鳥with兎's vs 合唱髑髏
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NPCN:ビィラック
LV:98
JOB: 名匠
SJOB:考古学者
ヴォーパルバニー・マスタースミス
HP(体力):175
MP(魔力):530
STM (スタミナ):120
STR(筋力):130
DEX(器用):120
AGI(敏捷):30
TEC(技量):130
VIT(耐久力):169
LUC(幸運):130
スキル
・ベストステップ
・クエイクスタンプ
・ギガトンスイング
・タイタンブラスト
・フォートレスブレイカー
・マテリアルデストロイ
・クリティカルフォーカス
・アナライズ:レガシーLv.4
魔法
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・【ランダムエンカウンターLv.3】
・【エンチャント:ハイロブスト】
・【ミラクルマイニング】
・【レガシーセンスLv.3】
装備
武器:
頭:火見の巻布
胴:兎式鍛治装
腰:兎式鍛治装
足:兎式鍛治装
アクセサリー:
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「つっよ」
残された首なし馬を袋叩きにして戦闘を終えた俺はビィラックのステータスを確認していたのだが……なんかこの感覚、激しくデジャヴを感じるぞ? 具体的に思い出そうとすると足下から何かが飛び出してきそうな……うっ頭が。
「言うて鉄を打って得た経験での強さじゃき、戦いの経験はワリャにも負けるわ」
「改めて理解したけど俺もエムルもお前に頭ぶん殴られただけで首へし折れかねないんだが」
「わちをなんだと思うとるんじゃ!」
エムルと視線を合わせ、言葉は無くとも互いに考えていることを察した俺達は無言でビィラックへと振り向く。
「言わぬが花ってやつさ……」
「ってやつですわ……」
「エムル、ワリャ……こいつに似てきたの」
「へぇえ!?」
愕然とした表情を浮かべるエムルだが、エムルもビィラックもそれは一体どう言う意味なんだ? まぁいい、この手の話題は気にするだけプレイ時間の無駄だ。
「とりあえずデュラハンの素材を回収して……もうちゃっちゃとボスまで行っちゃうか」
モタモタしてるとさらに時間がかかりそうだ……俺が寄り道しまくりそうという意味で、だ。
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対象への首に対する攻撃の際、ダメージに補正が入る。
記憶を、誇りを、愛すらも忘れた骸は己の首すらも失った。故にこそ、取り残された胴体は生者のみならず死者の首すらも狙うのだ。
「なんという八つ当たり」
要するに首をなくしたのでお前らも首を失え、ってことだろう? 完全に八つ当たりじゃねーか。いやしかし仲間のアンデッドも斬首し回っていたならむしろそのキルスコアはプレイヤーに貢献していると言えるのではないだろうか。結局のところ切れ味悪そうだしそのうち売り払う事になるかな。
錆や乾きへばりついた血によって剣というよりも剣っぽい形をした鉄屑と言うべきそれをインベントリにしまおうとした寸前、ビィラックが俺を呼び止める。
「なぁワリャ、ちぃとそれ貸してみぃ?」
「ん? ほれ」
ビィラックに喪失骸将の斬首剣を手渡すと、ビィラックは剣をしげしげと眺めて二、三度振ると、得心がいったのか一つ頷き錆び朽ちた剣を掲げる。
「やっぱりな、この剣はまだ死んどらんけ。後でちぃと貸しぃ、元の姿ち取り戻しちゃるけえ」
「へぇ」
使いはしないが、真の姿があると言われれば気になるのがゲーマーの常だ。ちゃっちゃとエリアを攻略して真の姿とやらを拝んでみようじゃないか。
「しかし、今までのエリアと比べるとなんというか、めちゃくちゃシンプルなマップしてるな」
「なんだかんだ言って、真っ直ぐ進めば良いだけですわ」
崖と崖を通過する渓谷を横断する、ではなく崖を崖とを貫く渓谷を縦断するこのマップは最短ルートはただ真っ直ぐ突き進むだけだ。本来ならば瘴気やアンデッドが行く手を阻み、状態異常とデバフに苦しみながら進むものなんだろうが……こちとら人間空気清浄機兼弱者お断りだ、最早ただ散歩しているだけとすら思える。
「ていうかさ、お前らちょっとくらいは自分で歩けよ……」
「歩くの面倒臭いですわ」
「ワリャにくっついとりゃ聖水の節約になるんじゃ、観念せぇ」
確かにエリアボスでどれだけ聖水を消費するか分からないからな、理由としては真っ当なんだが…………鳥頭の半裸が頭に白兎乗っけて黒兎をおんぶしながら死体と瘴気が蔓延する渓谷を進む、って絵面としてどうなんだ?
なんか俺の想定するファンタジーとズレているような、いやしかし現実じゃまず体験できない事という観点から見ればファンタジーとしては合格点なのか?
「うーむ……神ゲーとは深山幽谷が如く奥深い……」
神ゲーとは、クソゲーとは、いやそもそもゲームとは……そんな
「まぁエリアボスだろうな」
軽く触れてみるが別に先客がいて通れないという訳ではなく、どうやらこれがデフォルトのようだ。
「これを潜るんですわ……?」
「頼むぞ鳥の人」
「最早デフォルトなのかその呼び方……よし、行こうか」
武器を兎月に変えて、俺は靄の中へと侵入する。数秒程煙に巻かれているような不快感を感じるが、肌を舐める黒い瘴気を抜けるとその中心にこの
炭化したとも、塗料を塗りたくったとも違う、もっと内側から染み出した何かが黒く染めてしまったかのような黒い頭蓋骨。そしてそこから同様に真っ黒な脊髄と何本かの肋骨、そして異様に大きい右腕の骨だけが残ったそれは、欠けた部位を補うようにドス黒い瘴気をローブのように纏っている。
そして右手には非常に悪趣味な、人のものではない背骨に人の下顎の骨をまるで花弁のように飾り付けた杖を握っていた。
「好きな人はとことん好きそうなスカル野郎だな」
「気をつけりゃ、ありゃあ
「ひぇえ、近づきたくないですわぁ……!」
ははは、少なくともR-18G指定を受けていないゲームだ。ただの悪趣味なスカルと割り切れば怖くない怖くない。
ガチでゴア表現で未成年お断りのグロゲーとか30%の確率で発禁になるご時世だぞ? 悪趣味なスカルモンスターなんてチョチョイノチョイとだな。
「やるなら聖なる属性の付与を忘れるなや、ただの物理じゃ奴にゃあ効かんけぇ」
「………えっ、物理攻撃無効なの?」
俺の発した言葉の意味と、それが意味する事実……俺が聖なる属性の付与なんてものを持ち合わせていないということを理解したのか、エムルとビィラックもまた驚愕の表情で硬直する。
そしてそれを見逃す
「うおおっ、なんだなんだ!?」
背筋を刷毛で雑に掃かれたような感覚に己の不覚を叱責しながら振り向けば、表情のない黒い
うん、少し体力は削れているが特に状態異常はないな。
「あー……なんだ、つまり……」
奇妙な膠着状態、所謂千日手と呼称される状況……だがそれはあくまでも
「ふふふ……エムル、もっかい
「またですわぁ!?」
とは言っても、「
さながら銃弾放火の中を何故か無傷で潜り抜けるイベントシーン中のキャラクターのように人力で
「今のお前は単発式リボルバーだ! はははBANG!」
「ぴゃぁあ意味わかんないですわぁぁ!? 【マジックエッジ】!」
瘴気の隙間を縫うように
その隙に何度か斬りつけてみてはいるのだが、骨の部分もやはりというか物理無効らしい。透過してしまう兎月【上弦】をインベントリにしまい、エムルの攻撃一本に絞ることにする。
「ビィラックぅ! 進展はどうですかぁー!?」
「あーもう! そんに簡単に出来るわけないじゃろうが!」
呼びかけた先、追加の聖水を一気飲みするビィラックが半ギレの様子でこちらへと吠える。その手には使うことはないと思っていた喪失骸将の斬首剣が握られており、ビィラックはそれに対して魔法を行使していた。
と、いうのもまさかの有効打無しという事態にAIがお慈悲を与えるべきと判断したのか、ビィラックがこんな提案をしてきたのだ。
「付け焼き刃じゃけぇども、
そう言って喪失骸将の斬首剣を渡すよう言ってきたビィラックを信じ、俺は何度やったかも分からないヘイト集めという名の囮プレイを敢行しているのだ。
「瘴気は奔流、球体、包囲の三種類、闇っぽい地面から飛び出す手、雑魚召喚、後は杖で殴る……移動手段に短距離転移、瘴気の分身と位置交換……」
「ぴゃぁぁあ囲まれましたわぁぁ!!」
「
ムーンジャンパー起動、俺とエムルを囲んで押し潰さんとする瘴気を一息で飛び越え、数歩跳び退いて集めたモーションの情報をまとめる。
「全体的に劣化ウェザエモン、だけと瞬間転移が厄介だな……ランダムか? それとも位置で法則性あり?」
ほぼ反射で動かなければ殺されるレベルのウェザエモンと違い、全体的にスローな
それに時折使用する瞬間移動と分身置換、あれが中々に厄介だ。転移先の座標はランダムなのか、それともなんらかの法則性があるのか。検証の必要があるな、エムルで体力を削りつつも転移を誘発させる必要があるな。
「出来たぁ!」
ビィラックが作業の終了を高らかに叫ぶのと、
これがホントの首置いてけ……なんちゃって
鍛冶魔法は実際便利なので修得しているプレイヤーは結構います。ただメインで鍛冶職を取っているプレイヤーとそうではないサブのプレイヤーでは効果に差があります。