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12月20日:三役揃って緋色の威

恐・竜王装(レクセスク)剛毅なる尾(インペリアルレッド)。三つある恐・竜王装の最後の一つであるこれもまた非常にシンプルな能力だ。

即ち、「プレイヤーに疑似的に「尻尾」を追加する」というもの……一見すると特殊にも思えるが、このゲームは種族変更やらドラゴンとの融合やらなんやらで頭四肢胴体以外のパーツが外付けで増やされる、というのはそう珍しくはない。重要なのはこの尻尾の性質だ。

この骨の尾……かつては三つの頭を支えてバランスを取っていたこの尾は装備者のSTRを1.5倍した数値の膂力を発揮する。そしてなんとこのスキル、元々の数値ではなく様々な強化補正を合算した総合計値を1.5倍にするのだ。

……ケツから腕の1.5倍のパワーがある三本目の腕が生えているようなもん、と言いたいところだがどっかのバカが「ケツから腕ぇ!?それってぇ!(何かしらの卑猥ワード)だよねぇ!?」とかほざきそうなので考えないことにする。


「ようやっと横っ面にマトモな一発をぶち込めた気がするぜ……」


尻尾の扱いは「そこそこ」レベルまでしか上げていない……多分あるのだろう尻尾を使ったスキルも習得できなかったしな。とはいえ、フルスイングパンチの1.5倍の一撃を叩き込めたのだ、流石にこれは「有効打」と言っていいだろう。


「………迂闊だったな。尻尾での打撃を失念していた」


「油断大敵、対人に限らず基礎だろ?」


「返す言葉もない……が、追撃を仕掛けないのは油断大敵じゃないのか?」


一理ある。こちらも回し蹴りの直後だったとはいえ、追撃のチャンスはあった。それをしなかったのはちょっと一息つきたかったのもあるが………


「油断してたのはそっちじゃなくて戦法かな」


様子見をするにしても流石に素手は舐めすぎだった。いや手抜きをしたわけじゃないが、武装をしない理由が油断というか慢心というか…………思ったより相手が強すぎた。どのゲーム出身かまでは分からないが、あれは相当鳴らしてる(・・・・・)奴の動きだ。


「素手はちょっと相性が悪いな、防御をブチ抜けないこともないけど効率が悪い」


故に。


「ここからは全力で武装する、鬼に金棒とロケットランチャーくらい強くなるぜ」


本邦初公開だ。インベントリアからそれ(・・)を取り出し、見せつけるように握りしめる。隕鉄鏡が近づいてきているので配信にも映っているだろう………

それを一言で説明するなら刃部分が存在しない剣、とでも言うべき代物だ。豪華な……それこそ装飾剣と言っていいほどに華美なデザインでありながら、刃に相当する部分だけが存在しない。ともすればそういう小道具を作ったが刃部分だけ発注し忘れた、みたいな間抜けさすら感じられる。


だが、その”お間抜け”なグリップ部分の黄金の輝き………それも、黄金でありながら水晶の透明感も兼ね備えたそれは己がただの小道具などではないと叫び示すかのように月の光を受けて輝く……否、煌く。


「こいつは特別製でな、ここ(・・)で使うのも因果なもんだが………」


同時に、インベントリアを操作して無限の収納から取り出すは………黒々とした六角形の塊。ともすれば何かしらの加工品にも見えるが、知る者が見ればそれが掘り出したままの姿であることは分かるだろう。


「こいつは給料を前払いしてやらないとロクに働いてもくれないんでな」


刀身の無い剣もどき。その柄頭に生えた一本の長い”針”……思いっきり突き立てたら人間の掌位なら貫通できそうな太い針だが、これは攻撃用じゃない。俺はこちらを警戒して……いや、俺が何をするのか(・・・・・・)待ってくれているらしいガル之瀬に、そして隕鉄鏡に見えるように掌の六角形……アムルシディアン・クォーツにその”針”を突き立てる。


「働かざる者食うべからず……」


アムルシディアン・クォーツは鉱石……つまり固体だ。それも個体の中でもトップクラスに硬い。だが、今俺の掌にあるそれは、まるで紙パックのジュースが吸い上げられているかのようにしぼんでいる(・・・・・・)。そして噛もうものならこちらの歯を容易く粉砕しかねないはずのアムルシディアン・クォーツが欠片も残さず”針”に吸われ…………その直後、それに変化が起きる。

まるで飢餓状態だったものが、満腹になったことでようやく立ち上がることが出来ると歓喜するかのように。あるいは…………かつて月下に君臨した皇帝の「聖剣」を、その輝きを一飯の恩とばかりに見せてくれるかのような。


「ならこう言いかえてもいい……食ったら働け!」


振り抜いたそれ、剣”ではなかった”モノから勢いよく、漆黒の刃が真っすぐ伸びる。直剣ほどの長さまで伸びた刃を得て、真に剣としての姿を取り戻したそれの名を呼んでやる。



皇金剣(アンティアレス)!!」




(たまらねぇなオイ)


気取った名乗りと共に、刃を展開した剣を振り抜いたサンラクの姿にガル之瀬はもはや含むことも隠すこともなく歯を見せるような獰猛な笑みを浮かべた。


あれだけの見栄を張るのは中々どうして難しい。どこか「やってる」感や気恥ずかしさが混じりそうなものだが……オルケストラ攻略の配信からしてそういった職業ではないだろう、とサンラクについて分析していたガル之瀬であったが、中々どうしてノリにノッている。あるいは、不得手なのは「解説しながら」の実況であって大勢の視線に(・・・・・・)晒されること(・・・・・・)自体は経験済みなのか。


ガル之瀬にとって、倒す敵はより良いほどに嬉しい。言い換えればよりカッコいいほどに嬉しい。

であるならば、己も相応の全力を以って返すのが礼儀というものだろう。


ガル之瀬は、隠していたいくつかの”切り札”の内の一つを使う決心を固めた。


「───「斬首凶技(トライアスロン)」!」

名前自体はめちゃくちゃ前に呟いたことがあるけど遂に出せた皇金剣(アンティアレス)

鉱石を「捕食」させることでそれと”同質”の刃を形成する、というシンプルな効果。が第一効果。

境光の宝剣と同じで刃の展開時に耐久を消耗し、展開後に刃が欠けようが折れようが溶けようが砕けようが耐久力が減少しない、が第二効果。

そして第三効果に………






なんと10月1日からMBS/TBS系全国28局ネットにてシャングリラ・フロンティアのアニメが放送されます。

毎週日曜午後5時〜「#日5枠」です!日5です!

しかも連続2クール放送!待て十月!

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