12月17日:メラメラ・ビートアップ Part.1
カッツォ視点入りました、ようやくです。長かった………本当に長い12月16日だった………
◇
焠がる大赤翅の本質はエネルギー体である、ということだ。
雷を斬った、だとか海を割った、だとかそういった伝説……あるいはゲーム内における"実例"はたしかに存在するかもしれない。だがそれは単に形状が変わっただけで、それそのものが死滅したり消失したわけではない。
では生きる灼熱を打ち倒すにはどうすればいいのか? 斬るだとか、凹ませるだとか、そういった状態的な干渉は意味を為さないしそもそも斬る前にこちらが焼け死ぬ。
「手こずらせてくれるよ、全く………」
オイカッツォ
『赤き右方始源眷族の覚醒……本来ならば無条件での全戦力解放が正しいのかもしれませんが……ええ、
直接的な戦闘参加は出来ない。言外にそう告げた「象牙」に対してオイカッツォ……と、数人のパーティメンバーは元よりそんなことを頼みに来たのではないと”用件”を告げる。
「
『正解です。豪雨から小雨まで……我が子達よ、あなた達の望むままに』
……
…………
………………
レイドモンスター。
それはシャングリラ・フロンティアに突如として実装された大規模マルチレイドエネミーである。赤、青、緑、白、黒。五色のカラーに対応したレイドボスが新旧大陸にそれぞれ一体ずつ存在する。
これまでに判明したレイドモンスターはルルイアスに封印された「狂える大群青」。
プレイヤーの手によって初めて討伐されたレイドモンスター「貪る大赤依」。
そしてサードレマにたった一体で侵攻し、その初見殺し過ぎる性能から恐るべきキルスコアを叩き出した「彷徨う大疫青」。
それ以外にもレイドモンスターの目撃情報は相次いでおり、既にこの五色の脅威はプレイヤーのみならずNPCにも周知されていると言っていいだろう。
本題に戻ろう。
レイドモンスターには共通するシステム的特徴がある。それはプレイヤー達による7数々の遭遇、目撃情報と………
要するに、一度倒されてしまうと再挑戦まで時間がかかるという問題はあるが………再現性があり、なおかつ理論上全プレイヤーが挑戦可能なエンドコンテンツという事だ。
そんなものが実装されれば当然、全レイドモンスターの撃破コンプリートを目指すプレイヤー達が現れるのは当然の事。(クターニッド戦の性質やフレーバーテキスト的にも狂える大群青だけはそもそも挑戦できない敵であるようだが)
「うーわ、凄いことになってるなぁ」
サードレマ、栄古斉衰の死火口湖に続く道を進むプレイヤーの一団。その先頭を進むプレイヤー……言わずもがな、オイカッツォだ。彼女、もとい彼の視線の先には………ピンポイントで火山に
「大概SFなのは分かってたけどあんな都合よく天候操作出来るんだねぇ」
「なんでもベヒーモスから雨雲の素? を投射してるんだとか」
「ファンタジーっすね………なんかこう、どんだけトンチキ科学でも現代人に未来の技術を理解できるわけねーだろ、って押し通そうとしてる辺りが」
「案外十年後には実現してるかもしれないぜ?」
「私リアルだと雨女だから私の旅行先に滞在期間中だけ雨が降らないようにしてほしいわね……あ、飛行機の航路にもね」
「ああ、だからレイニーレインって名前なんだ……」
それに答えるプレイヤー………【旅狼】に所属するプレイヤーではない、オイカッツォを含めパーティ編成上限である14人のプレイヤー達は皆、オイカッツォの呼びかけで集まったレイドモンスター攻略を目指す者達だ。
確かに彼らはレイドモンスター討伐の為に集まった、クランすらも別々の殆ど他人と言っていい集まりだが………事前に作戦を立て、装備もそれぞれの特徴を組み合わせてシナジーを発生させたレイドモンスター「焠がる大赤翅」討伐をマストオーダーとした集まりである。
「これで第一段階はクリアだ。触れる事すら出来ない超高温のボディ、半端な水を浴びせると水蒸気爆発するなら…………全部ねじ伏せるくらい水をぶっかけ続ければいい」
どれほど膨大なエネルギーを保有していようとも、それは無限ではない。仮に無限だとしても常に100%を維持し続けることが出来ない。そして焠がる大赤翅はエネルギーを「熱」という形で維持している。であればあとは小学生でもわかる簡単な攻略法だ。
熱いものは、
「悪いけどこっちもマップ攻撃……ってね。さぁ、今日の俺達は文字通り
応、と十四の声が莫大量の豪雨に負けぬ勢いで響き渡る。
舞台は生憎の雨模様、土砂降りを浴びる濡れ鼠達が灼熱の眷族へと戦いを挑む。
・天候操作ライセンス(ベヒーモス)
一日に一度、旧大陸の特定エリアの天候を変更することが出来る(先着一回)
これはバハムート三番艦ベヒーモスとして搭載した環境制御機構の一部であり、今は亡き神代の技術の中でもマナ粒子を一切利用していない技術によるもの。具体的に言うとナノマシンと気流操作の合わせ技。