鳥面with兎vs鮫土竜
某ゲームがオープンワールドで新作出すのでテンション最高潮で連続投稿です。
某企業が新作の気配すら出なかったので悲しみを紛らわせるよう連続投稿です。
「これは……まずいな」
「うひゃあ、これじゃ服が汚れちゃいますわ」
貪食の大蛇がセカンディルへと続く吊り橋の前に陣取っていたように、
「AGIキャラメタすぎる……」
沼では走れない、つまりここを越えるためにはほぼその場から動けない状態でボスと戦わなければならないのか。
くっ、エリアが沼荒野の時点で想定すべきだった。
「サンラクサンどうするん?これじゃサンラクサンもアタシもぴょんぴょんできませんわ」
「そうだな……とりあえずボスを見てから考えるか。エムルは……なんだ、俺の背中にしがみついててくれ」
パーティを組んでいる以上ボス戦でハブることはできないし、サイズは普通の兎と同じエムルでは沼にハマれば俺以上に動きを制限させられるだろう。
「はいな!」
背中にくっついたもこもことした感触に少しだけ身をよじらせ、俺は大沼へと足を踏み入れる。畜生、装備無しの時に履くことになるほぼ裸足のサンダルに沼の冷たさが沁みるぜ。何が悲しくて裸装備縛りじみたプレイをしなければならないんだ、何よりちょっとこの状況に慣れ始めた自分が憎い。
「みょっ!サンラクサン来ますわ!」
「確かに……!」
ザバザバと進んでいると、素肌が直に触れた沼から振動が伝わる。それは紛れもなくエリアボスが現れる予兆であり、沼が真下から押し上げられるように膨れ上がると同時にそれは現れた。
「シァァァァァァァァァッ!!」
「なんじゃこりゃ」
鮫頭の土竜?四肢の生えた鮫?でもなんでヒゲが生えてるんだ……? ともかくそんな感じの巨大な鮫頭の無機質な眼差しがこちらを見据える。
「来ますわ!」
「チッ……!」
クッソ動きづらい! いや、先ずは相手の確認!レペルカウンターで半ば無理やり……クリティカル発動を成功させると、攻撃側にノックバック効果を発動するスキルで
物理的な潜行ではなく、なんらかの不思議パワー(ゲームだからといえばそれまでだが)で地面に潜り込んでいるのか、俺の脛辺りまでしか沈み込まないはずの沼の浅瀬に吹っ飛ばされた
「きゃあ!皮を剥がれちゃいますわぁ!」
「因幡の素兎かよ!」
くそ、こんな最序盤で回避スキルを使わされるとは……! 文字通り滑走するかのような動きで攻撃を回避するスキル、スライドムーブを発動して俺の身体を齧ろうとする
スキルは消費するパラメータがないとはいえ、再発動するまでにリキャストタイムが存在する。二つある回避スキルを使い切ってしまった俺はリキャストタイム……双方合わせて約10秒間を自力で回避しなければならない。
「さぁどうしたものか……!」
まずこのエリア自体の特徴、言わずもがな足を搦めとる泥による露骨な敏捷封じ。判定としては足を沼に突っ込んで底に足がつくまではもう片方の足が沼にとらわれ続ける、つまり足を動かす
「来ますわ来ますわ食べられるぅぅぅ!」
「食べられません!」
一時的にAGIとSTRに補正を入れるスキル、アクセルで無理矢理足を動かし、間一髪で再度の突進を避ける。
くそ、これで正真正銘回避に使えそうなスキルは全部使い切ったぞ……アクセルは攻めに転ずる時に取っておきたかったが、致し方あるまい。予想以上に
「とりあえず動きを止める、とすれば……エムル、確かお前攻撃魔法持ってたよな?」
「え?うん、持ってますわ」
「それ使って
「了解ですわ!」
自分より強いNPCに頼るのはどうなんだ? と思わないわけではない。だがセカンディルを、このエリアを通過点にすると決めた時点で形振り構わないことに決めたんだ。実体験としてそれを知っているわけではないが、過密した新規プレイヤーによるゴタゴタの面倒臭さは多くのプレイヤーから話を聞く。
「むむむ……マジックエッジ!」
おんぶの体勢から肩車に近い姿勢に俺の背をよじ登ったエムルが俺の肩に立って魔法を唱える。瞬間、虚空に作り出された半透明な三日月状の刃が斜め一文字に射出、三度目の突進を敢行した
スライドムーブ回避、アクセル回避で稼いだ時間足すことの今の攻撃によるラグ、そして吐息がぶつかる程の至近距離まで我慢すれば………リキャスト終了!!
「かち上げる!!」
レペルカウンターを再発動。一歩後ろにステップを入れて距離を作り、真下から上へと
多分本来は受け流しをより発展させたパリィに近いものなんだろう、俺のように
「よっしゃ行くぞ!しっかり掴まってろよ!」
「はいな!!」
主人公がやったようなスキルの「本来想定されたものとは違うスキルや魔法の使い方」はそれなりにメジャーな技術です。
例を挙げれば「挙動の大きい攻撃技を回避に使う」「回復魔法をアンデッドに使ってダメージを与える」などがあります。