一度で100%回復するのではなく1%を100回判定する、これ以上ない
そして、五十回の回復を失敗したカス運を乗り越え戦い続けた
それは──────
◇
ガル之瀬は見た。
「な──────!?」
最強の矛と、最強の盾(投擲物)。その激突や如何にと見送る先で……サンラクの姿が
「スキル一つを対象に、リキャストタイムを無条件でゼロにする」
その言葉を………任意のスキルを即時使用可能にする、という意味を理解するよりも先に。辛うじて声に反応して振り返った先で。
「卑怯と言ってくれるなよ、対人戦は人の嫌がることをしてナンボだろ?」
蒼き灼熱を両手で握りしめたサンラクが申し訳なさの欠片もない声でそう口にするのを聞き取った。
「クソが───」
「───我が
一杯食わされた。
そう悟ったのは視線を逸らしたかつて正面だった背後で、乾坤一擲の一撃が無を穿って結界に激突した音と同時で。
「……「
蒼く輝く灼熱の真打が、ガル之瀬の胴に深く一閃を刻んだ。
決着!!なげえんだよ!書きたいことが!!
ついでに設定も長いのであとがきがとんでもないことになった。
Q.結局最後サンラクはなにしたの?
A.サンラク君は酷いやつなので奥義!とか叫んだくせにそれは盛大な囮で
ガル之瀬の背後まで移動、加速じゃなくて超連続転移なため慣性も消えてるので無理なくすぐに体勢を立て直してアラドヴァルの超必を背中にブッパした。
光の速度で
・
我が
アラドヴァルを鍛えて至った能力がこれなのだから、ブリューナクはこれが正解である。というある意味では文字通り「答え合わせ」。答え(が)合わせ(ろ)。
輝槍仮説シリーズの武器はその全てが最終段階、すなわち真なる竜を討ち、その存在意義を証明することで「
※補足:輝神に示す○””斬””の部分は武器種によって変わります。槍なら突とかになる(武器種によって「薙」「撃」「閃」などなど)
・
エクゾーディナリーモンスター「
その戦闘中に盾で防いだダメージの総数値に比例して加速度と威力が上昇する
ジークヴルム亡き今、気宇蒼大の天聖地の覇者の後釜たる轟襲鷲獅子の特殊個体………
不世出の理由は寒さに弱いのと、高速飛翔するほどその
なお、轟襲鷲獅子の狩りは雲の上まで飛んでからの地上への急降下攻撃である。加減を知らないので寒さに震えながら全力急降下して内臓を痛めて死ぬかわいそうないきもの。ただし通常種と比較しても破格の狩猟成功率を誇るので短命だが雌からはよくモテる。一番
死因第一位は落下中に内臓の機能不全で死んでそのまま地面に激突(なんとこの死因でもプレイヤーとの戦闘中だとプレイヤーの勝ち判定になる)。
第二位は雲の上まで上がったタイミングで何かしらの「カムイ種」に食われる。横に落ちる黒い雷とか雲の入道とか。
16巻、12月15日発売してます!