12月20日:その美貌の是非を問う
殿堂予想で7外ししたのでケジメ更新です、あと六話か……
「フェアリア」というキャラクターは……筆舌に尽くしがたく、しかし口を開けば無限に恨み言を吐ける。そういうキャラクターだ。
設定上は確かに善良で、少し世間知らずというキャラクターだが、その出力にありったけの悪意……いや、なんだろうなぁ……害意? 敵意? なんかもっとこう……バカにしてんのか? という……なんだろうなぁ、本当……「具体的にどこら辺がカスなのか」は星の数ほど言えそうなのにそれを総括してどう言えばいいかが分からない。
キャラクターの性格、行動、課題……に、加えてゲーム性の要求、難易度、バグ……に掛け合わせることの制作側の怠慢、傲慢………不味い素材と不味い調味料を不味い調理法に厳格に従って作られた不味い料理。
いやこれすらも何かが違う……本当に形容し難い。100%クソと言い切れないが例え99%クソで1%はマシなのか? と問われたらいやそんなことはない、とノータイムで否定したくなる。
「あらゆる要素が減点方式だと0点だけど加点方式だと10点くらいあるから0点と言い切れないからクソほどムカつく……あれってそういう感じだと思わないか?」
「…………」
ガル之瀬、その殺意の根幹は共感に足るものであった。まさかのフェアクソプレイヤーだったとは……運命の悪戯か、あるいは
「既プレイ勢とはな……突発の生配信にしてはできた巡り合わせだ」
どこか皮肉げにそう返したガル之瀬の顔は、とぼけているようにも無理やり話を合わせているようにも見えない。つまりそういうことだ。
とはいえ、ご同輩ともなれば俺がガル之瀬に対して「何故」と問うことはもう無い。だが向こうから俺に対してはある。そして、次にガル之瀬が口を開いた時に問いかけてきた言葉は、俺の予想から外れてはいなかった。
「……既プレイなら、何故守る側に回る? "三分間"は寝てたのか?」
「いいや、飛び蹴りかました」
「そうか……俺は回し蹴りだった」
わかる………という雰囲気が俺とガル之瀬の間に生じる。きっとこの戦いを見ているオーディエンスはなんのことだか分からないだろう。
しかしながら俺とガル之瀬の間で繋がったシンパシーは互いに人となりを全く知らないにも関わらず、どこかで出会ったかのような……そしてその友情を今思い出したかのような不思議な感覚へと変わっていく。
「で……なぜ守る、か。まぁなんだ……版権とか色々あるけどさぁ……
「……………」
「不意打ちでエンカした時はマジの無意識に拳出そうになったけど……まぁ、新大陸の端から端まで走ってパシらされはしなかった。なら、別人の恨みを押し付けるのはお門違いだろ?」
我ながらぐうの音も出ない正論だとは思う。だが、それに対するガル之瀬の返答もまたある種の正論……というよりも、俺やガル之瀬のような経験者からすると正論と言いたくなるほどに
「俺は………ただあのツラをこの世から消したいだけってわけじゃあない。あのツラを使い回したことが間違いなのだと、理解させるためだ」
「……………」
今度は俺が黙る番になってしまった。そこを突かれると弱い……
そも、謎にクソゲーからスターシステムコンバートしてフェアカスのデータを持ち込んできた、というのが事の発端というか全ての元凶なのだ。
じゃあ誰が悪いかといえばフェアクソとシャンフロ、両方の開発に名を連ねている人物……天地律に他ならない。
故にガル之瀬は淡々と、しかし確たる意思表明をした。「
「なるほど、ねぇ………」
こればっかりはどうしようもない。俺が擁護してるのは「アーフィリア=フェアリアではない」という部分であってもし仮にフェアリア本人がシャンフロにいる、という公式設定であったならどうしていたかは分からない。
俺もガル之瀬も過去からの亡霊、フェアクソという名の地に囚われたままの地縛霊。何が悲しくて地縛霊同士で殴り合いをしなければならないのか、と嘆きたい気持ちもあるが………
「否定はしない。否定はできない………が、そういう時に選べる方法はただ一つ」
我を通すなら、逆側からぶつかってくる他をなぎ倒さなきゃならない時もある。それがたとえどれだけ立派でも、それがたとえ痛いほど共感できるとしても、だ。
「ここを通りたければ俺を倒してから行け……ってな」
果たして、これは一人で姫を狙う刺客を押し留める勇敢な戦士の台詞だろうか。あるいは向こうからすれば魔王の前座で立ち塞がる中ボス的な台詞ではなかろうか。
こちらのファイティングポーズに対し、向こうもまたタワーシールドを構え、”面”の質量が
「───サイナ」
「了解:ご武運を
いいなー、という観客の呟きがやけにはっきりと聞こえた気がした。それに対してにやりと笑ってやろうかと考え───
発砲音。
「ヒュッッッ!!」
次の瞬間、バースデーケーキのろうそくを消すように……すぼめた俺の口から放たれた吐息が緋色の顎を擦り、マッチに火が付くかのように
晴天流「
「……!」
狙うのはタワーシールドのギリギリちょっと上くらい、ガル之瀬という人間の大部分を俺から隔てる壁を僅かに超える座標。頭部に近いが故に無視しきれないその場所を見掛け倒しのレーザーが貫く。
既に思考加速の
だが猫騙し、だ。つまり本命は別にある。
スローモーションの中で比較的等倍な速度で一気に肉薄し、そして直前で
第一手のレーザー、第二手の肉薄、そして後ろに回り込んでからの第三手……
振り抜いた拳が奴の後頭部にヒットする瞬間、気づいた……
拳の着弾点が後頭部から
ギャギギィ!! と金属同士が叩きつけられるような音と共に俺の拳がガル之瀬の肘打ちによって
「なっ………」
嘘だろオイ、肘でパリィしやがった!!
お前は間違っている、と
・
五体全てにパリィ判定を付与するスキル。武器を使うならそれで弾けばよく、素手で戦うにしても手足で弾くのだから「五体全て」に判定を付与したところで大した旨味はなく、下位互換故にリキャストの回転率が高い手足に同様のパリィ効果を付与するスキルを使えば事足りるため、習得の必要性はさほど無いとされるスキル。
なお腕にパリィ判定を付与する下位互換スキルは肘と二の腕が効果範囲に含まれていない。