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剣狼相対すは雷火の獣 其の九

明日は更新休みます!!!!!!!!!(力尽きた)

流石に衝動のままにキャラクターを動かしすぎた……

どちらにせよ半裸なのだからわざわざ呪いを相殺する意味はあるのか? 大アリ(・・・)だ。

お前相方がフル稼働してる傍らで産業廃棄物扱いされていた冥輝君の悲しみが分かるか? 分かれよ、分からねーなら教えてやるよオラァ!


「どうしたどうしたァ! 疲れたなら一息で首刎ねてやろうかァ!?」


「なんという……っ!」


降り注ぐ従剣の流星、それら全てがオートからマニュアルへの移行を攻撃にまで高めた技術の極致と言っていいだろう。だからどうした(・・・・・・・)、ライオットブラッドを二缶空けた今の俺はあの日と同様……シルヴィア・ゴールドバーグと正面激突したあの日と同等のコンディションになっている。

さらに言えば付け焼き刃のカースドプリズンじゃあない、俺が一から育て上げた「サンラク」として動いているんだ。


「見てから対応するくらい余裕なんだよァ!!」


神秘「愚者」がかつてないほどに回転する。リキャストタイムが終了次第即使用され、まるでスキルの発動が封じられてしまったかのようにスキルのリキャストが連続する。

宙を踏んでは駆け抜けて、剣を踏みつけ滑走し、剣を振りかぶった姿勢のまま転移して不意を討つ。俺とサイガ-100では一年近いプレイ時間の差がある、故にこそこれだけの猛攻を仕掛けて尚サイガ-100は沈まない、倒れない、屈しない。


プレイヤースキルで言うならサイガ-100はシルヴィア・ゴールドバーグとは比べるまでもない。アレはもう規格外とかそういうレベルじゃなかった、こっちのフルパワーに笑いながら合わせてきた上に息切れすらしないとか完全に怪物だ。幕末のランカーもそうだが、世の中「これのためだけに生まれてきた存在」としか思えない奴って割といるんだよな。サイガ-100はそういった存在ではない、正直にぶっちゃけるがプレイヤースキルだけなら負ける気がしない。


だが違う、サイガ-100というプレイヤーの強みはそこじゃない。そんな才能だけでなんとかなるくだらない領域の話ではないのだ。


「面白い……! リュカオーンと渡り合うにはそれ程までの力量が必要だと? 上等じゃないか、だったら私の全てをぶつけて君に勝つ!! それが、奴への勝利につながるのならば!!」


ゲーマーにとって最も大切なものとは何か。

プレイヤースキル? 違う、そんなものがなくたってゲームは起動できる。レアアイテム? 違う、完全な間違いではないが木の枝一本でラスボスまで楽しみ尽くすことだってできる。


ゲーマーにとっても最も大切なもの、それはモチベーションだ。どれだけ乱数がクソだろうが下手の横好きだろうが、そいつの中で煌々と燃える熱意(・・)がある限り、人に限界はない。

その点で言えばサイガ-100は最上級だ、一年間というあまりに長い時間を経て尚陰りを見せない「打倒リュカオーン」という熱意の炎。その手で操る武器の数々はサイガ-100というプレイヤーの熱意の結晶、宙を舞う剣の一本一本にこのゲームへ向ける熱意と、時間と、努力が込められている。


ガチ勢、ああそうだガチ勢という言葉がこれ以上似合うプレイヤーもいないだろう。運営も草葉の陰で喜んでいるだろうさ。

だからこそ俺もまた燃え上がる、このゲームにこれほどまでのめり込んでいる相手に全力を叩きつける喜び。だからこそ対人戦は人を惹きつける、PKが無くならないのだってこれが理由だ。不純な理由だってあるだろう、だがPKの根本はAI操作の敵ではなく己と同じプレイヤーとこそ戦いたいという純粋な想いが根幹にある。

シャンフロのAIは確かに別格だ、本当にそういう生物として実在しているかのようなAIには拍手するしかない。だがそれはそれ、これはこれ……対人戦の楽しさを損なわせることはできない。


「【従剣劇(ソーヴァント)六重奏(セクステット)】!!」


「検証の時間だ……飛ばせ(・・・)「冥輝」!!」


ああ、今俺は幸運を得ている。

それは恐らく……というか新大陸に行っていない以上ほぼ確実にレベル上限解放を行っていない、つまりレベルとしては俺と同じLv.99Extendであるはずのサイガ-100を相手に勇魚兎月を発動できているということ。

おそらくレベルダウンビルドを何度も繰り返しているだろうことが理由か? それともレベルダウンビルドによって俺より数値的には高いであろうステータスが条件になっているのか?

まぁいいさ、本来はレベルが俺よりも高い相手にしか効果を発揮しないはずの勇魚兎月が使えるのは僥倖だ。だからこそ今からやる「検証」を成立させることができるのだから。


俺の言葉か、それとも思考か。どちらによってオーダーを認証したのかは��もかく、俺の意思に従い冥輝がその性能を白日のもとに晒す。

そもそも冥輝には対刃剣としての合体能力を除けば二つの能力を持っている、一つは言わずもがな今朝あたりまで産業廃棄物だった「冥気効果」だ。分類としてバフである以上リュカオーンの「刻傷」によって弾かれてしまうそれは、なんか手がバチバチする以外に何の意味も成さないゴミ能力と化していた。まぁそれも今朝解決したわけだが。

だが冥輝にはもう一つ、HP or MPを消費することでその形状を変えるという能力がある。具体的に言うと条件を満たすことで短剣型からレイピア型だったり曲剣型だったりに変形できるのだ。ぶっちゃけ短剣型で運用するのが一番使いやすいのでこっちの能力も腐っていたわけだが……本来この能力は「冥気効果」とセットで運用することを前提にデザインされている。


では結論を実演しよう、冥気効果とはなんぞや?

それはクリティカル攻撃を命中させることで発現し、クリティカル攻撃を命中させた回数だけ、そして冥輝の形状(・・・・・)に応じて………








「馬鹿な……スキルを経由しない「飛ぶ斬撃」だと!?」


「ハッハァー! 検証成功! やっぱり「陣形」を崩せば従剣劇は不発するんじゃねーか!!」


「遠距離攻撃」を可能とするのだ。

これこそが冥輝君の真の実力、腕をバチバチさせて意味もなく変形する金照の(オマケ)なんかじゃねーんだよ! むしろ冥輝君の方がぶっ壊れ性能しとるわ!


「露骨過ぎて気づくのが遅れたっての……さぁどうする! こっからは徹底的に妨害を絡めていくぜ!?」


「上等!!」


遠距離斬撃は冥輝の形状によってタイプが変わる。レイピア型であれば貫通力の高い飛ぶ刺突に、曲剣型であれば弧を描く飛ぶ切断に、短剣型なら連射力の高い飛ぶ連撃に!


攻撃を飛ばせるのは剣聖だけじゃないぞ、実質無職の傭兵でもやってやれないことはない。今この瞬間、俺が証明してやる。


「初期職業でもジャイアントキリングできるってなぁ!!」


青白い冷気のような、その真逆の炎のような。どちらとも受け取れる蒼いオーラを纏った左腕を持ち上げ、冥輝をサイガ-100へと突きつける。

さぁ出し惜しみは無しだ、全部炎に突っ込んで燃え尽きるまでヒートアップだ!! アッハハハ、テンション上がりすぎて揺り戻しが怖いなぁ!!!!!

実際のところ「Extend」という表記が曲者なのです。Extendを別の形にするなら「Lv.99+」

そしてこの「+」された数値が一体幾つなのかは表示されていないだけでパラメータとして蓄積されています

例えばレベル100の領域へと踏み込んだ京極はなにも、レベル99からコツコツと今のレベルまでレベルアップしたわけではないのです



レベル上限を更新した瞬間に蓄積された拡張(Extend)経験値がレベルに変換されたのです


そして多くの強敵と戦ったとはいえゲームスタートから半年も経過していないサンラクと、サービス開始時からみっっっちり己を鍛え上げてきたサイガ-100。二人の間には表示されていないだけで確たる経験値の差が存在します

本来ならば比較にならない「差」がレベル上限を更新していない、というただ一点の理由で二人のステータスを互角としているのです


まぁ京極ちゃんが負けたのは単純にシャンフロというシステムに対する理解の差ですね。レベル差だけで何もかもが決まるなら、ユニークモンスターに勝てるプレイヤーは存在しないはずなのですから

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